<楽曲紹介>(続き)
3枚目『LIVIN’ THE BLUES』はCDでも二枚組となる意欲作。Charley Pattonの「Pony Blues」に始まり、69年ウッドストックのテーマ曲となったフルートの小気味よい「Going Up The Country」を経て、20分弱のメドレー「Parthenogenesis」になだれ込む。これだけでもたいしたもんですが、アルバムはこれで半分。残りの半分は、「Refried Boogie」という40分の曲(パート1とパート2で20分ずつに分かれているけど)という物凄さ。長尺はプログレやサイケだけではないのだ!……というか、ブルーズがプログレッシヴであり得るのだ。(プログレッシヴ・ブルーズと呼びたいのはこのCanned Heatの他に英国のThe Groundhogsがあるね。どっちもJohn Lee Hookerの直弟子というところが面白い。)何より凄いのは、こんな作品がチャート入り(18位)しているということでございます。
ウッドストック出演の頃リードギタリストが交替しまして、そのラインナップで作られたのが『FUTURE BLUES』(Henry Vestine時代にもう一枚『HALLELUJAH』がありますが)。ここからは「Let’s Work Together」がヒットしてますが、その他の曲も「Sugar Bee」「Shake It And Break It」など粒ぞろい。そして、これまで長尺で表現してきた個性を3分弱に凝縮したまさに「未来的」ブルーズといえそうな名曲「Future Blues」。これがBobとAlanの双頭バンドとしては最後の曲となってしまうとは。
Alanが亡くなったあと、追悼盤として『HOOKER ‘N HEAT』というアルバムが出ます。ご推察通り、John Lee HookerとCanned Heatの共演盤……ではあるのですが、ちょっと特殊な作品。CDで二枚組になるこの作品、1枚目はほぼHookerの独演(弾き語り)で始まり、途中Alan Wilsonがハープ・ギター・ピアノでバックアップ。2枚目中盤からここにバンド(リードギター、ベース、ドラム)が加わる流れ。Canned Heatへの興味からすると、最後の三連発ブギ大会「Let’s Make It」(名曲「Boom Boom」の改作)・「Peavine」・「Boogie Chillen No.2」に熱狂!というところですが、1枚目の弾き語りJohn Leeも地味にイイ。アタマの「Messin’ with the Hook」なんて代表曲「Boogie Chillen」ばりの一人ストンピングブギ(足踏み音が聞こえる)だし、「Bottle Up And Go」なんかもAlanのピアノとJohn Leeのギターの絡みが凄いことになってる。このアルバムで、Bob Hiteは一切演奏の類はしていないのですが、ブックレットの写真なんかを見ると、現場でプロデューサーとして活躍していた模様。自分は表に出ないが、ブルーズマンの最高の表現を引き出して見せる、というのは制作者の鑑ではありますまいか。Bobも偉い、ということでひとつ。ともあれ、「ブルーズっていうのを聴いてみたい」という人にはお薦めしたい一作です。
<思い出話>
馴れ初めは正確に覚えていませんが、たぶん、John Lee HookerのCDのライナーノーツかなんかで名前を見たのが最初だったと思います。で、CDショップに行ってみたところあったのが『UNCANNED!』で、これでしばらく楽しんでました。ウッドストックに出てたなんていうのも知らなかったわたくし。(『UNCANNED!』のライナーにはちゃんとバイオグラフィが付いているのに、読み飛ばしてたみたい。)しばらくしてから、『ブルース・ロック』のディスクガイドでHeatが大特集されているのを見て、メンバーチェンジも踏まえて聴き直そうと思うようになり、ライヴ音源もチェックするようになりました。念願の『HOOKER ‘N HEAT』も聴けましたし、Vestineのソロ作、Mandelのソロ作なんかにも手を出し泥沼に。(続く)