1アーティストにつき1曲ずつ、「これいい!」「おもしろい!」曲を紹介してまわるコーナーです。2023年からは、毎週水曜更新。
〔この「目次」は記事の追加ごとに順次増えていきます〕
どんぱす今日の御膳236 [Testament]
どんぱす今日の御膳237 [Celtic Frost]New!!
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Three-Headed Dog「Cerberus」(『HOUND OF HADES』2006)*1973年録音
こんなバンド、某専門店で偶然出くわすまで全然知らなかった。「三頭の犬」なるバンド名に『冥界の猟犬』なるアルバム名……きっとこれはブラック・サバス的なヘヴィ・ロックなのであろう!2006年リリースだがもともとは1973年の録音というあたりも、何かヤヴァイ事情があったに違いない!と盛大に勘違いして買って帰る私。
で、聴いてみると、プログレ風味のあるフォーキーなロックという感じでした。演奏力はしっかりしてるし、歌も悪くない。例えばこの「Cerberus」は9分超えの大作ですが、これだけのものをきちんと仕上げる実力は大したものでしょう。(「ケルベロス」というタイトルはバンド名に重なる筈で、一番の力作なのもわかりますね。)
冒頭の「Slick Solution」も程よくヘヴィでよいし、5曲目の「Just Gotta Play」なんかも意外な軽快さがよい。録音状態だけがガレージっぽくて(ありていに言ってしょぼい)楽曲の良さを伝えきれていませんが、それはまあ、発掘音源の限界でしょうか。当時きちんと作りこまれていたらねえ。
70年代になかなか凝ったよいロックを生み出していながらお蔵入りした事例としては、私の趣味ではたとえばNecromandusなんかが思い浮かびますが、ああいうナイスバンド(埋もれた……)がゴロゴロいたんだとすると、英国まさにおそるべし、であります。
Three-Headed Dogの面白いところは、Chicagoの「25 Or 6 To 4」(「長い夜」)をブラス抜きでカヴァーしていたりするところで、しかもこのテイクが12分以上あるんですよ。Terry Kathあたりが凄い好きなギタリストだったりしたんですかね?まったく、何を考えていたのか……とかいいつつ喜んで聴いてるこっちこそ真の変人ですかね。
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The Meteors「Please Don’t Touch」(『CORPSE GRINDER』1995)*1989年のシングル
「サイコビリー」っていうジャンルをよく知らなくて、バンド仲間の方に教えてもらったのがこのバンド。ロンドン出身、1980年結成のバンドだそうですね。軽快なロカビリーが基本だと思われますが、リズムがほんのりと(ほんのりね)ヘヴィなのかもしれない。浮ついた感じがない音像に思えます。
この「Please Don’t Touch」はJohnny Kidd & The Piratesの名曲ですが、私はHeadgirl(Motorhead+Girlschoolのスペシャルユニット)のヘヴィロック・ヴァージョンで馴染んでおりました。そっちも勿論最高なのですが、Meteorsのは本家により近い軽妙な仕上がりですかね。1989年にシングルで出たものが、後にこのベスト盤(『CORPSE GRINDER』)にも収録されたもようです。
YouTubeで検索するとMeteors版「Please Don’t Touch」のオフィシャル・ヴィデオというのが出てきます。ワルそうな(笑)お兄さんたちが演奏したり暴れまわったりするのが可愛らしい。
本ベスト盤にはほかにもThe Stranglers「Go Buddy Go」のカヴァー(こちらはMeteors1987年のシングルらしい)なんかも入っていますね。
The Meteorsのディスコグラフィを見ていたら、『THE METEORS MEET SCREAMING LORD SUTCH』なる作品が出てきてビックリ。どうやらこれはスプリット・アルバムらしくて、両者が共演したわけではなさそうなのが残念ではありますが……リトル・リチャードになりたかった(んだと思う)英国奇人紳士ロード・サッチは、言われてみれば、サイコビリーの文脈でとらえられなくもないね。これは大発見だ!ロカビリーを基調とした50年代的音像に、ショックロックやホラーロックの元祖たるコケオドシ・ステージング。もっとみんなサッチ御大を大事にしなきゃだめよ! …… 話がそれました。
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Renaissance with The Renaissance Chamber Orchestra「Island」(『50TH ANNIVERSARY(ASHES ARE BURNING・AN ANTHOLOGY・LIVE IN CONCERT [Disc 1]』2021)
私の好きな第一期ルネッサンスの名曲(Jane Relf & Keith Relfの兄妹ヴォーカルが味だった)を、名人Annie Haslamが歌い、ゲストでやはり第一期のメンバーJim McCartyも加わるという豪華仕様に涙が止まらない。
アニーはもうだいぶお歳ですが、まだまだお元気な様子。YouTubeで“Daily Doug”っていうのをやってる方の番組にゲストで出てて、昔話を楽しく披露してたなあ。なんでも、もともと自分はデザイナー志望だったけど、デザイン事務所みたいなところに自分のアイディアを盗まれたり散々な目に遭った挙句に、シンガーとして見いだされることになっちゃったのよ……とか。
オリジナルはJohn Hawken先生による端正なクラシカル・ピアノが後半の聴かせどころでしたが、こちらもGeoffrey Langley氏のピアノとチェンバー・オーケストラの管楽器がゴージャスに盛り上げます。キース・レルフの遺産が歌い継がれているという事実だけでもうね。
なお、私は第二期Renaissanceも好きです。本作でも最初にとり上げられる「Carpet Of The Sun」のジェントルな美しさ、「Running Hard」の活気ある壮大さ――Kansasの大作と通じる感じ?――など、プログレッシヴ・ロックの美的側面を代表してくれていると思うのだね。