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第53回「内田勘太郎」(4)

 まだ続き。

憂歌団『BLUES 1973~1975』(1978)*[  ]内はカヴァー元

  1. Please Find My Baby [Elmore James]
  2. Key To The Highway [Big Bill Broonzy]
  3. It Hurts Me Too [Elmore James]
  4. Kind Hearted Woman [Muddy Waters/Robert Johnson]
  5. King Fish Blues [Tampa Red]
  6. I Can’t Be Satisfied [Muddy Waters]
  7. Careless Love [Lonnie Johnson]
  8. Please Find My Baby [Elmore James]
  9. Walkin’ Blues [Muddy Waters/Robert Johnson]
  10. Shake Your Money Maker [Elmore James]
  11. Look On Yonder Wall [Elmore James]
  12. Rollin’ & Tumblin’ [Muddy Waters]
  13. Good Morning Little School Girl [Sonny Boy Williamson]
  14. Take A Little Walk With Me [Robert Jr. Lockwood]

  #1~7(1975.5.24)

  #8~11(1974.9.28)

  #8(intro)・12~14(1973.5)

<メンバー(憂歌団)>

 木村充輝(Vo, Gt)

 内田勘太郎(Gt, 12 Strings Gt, Harp)

 花岡献治(Ba)

 島田和夫(Dr)

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 残り半分の1~7曲目が1975年、バンド形式のスタジオ録音です。私はやっぱり「Please Find My Baby」のインパクトが忘れられない。CD掛けたらいきなり、細かな刻みから導かれて(アコースティック・ギターなのに)ギュウィーンというエグい3連がドン・パン繰り出されるんですからね。“天使のダミ声”木村さんのアクが強くも実は繊細なヴォーカルもインパクト十分で、内田さんのボトルネック名演とあわせブルーズ解釈史に残る名作になっているのではないかと。「カッコいいブルーズを聴きたいんだけど」、って言われたらまずこれを差し出したい。

 

 「Key To The Highway」もブルーズの古典。RCAブルースの古典』という名コンピにはJazz Gillumさんのヴァージョンが入ってますが、そちらおよび憂歌団が下敷きにしたらしいBig Bill Broonzyのヴァージョンは割と軽快なノリ。いっぽう憂歌団は気怠い雰囲気を少し強調してますかね。終盤2分55秒辺りのギター(‟♪てれれ・てってって”っていうトコ)がやけに好き。

 

 この曲はエリック・クラプトンも好物らしく、Derek & The Dominosのアルバムやソロのライヴ(『RAINBOW CONCERT』)、そしてB.B.Kingさんとの共演盤『RIDING WITH THE KING』なんかで繰り返しやってます。憂歌団と同様、ほんのりメロウなテイストに持ち込んでますか。それから、Keith Richards『MAIN OFFENDER』で鍵盤入りの重厚なヴァージョンを披露してますな。マニア向け作品(?)では、Pete York(Dr)+Colin Hodgkinson(Ba)+Miller Anderson(Gt)+Zoot Money(Key)+Spencer Davis(Gt)っていうラインナップ――60年代英国ロック好きなら反応せざるを得ない……――がライヴでやってる(『EXTREMELY LIVE AT BIRMINGHAM TOWN HALL』)のがありますぞ。こちらは所謂ブリティッシュ・ブルーズロック的解釈。ズート・マネーのオルガン・ピアノがクールだ。

 

 それから、英国ものでは忘れちゃいけない、名シンガーJo-Ann Kellyがピアノとリズム隊をバックに熱唱するヴァージョンね(『KEY TO THE HIGHWAY』所収)。ジョ・アン・ケリーさんは英国最高峰のブルーズシンガーでいらしたと思います。あとは……オリジナルの世代のブルーズマンたちによるものもありました。Brownie McGheeさんがニューポート・フォーク・フェスティヴァルで歌ってる音源(『NEWPORT FOLK FESTIVAL:BEST OF THE BLUES 1959-68』所収)は、Sonny Terryさんのハーモニカとご本人のギターのみを伴奏にした軽快なプレイ。個人的に意外だったのは、わが最愛のブルーズマンJohn Lee Hookerさまがやっていたこと。彼のスタイルの曲じゃないよなあ、と思って聴くんですが……笑っちゃうくらいジョン・リーしてる。コード進行も執拗なリフ運びも、そして歌も、カレ流になってるのだ。(私は『BLUES IN TRANSITION1955-1959』という編集盤で聴きました。)

 

 他のアーティスト話への脱線が著しいですが、これでも憂歌団に受けたご恩にお礼申し上げるつもりでやっております。憂歌団の演奏で楽曲を知り――あるいは興味を深め――古今東西の他のアーティストのヴァージョンを探るに至ったケースがいっぱいあるということなのですよ。人の音楽ライフに影響を与えるのはオリジナル作品のみではないのです。私が以前からすぐれた編集盤やナイスなカヴァー・ヴァージョンの価値を力説してまいりましたのもそういうわけでございます。

 

 さて、戻りまして、またもエルモア・ジェイムズの「It Hurts Me Too」。ノッシノッシ歩くようなバウンド感が魅力のヘヴィ・ブルーズ。木村さんの情感こもった歌唱も、島田さんの重いようで軽く軽いようで重いドラムもいい味わい。エルモアのヴァージョンはピアノとホーン入り。このコーナー常連のバターフィールド・ブルース・バンドもやってますが、そちらはポールのソウルフル・ヴォイスとブルーズハープが主役のアレンジかな(『THE ORIGINAL LOST ELELTRA SESSIONS』で聴ける)。かと思うと同じく米国の至宝Canned Heatがピアノ入りのメロウヴァージョンをやってたり(Bob熊さんHite Jr.が歌います。『CANNED HEAT & JOHN LEE HOOKER RECORDED LIVE AT THE FOX VENICE THEATRE』所収)、英国ではJohn Mayall &The BluesbreakersがMick Taylorのギターを主役にしてやってたりします(『CRUSADE』に収録)。みんな大好きElmore James……あ、英国ハードロックの雄Foghatもアルバム『STONE BLUE』でRod Priceのスライド決めまくりヴァージョンをやってた。

 

 「Kind Hearted Woman」は、元はRobert Johnson曲ですが、先回も書きましたような事情で、憂歌団Muddy Waters版に依拠してるとのこと。たしかに、ロバート版と違ってスライド(ボトルネック)がバリバリに効いております。私はロバート・ジョンソンの方を先に聴いていたので、「随分アクの強いアレンジだなあ」と思ったものです。

 

 「King Fish Blues」もウォーキングするブルーズ。やや甲高いヴォーカルに、タッチの伝わるアコギ捌きという、憂歌団印。Tampa Redのオリジナルは、RCAブルースの古典』などで聴けますが、キーが違うことを除けば雰囲気はかなり近いかな。あ、ピアノがかすかに入ってたんだね。

 

 そしてもいちどマディの「I Can’t Be Satisfied」。これはもうボトルネックが決まらなきゃどうにもならない曲ですが、なんといっても内田ギターが完璧すぎる。地味ながら花岡さん&島田さんの推進力もあってグイグイ進むナンバーに。マディ・ウォーターズの原本は、マディのタフ・ヴォイスが強力。これもカヴァーが結構あって、私の手もとには、英国のブルーズ女王Jo-Ann Kellyが朗々と歌ってるやつ(『DO IT & MORE』所収)、The John Dummer Blues Bandがスライドギター全開でやってるやつ(『NINE BY NINE』に入ってる)、ジョン・ダマーとも縁がありジョ・アン・ケリーの弟でもあるスライド名手Dave KellyPaul Jones(昔Manfred Mannにもいたヴォーカリスト)と組んでライヴ演奏したやつ(『LIVE AT THE RAM JAM CLUB VOL.2』)と、英国モノがいくつか。ハードロックファンは、Paul Rodgers(元Free、Bad Company)の『MUDDY WATER BLUES』というMuddyトリビュート作品をどうぞ。Jason Bonhamの親父譲りの豪快ドラム+Brian Setzerの乾いた絶妙ギターによるハードロッキン・ヴァージョン「I Can’t Be Satisfied」が聴けます。ポール・ロジャースの歌がイイのは言わずもがな。

 

 「Careless Love」はLonnie Johnson版によってますが、元はトラディショナル・ソングだそうです。ロニー版のほかにSnooks Eaglin版てのが手元にあるので聴いてみましたが、スヌークスの方がややあっさり軽快、ロニーはほんのすこし芝居がかった歌い方に思えました。両者ともギターは軽やかに奏でるので、この曲のキモはそこなんでしょう。憂歌団もそれらの雰囲気を引き継いでます。木村さんの歌は力が抜けてていい感じ、内田さんギターはいわゆるブルーズの話法だけにとらわれず(間奏など)さり気ないバックアップが見事。

 

 アルバムの曲順とは異なってしまいましたが、美味しいところは触れさせてもらいました。今から探して聴くのは楽じゃないかも(廃盤?)しれませんが、ぜひどうぞ。

<続く>