<今回取り上げた作品>
(1)『CANNED HEAT』(1967)
(2)『BOOGIE WITH CANNED HEAT』(1968)
(3)『LIVIN’ THE BLUES』(1968)
(4)『FUTURE BLUES』(1970)
(5)『HOOKER’N HEAT』(1971)
(6)『UNCANNED!』(1994)
上で紹介した曲以外に、1967年作で未発表のロングブギ「Gotta Boogie(The World Boogie)」、Robert Johnsonのカヴァー「Terraplane Blues」、Alan Wilsonの遺作(に近いと思う)「Human Condition」などが聴ける。特にこの「Human Condition」、オランダで行われたフェスティバルに参加したHeatがAlanのヴォーカルで披露している映像が残っていますが、それより長いスタジオ録音がここで聴けます。有名曲ではないですが、Canned Heatの完成された個性があらわれた一曲という意味では完璧。歌詞も、本人のblues(憂鬱)があらわれているようで、「借り物感」――大半のブルーズ・ロックの弱点はbluesにリアリティががないことなんじゃないかなという気がしているのですが、そういうこと――がまったくありませんね。
(7)『THE BOOGIE HOUSE TAPES Vol.3』(2008)
Canned Heatのライヴ盤はいくつも出ています。『FUTURE BLUES』期のオフィシャル盤『LIVE IN EUROPE』(1970)も良いですし、95年に出されたキング・ビスケット・フラワー・アワー・シリーズの発掘音源『IN CONCERT』(79年の演奏)も楽しめますが、最近(もう十年近く前か……)出たこれは最高。「Vol.3」とあるように、第1弾・第2弾もあるのですが、この第3弾でBob & Alan時代のライヴがたくさん聴けるのです。John Lee Hookerとの共演トラックなんていうのも発掘されてますしね。
(8)『ON THE ROAD…AGAIN』(2009)
動くCanned Heatは、映像作品『WOODSTOCK』ディレクターズカット版なんかで観られますが、ふんだんにというわけにはいきませんでしたね。この2009年の二枚組DVDは、1枚目が歴代の映像集、2枚目が近年のラインナップによるコンサート映像からなっております。バンドが今なお現役であるとわかる2枚目もよいのですが、なんといっても1枚目がお宝。動くAlan Wilson!語るBob Hite!クールに決めるHenry Vestine!ヘドバンするLarry Taylor!不敵に笑うAdolfo de la Parra!むかしのテレビ映像の寄せ集めみたいで、画質はそこそこですが、こんなものを観られるとは。
(9)Son House『FATHER OF THE DELTA BLUES:The Complete 1965 Sessions』(1992)
Son Houseはデルタ・ブルーズのビックネーム。かのRobert Johnsonの先達にあたるといわれる人物で、1930年代に既に名手として活躍していました。が、その後ほぼ引退状態に入り、戦後になって「再発見」されるという経緯をたどります。(このように、戦後の英米のブルーズ・ブームで再発見・再評価されたブルーズマンは数多くいました。)本作は1965年のセッションで、「Preachin’ Blues」や「Levee Camp Moan」など十八番を披露しております。ここでさりげないバックアップを果たしているのがAlan Wilson(Harp)なのですが、ライナーノーツによると彼は単なる伴奏者ではなく、レコーディングでナーヴァスになっていたSon Houseと談話することで緊張をほぐしてもいたそうです。(一説には、本人が忘れていた曲の演り方について逆指南したともいわれます。戦前ブルーズのマニアだったAlanならありそう、なエピソードですかね。)
(10)『RCAブルースの古典(The Blues:1927-1946)』
バンド名の元となったTommy Johnsonの「Canned Heat Blues」が聴ける、コンピレーション。戦前ブルーズというとRobert Johsnonくらいしか知らなかったかつてのわたくしにとっては「教科書」でして、「ジャグ・バンド」というのも初めて知りましたし、Tommy McClennan、Big Joe Williams、Robert Lockwood、Leroy Carr、Peetie Wheatstrawその他大勢のブルーズマンも教えてもらいました。編集もよくって、最後にArthur Crudupの「That’s All Right」が置かれてるんですが、これがElvis Presleyのデビュー作(1954年にカヴァー)になるんですよね。ブルーズからロックンロールへ、ということでしょう。
さて、今回はここまで。お疲れさまでした。