DON'T PASS MUSIC BY

"Secrets are fun to a certain degree, but......"<Jake Holmes>

第4回「Canned Heat」(1)

<アーティスト概要>
 今度は本場米国産のブルーズ・バンドです。「ブルーズ・ロック」といわれることもありますが、このバンドと共演してその実力を評価していたJohn Lee Hooker御大が「あいつらが演ってるのはブルーズさ」とお墨付きを与えていますので、そのように呼ばせていただきましょう。Hookerもわたくしは無茶苦茶好きなアーティストですが、この方はまた別の機会に。

 Canned Heatは、アメリカの白人の若者が結成したバンドですが、中心メンバーはブルーズ・マニアとして名高かった(らしいです)Bob Hite Jr.Vo, Harp)とAlan WilsonGt, Vo, Harp)です。このバンドではステージネームというか、ニックネームをそれぞれが持っていたのですが、Bobは「The Bear」、Alanは「Blind Owl」と称していました。Bobは、写真を見ると「ああ、なるほど」と納得できる熊さん体型、Alanは視力が弱かったため度の強い眼鏡を掛けていたことによるそうです。
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*左下、ここでは眼鏡かけてませんが、Alan Wilson。右手を伸ばしてるのがBob Hite。

 またバンド名は、戦前のブルーズマンTommy Johnsonの「Canned Heat Blues」にちなんで付けられたものです。渋い。あ、あとAlanの実兄がThe Venturesで有名なDon Wilson氏です。わたくし、もうずいぶん昔に地元の市民会館のごときところにツアーで回ってきたThe Venturesを観にいったことがあるのですが、もちろんその頃はそんな知識はありませんでした。(The Venturesもわたくしは好きですよ。)

 Canned Heat1967年頃から作品を発表し始め、またモンタレーやウッドストックといったフェスティバルにも次々登場していきます。特に2枚目のBOOGIE WITH CANNED HEATがヒットしてからは人気バンドとしての地位を固めますが、面白いのはこのバンドはリードギタリストの地位が意外に安定しないということ。Alanはギタリストですが、どちらかというとスライドを決めたり巧みなバッキングを鳴らしたりするタイプで、ソロを受け持つのはたいてい別の人でした。
 
 1stから3rdまではHenry Vestineが、4thウッドストック出演時はHarvey Mandelがリードギタリストをつとめています。ざっくりイメージ分けすると、Henryは歪んだぶっとい音でソロやオブリをねじ込んでくる感じ、Harveyはジャズ的なフィーリングを持ち込んで曲をカラフルにする感じ、でしょうかね。同時期に活動したPaul Butterfield Blues Band/The Electric FlagMichael Bloomfieldに比べると有名ではありませんが、二人とも名ギタリストだと思いますね。

 BobAlanが中心となり、HenryまたはHarveyのギター、Larry Taylorのベース、Adolfo de la Parraのドラムで作り上げられた初期作品群は、アメリカポピュラー音楽史に残るべきものだと思います。いわゆるブルーズ・ロックは60年代末までにかなり「流行る」のですが、戦前ブルーズの現代的解釈という点で彼らは他の追随を許しませんでした。Elmore JamesMuddy WatersHowlin’ Wolfといった巨人たちの影響を感じさせるグループはたくさんありますが、Tommy JohnsonCharley PattonSon HouseAlan WilsonSon Houseのレコーディングに協力し、Harpを演奏しています)といった――当時としては――地味なブルーズをも養分とした連中はいなかったように思えます。

 そしてCanned Heatといえば何と言っても「ブギ」、Bob 熊さんHiteの名言に「Don’t forget to boogie!」というのがありますが、ほぼワンコードで押し切る――John Lee Hooker直系の――「ブギ」を彼らは体得していたのです。ウッドストックでもモントルーでも、それこそ単に「Boogie」という名前しかついていないようなステージオンリーのナンバーを長尺でかましてくれるんですね。これに関しては、ドラマーのParra――ちなみに、いまや彼だけがずーっと残っているオリジナルメンバーとなりました……――の貢献が大きいとみた。ブギの躍動感は、シャッフルのハネ方次第、つまりバスドラムとスネアドラムとハイハットの鳴り方(重なり方とずれ方)によるわけですが、Parraの叩きだすビートは絶妙で、聴いているとぐいぐい引き込まれてしまうのですよ。わたくしもドラマーのはしくれ、ああいう魔術的ビートを出したいものだと願うのですが、難しい……。それはともかく、デカいフェスティバルで何万という聴衆を5分も10分も「ノセ続ける」彼らの「ブギ力」は半端じゃありません。

 さて、バンド自体は何度か転機を迎えます。1970年にAlan Wilsonが亡くなってしまったのが第一の危機でした。偉大なプレイヤー兼音楽監督を失ったわけですが、もう一人のリーダーBob Hiteがバンドを率いていきます。度重なるメンバーチェンジを経ながらも作品を重ねていきましたが、今度は1981年にBobが亡くなってしまいます。その後はドラマーのAdolfo Parraが中心となりライヴなどを行ってきていますが、最近ではかつての黄金期のメンバー(Larry TaylorHarvey Mandel)も合流しているようです。
 
<楽曲紹介>
UNCANNED!: The Best of Canned Heat1994
 CD二枚組の編集盤で、デビュー前から70年代前半までの代表曲とレア曲を収録。「On The Road Again」「Rollin’ And Tumblin’」「Dust My Broom」「The Hunter」「Evil Woman」「Going Up The Country」「Let’s Work Together」などなど。
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 デビュー作CANNED HEAT冒頭にあった「Rollin’ And Tumblin’」はMuddy Watersで有名な一曲。英国のCreamによる殺気立ったヴァージョンも良いですが、こちらHeatのは全編を覆うAlan Wilsonのギターが味わい深い。聴き比べてみるのも一興です。1stアルバムはカヴァーが多いのですが、さすがブルーズ・マニアのバンド、拘りとアレンジが絶妙なんですな。Howlin’ Wolfで有名な「Evil Is Going On」、Elmore Jamesの「Dust My Broom」などやっているんですが、物真似に終わってません。Elmore Jamesボトルネック+三連のワイルドなサウンド英米の若者がこぞって手を出したものです――The Beatlesの「For You Blue」曲中で作曲者George Harrisonが「エルモア・ジェイムズはこの曲じゃ弾いてないよん」というジョークを飛ばしていましたね。有名どころだとThe Yardbirdsの「The Nazz Are Blue」なんかモロElmore調ね――けど、Heatのは何か余裕があるんですよね。ビートがせかせかしていないのが違いかも(ちなみに本作のドラマーはFrank Cookという人)。


 2枚目BOOGIE WITH CANNED HEATからは「On The Road Again」がヒットしていますが、確かにこれは名曲。基本的にワンコードのリフレインにブルーズハープのメインフレーズが重なり、Alan Wilsonのハイトーン(裏声風)ヴォイスが乗ってくるという、一言でいうと魔術的ブルーズ。この一曲でわたくしなどは「John Lee Hookerの正統後継者」に認定(勝手ながら)。この曲、オリジナルも良いのですが、UNCANNED!には別ヴァージョン(未発表だったもの)が入っていて、そちらが最強。オリジナルでうっすらかかっていたエフェクト(雰囲気があってよいのだが)がない分、バンドのグルーヴマスターぶりが味わえるのです。録音の都合か、ハープを吹くために「息を吸い込む音」まではっきり聞こえるのが生々しい。セカンドアルバムには他にLarry Weiss作の「Evil Woman」のどんよりしたヴァージョン(英国のSpooky Toothのウルトラ・ヘヴィなヴァージョンと聴き比べるべし)、軽快に弾むAlan Wilsonのテーマ曲(?)「An Owl Song」、必殺の長尺オリジナルブギー「Fried Hockey Boogie」など楽しい曲が並びます。(続く)