DON'T PASS MUSIC BY

"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

どんぱす今日の御膳 其の一二〔287~〕

1アーティストにつき1ずつ、「これいい!」「おもしろい!」曲を紹介してまわるコーナーです。毎週水曜更新

〔この「目次」は記事の追加ごとに順次増えていきます〕

どんぱす今日の御膳287[Jeff Watson]

どんぱす今日の御膳288[Cyndi Lauper]

どんぱす今日の御膳289[Stormwind]

どんぱす今日の御膳290[Hydra]

どんぱす今日の御膳291[Little Richard & 高中正義]New!!

どんぱす今日の御膳292

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Buck Dharma「Born To Rock」FLAT OUT』(1982)

 米国の偉大なハードロックバンドBlue Öyster CultのリードギタリストBuck Dharma(Donald Roeser)のソロ・アルバム。バック・ダーマっていうのは、BÖC初期のマネージャーSandy Pearlmanが“エキセントリックなステージネームをつけようぜ”っていうアイディアを出したため名乗ることになった芸名だそうですが。

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 BÖCでもこの人は歌ってますが――ヒット曲「(Don’t Fear)The Reaper」とかで――、このソロ・アルバムでももちろん全面で歌唱。Eric Bloomより少し細くてクール……というか、私には(The Kinksの)Ray Davies的に聴こえる時があるのよ。(Blue Öyster Cult『HEAVEN FORBID』の「Harvest Moon」とか「X-Ray Eyes」とかを聴いてみてね。)

 

 これまで唯一のソロ・アルバムFLAT OUT』ですが、BÖCよりはややポップさを正直に出したハードロックというところ。「Born To Rock」の他だと、私は「Cold Wind」あたりが好きですな。

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 ソロ・アルバムだからいろんなミュージシャンが関与してますが、「Born To Rock」でベースを弾いてるのはDennis Dunaway、ドラムをたたいてるのはNeal Smith(ニールに至っては作曲にもクレジットされてる)です。さよう、オリジナルAlice Cooperの面々ですよ(私も今確認して知った)。アメリカン・ハードロックの祖たちの競演!

 

 エンジニアでKen Kessie(Anthem『TIGHTROPE』の仕事で日本では有名?)、リ・ミキシングでTony Bongiovi(Jon Bon Joviの従兄)なんてクレジットも。BÖCもそうですが、「ニューヨーク産」のロックですね。じゃあ、Riotとかとも意外に近かったのかな?どーなんでしょう。

 「Born To Rock」はなかなか面白い(いかにもエイティーズな)ミュージックヴィデオが作られてるからそれを御覧なされ(本文冒頭)。ヒットしたからなのか、83年頃のBlue Öyster Cultのライヴでは、「Born To Rock」(BÖCヴァージョン)もやってたりするのだぞ。ロック好きはスルー出来ない一曲。

どんぱす今日の御膳291

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Little Richard & 高中正義Tutti Frutti」(『RICHARD MEETS TAKANAKA』1992)

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 リトル・リチャードの映画(『LITTLE RICHARD: I AM EVERYTHING』)が日本公開されるってんで公式サイトを覗いたら、高中さんが長めのエピソードを語っておられるのがあって、「あ、こんな作品があったな!」と思い出したやつです。全10曲入りのアルバム。このジャケットの「裏面」も面白いので、ぜひ探して見てくださいね。

 「Tutti Frutti」をはじめそもそもLittle Richardのヒットナンバーばっかりなので曲がイイのは言うまでもないんですが、パフォーマンスもスゴイ。高中さんの弾きまくりにあおられてなのか、リトル・リチャードのノドも絶好調!?年齢のことを言うのもなんですけど、このころもう60歳近かったはずで、そんでこんなシャウトしまくりですよ。

 

 オリジナル・ヴァージョンが出てから実に35年後*に、同じかそれ以上のテンションで「歌う」のって、かなりすごい。

*〔注〕厳密には、シングルは1955年に出ており、それを含むアルバム『HERE'S LITTLE RICHARD』が1957年発表です。

これって、

ポール・マッカートニーが「I’m Down」を2000年に歌う(⇐1965年)

イアン・ギランが「Speed King」を2005年に歌う(⇐1970年)

ゲディ・リーが「Bastille Day」を2010年に歌う(⇐1975年)

ポール・ディアノが「Prowler」を2015年に歌う(⇐1980年)

デーモン閣下が「地獄の皇太子」を2020年に歌う(⇐1985年)

……という様なもので、相当レアであることは確かでありましょう。まずアーティスト(又はバンド)が“長寿”でなければ無理だしね。

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 この92年版「Tutti Frutti」は、アレンジがオリジナルから変わっていて、冒頭にソロギター入りのインストセクションがつけられてから始まります。「あのシャウト」から始まらない……ので、最初は違和感があるのですが、兎に角主役の二人が無茶苦茶元気で“ノリノリ”(最早死語っぽいがこの言い方でないと表せぬ)なので、だんだんどうでもよくなります。リトル・リチャードは60年代も70年代もこの曲を歌い継ぎリメイクもしてきていますけど、「歌」に関してはこれを超える熱さのはあんまりないんじゃないかな。

 

 それと、やっぱりギターですね。リトル・リチャードのバックは伝統的に「ギター・バンドじゃなかった」わけで――リード楽器はサックスが多いよね?――、ごく一時期Jimi Hendrixがバックバンドに居たなんていうのを除けば、“ギターとリトル・リチャードの組み合わせ”は珍しい筈。でもここでの相性は良好で、2分49秒あたりでリトル・リチャード“Take it, Takanaka!”と煽ると突入する高中正義さんのソロは楽しい。一聴の価値ありです。

 

 本作、リズム部分は時代を感じるというか、80年代以降っぽさそのものなので、Earl Palmerのバックビートを尊崇(勝手に)している私からするとちょっと淡白すぎますけど、その分主役は光ってます。何度も言いますが、還暦ミュージシャンの熱い心意気を感じ取れるか。むしろこっちが試される気さえしますね。

 最後にアルバムのクロージング・ナンバーもどーぞ。“♪Ready Teddy!”

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*あ、最後に。映画(『LITTLE RICHARD: I AM EVERYTHING』)も観に行きましたが、良かったですね。さっき名前を挙げたEarl PalmerやCharles Connorといった「リトル・リチャードのバックで叩いていた」人たちのほか、彼の60年代初期英国ツアーでバックにいたSounds IncorporatedのTony Newman(やはり名手の中の名手ドラマー!)まで登場して、ドラムファン的にも大満足!?Little Richardはロックンロールのオリジネイターであり、パンクの祖でありハードロックの親であり、グラムの姉でありファンクの兄である……というようなことがよーっくわかりました。

どんぱす今日の御膳290

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Hydra「Feel A Pain」『HYDRA』(1974)

 Capricorn所属だったんで“サザン・ロック”扱いされることもあったという米国のバンドHydra。音を聴いてみると、もっと英国的ハードロック風味が強いようにも思うのですが。例えばこの「Feel A Pain」なんか、「歌ってんのGlenn Hughesか?」と思うほど。このヴォーカルは、Wayne Bruceって人ですか。曲の後半で4ビート風のベースパターンに変わるけど、ギターは結構ねちっこいというか、初期Mark Reale(Riot)風――つまり英国HRの影響下にある米人ギター風味――なのよ。

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 アルバムでは次の「Good Time Man」がスライドギターをフィーチュアしたアップテンポなロックンロール。こういうあたりは“サザンロック”っぽいのかな?Wayneの太めのヴォイスは、同時代でいうとBobby Harrison(Freedom/Snafu)あたりとイメージがダブるね。Spencer Kirkpatrickのギターワークもなかなかイイな。Micky Moody(SnafuWhitesnake)みたいにその後ブレイク(?)しなかったのが惜しいくらい。

Primary

 うむ、このファーストアルバム全体が、私好みなのだな。軟弱なところがなく、硬質なリフとブルージーなスライドの上に熱(あつくるし)いヴォーカルが載るスタイル。みんな大好き「Going Down」も元気にやってるしね。

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