DON'T PASS MUSIC BY

"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

Riot特集:時系列全作品紹介(11)『SONS OF SOCIETY』

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Riot『SONS OF SOCIETY』1999

  1. Snake Charmer
  2. On the Wings of Life
  3. Sons of Society
  4. Twist of Fate
  5. Bad Machine
  6. Cover Me
  7. Dragonfire
  8. The Law
  9. Time to Bleed
  10. Queen
  11. Somewhere
  12. Promises

<メンバー>

Mark Reale(Gt)

Mike Flyntz(Gt)

Pete Perez(Ba)

Mike Dimeo(Vo)

Bobby Jarzombek(Dr)

 

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 以前、デンマークNaritaというバンドを紹介した際に、このアルバム『SONS OF SOCIETY』のジャケットのお話をさせてもらいましたね(第46回「Narita」(2))。Eric Philippeさん画のジャケ、「今だったらむしろ受けるんじゃないか」とも申しました。欧州を中心にパワーメタル/スピードメタルが復権してくると、この手の‟ファンシー・ファンタジック・ファニー”なピクチャーは珍しくもなんともなくなりましたから……99年ではちょっと早すぎたのかもしれませんね。(Hammertfallなんかはもうデビューしてたんですが。)

 

 それから、実はこの作品が「リアルタイムでリリースを待望した」初のRiot作品ですので、個人的にも思い入れが深いのです。ベスト盤を図書館で借りて感動し、CDショップにあった当時ニューリリースの『SHINE ON』(ライヴ盤)を買って聴きまくっていた私……「この人たちの新作はいつ出るの?」となるのも無理はなかったわけ。このころ(90年代末)Mark RealeはWestworldも進めていて創作意欲は旺盛だったようですが、ライオットにどれだけ情熱を注いでいるのか異国からは見えなくて……たしか、当初発表になったリリース・デイトより若干遅れて出たんじゃなかったかなあと思いますが、せっかちな若い衆としてはまあ気をもみました。

 

 蓋を開けてみれば、バンド史上久々の「前作と同一メンバー、同一制作環境」による高品質ヘヴィメタルに仕上がっておりました。カヴァー曲も今回は無く、バンドの創造性が高まっていた様子がうかがえます。またTony Harnellも引き続きバッキング・ヴォーカルで参加してますが、その辺を除けば基本的にはバンドだけで作り上げたところも個人的には好印象。

 

 なんて言いながら、一曲目「Snake Charmer」だけはゲスト参加のFrank Carilloによるシタール及びタブラ演奏が目立つ、「インド風」というか「インドかぶれのジョージ・ハリスン風」インスト。ライナーノーツによりますと、フランクさんはじっさいGeorge Harrisonと接点があった人みたいです。……泥縄ですがいま調べたら、フランクさんは1950年生まれ、Doc Holidayでデビューしたミュージシャンで、ソロ活動もしながらPeter Framptonほかの作品にもセッション参加してきたとのこと。Doc Holidayでの同僚Bob Mayoは一時期ピーター・フランプトンのバンドメンバーとなっていました(第17回「Peter Frampton」(3))。というかフランクさん、Westworld『WESTWORLD』にもマンドリンでゲスト参加していらしたじゃないですか!?。大変失礼いたしました。この「Snake Charmer」だけならまったくRiotらしくない‟蛇使い”サウンドですが、次曲以降への期待をいやが上にも高めます。ちなみに、末尾の“E~F#~G~B~E(オクターブ上)”はMike Flyntzお得意の音階(?)らしく、Riot V『UNLEASH THE FIRE』(2014)所収の「Fight Fight Fight」のソロ結び(3分05秒~08秒)でも使ってます。

 

 そして本編幕開けとなる「On the Wings of Life」。相変わらずの音、バンドの武器であるBobby Jarzombekのドラムをしっかり聴かせてくれるプロダクションは素晴らしい。それから、Pete Perezのベースもとても活き活きと聴こえます。前々作までは音質のせいで埋もれ気味でしたが、本作で聴くとその個性的フレージングにもハッとさせられますよ(コーラス部分に入る前のくだりとか)。聖飢魔Ⅱゼノン石川和尚などもそうですが、「ジャズとかプログレもいける指弾きベーシストが本気でメタルをやる」っていうパターン、いいですねえ。もちろんギターセクションも充実、深化し続けるMark & Mikeのコンビネーションはまさしく鉄壁というに相応しい。

 

 次も同様の疾走曲「Sons of Society」なんですが、前作で時折感じられた“焼き直し感”少なめで好印象。これまでRiotではあまりやってこなかったタイプのリフやメロディで押しつつ、“♪Sons of society……”に始まるコーラスのところは王道的な歌い上げでカタルシスを得させるという、なかなか巧みなもの。社会批評を込めた歌詞を歌うディメオさんも、抑えたところと解き放つところの対比が見事になってます。ディメオとパワーメタルの組み合わせはいま一つ、と決めつけてはいけませんぞ。

 

 Reale/Dimeo/Flyntz作の「Twist of Fate」は、パワーメタル以前のRiot風味。ゆったりした進行にビッグでメロディアスな旋律。フリンツとリアリのじっくり聴かせるギターソロ付き。フリンツさんのソロのフレージング、作品を重ねるごとに練られてきてるよね。楽曲としてはやや地味かなと思わなくもないのですが、本人たちは気に入っていたようで、私が唯一肉眼で観たRiotの日本公演(2005年9月)でもやっていました。

 

 短いドラムソロ(フィル)から始まるミドル・シャッフル「Bad Machine」。ここではディメオさんの歌唱を味わうが良し。やや高い音域がメインとなりますが、テンションを高める効果大。”♪Yeah~”・“♪Ooh~”・“♪That’s right…”ってなお得意の間投詞がふんだんに盛り込まれるのは好みが分かれるかもしれないけども。速弾きを抑えメロディセンスで勝負する両ギタリストのプレイは好印象。あとは、この手のミドルテンポの曲で小技を利かせまくるリズム隊にも注目ね。

 

 本作中唯一のバラード「Cover Me」。ディメオ入魂の歌唱もあって、かつての「Runaway」他にも匹敵する抒情味を醸し出しますが、ライヴで演じられる機会はほとんどなかった模様。中間の鍵盤入り間奏部分(3分過ぎ辺り~)が、中期Led Zeppelin風(?)で彼らにしては少し風変わりかも。間奏後半は十八番のメロウなギターソロがこれでもかと繰り出されるわけですが。歌が戻ると、4分30秒辺り“♪You were all I ever wanted”のところで、それまで抑えていた感情を爆発させるかのように歌い上げるディメオさん。

 

 本作中最長だった前曲が終わった後にすぐさま続くのが、逆に(イントロダクションの「Snake Charmer」を除いて)一番短い「Dragonfire」。これはもう典型的なパワー/スピードメタル。というか、「Thundersteel」の本歌取りですよね。Reale/Dimeo/Flyntz作。むかしは即効性のある曲が好きだったから、こればっかりずいぶん聴きました。コーラス(サビ)がちょっと単調かなと、いまになると感じますけどね。それでも、「お約束過ぎるナア」と思いつつもギターソロ後半のツイン・フレージングなんかはグッと来る。終盤3分8秒辺りで、ボビーさんがハイハットのかわりにフロア・タムをドンドコ叩いてるのなんかも好きです。

 

 ちょっと練られたギターリフに、躍動的なフレージングのベースが絡む「The Law」も疾走曲。曲のテンポおよび構造はわりとシンプルな部類に入ると思いますが、正攻法で聴き手を「オッ」と思わせるリフ作りはなかなかのもの。緩急をつけたギターソロももはや彼らにしか出来ない職人芸の世界。こうして、我が法則による「3分50秒の名曲」がここにも誕生したのであった。Flyntz/Dimeo作……ついに彼らもMark Realeに頼らずここまで書けるようになりましたか。

 

 「Time to Bleed」もまた疾走するナンバーであった。バンド5人の共作になるのですが、ジャム的に発展して出来た曲なのでしょうか。本作中では比較的ストレートな(捻りのない)作りかもしれない。それにしてもこのアルバムでは、マイク・フリンツのギタープレイが光っていますねえ。本作の貢献第一は彼かもね。(次点が地味にピート・ペレツ。正統派のHM/HRでこれだけベースが活動的なのは珍しいと思いますよ。)

 

 「Queen」は日本盤ボーナス・トラック。というか、イニシャル・リリーズは日本だから、後発の欧米盤ではなぜか一曲オミットされたことになるかな。『FIRE DOWN UNDER』『RESTLESS BREED』あたりを思い出させるハードロック・ナンバー。

 

 ボビーのドラムソロから、ややトリッキーな始まりをみせる「Somewhere」はDimeo/Perez作品。心地よく疾走する曲ですが、サビのところ“♪Somewhere tomorrow, somewhere today……”の爽快感は特にナイス。ギターソロのバックのボビー’s ドラミングも匠の技で、曲を単調に感じさせない。

 

 やや大仰なオープニング・リフで始まる「Promises」も、マークは作曲に関与していないね。Dimeo/Flyntz作。テンポはやはり速めなのですが、ギターとベースがユニゾンになるリフが多いためか、タフネス3割増し(?)に感じられます。ディメオの歌も力感と情感を兼ね備えた見事なものに。

 

 こうして最後まで聴いてくると、Riotは「Mark Reale Band」じゃなくて、あくまで有機的なユニットなんだなあと再認識します。そしてそれは、マーク自身の思惑でも(おそらく)あるのです。最近調べたところでは、Riotの初期から中期にかけてのマネージャー/プロデューサーSteve Loeb氏は、マークの才能だけを買って他のメンバーをないがしろにする傾向があったようなのですが……マーク自身はそれでいいとは思っていなかったということですね。マークに育てられたドン・ヴァン・スタヴァンやマイク・フリンツが彼に恩義を感じてるというのもわかる気がします。で、マイク・フリンツのプレイヤー及びソングライターとしての大成長が見て取れるのがこの『SONS OF SOCIETY』なのです。

第49回「Quatermass Ⅱ」(1)

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 本家Quatermassについてはいろいろすでに語られていますし(ちょっと調べてみて、ネット上の情報の多さに驚いた)、実は当ブログでもすでに「Black Sheep of the Family」の名演について言及済みです(第29回「ロックンロール動物園・十二支編」(3))。そこで、天邪鬼な私としては、今回は「Ⅱ」の方を繰り出そうとこういうわけで。

 

QuatermassⅡ『LONG ROAD』(1997)

  1. Prayer for the Dying
  2. Good Day to Die
  3. Wild Wedding
  4. Suicide Blonde
  5. River
  6. Long Road
  7. Woman in Love
  8. Hit and Run
  9. Daylight Robbery
  10. Coming Home
  11. Circus
  12. Undercarriage [Demo Version]

<メンバー>

 Gary Davis(Gt)

 Bart Foley(Vo, Gt)

 Nick Simper(Ba)

 Mick Underwood(Dr, Perc

 +ゲストDon Airey(Key)

 

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 どうです、このメンツ。地味に凄くない?本家QuatermassのメンバーだったのはMick Underwood。Mickさんは、Gillanでの80年代前半頃の活躍が個人的には好き。「Unchain Your Brain」(『GLORY ROAD』収録)のビシバシ決まるなドラミングなんか、NWOBHMの若い連中が束になってもかなわんよ。

 

 彼と語らってバンドを動かしたのはNick Simperらしい。ご存知Deep Purple第一期のベーシスト。(Roger Gloverの前任ね。)パープルをやめ(させられ?)てからもWar HorseとかFandangoとか、渋いブリティッシュハード作品を残してる人。近年はNasty Habitsという連中を率いてDeep Purple第一期の楽曲を演奏するプロジェクトなんかもやってます。

 

 ミックとニックは旧友らしいんですが、1994年頃、ジャムったりするうちに「バンドをやろうや」ってことになったと。セッションシンガーのPeter Taylorと元GillanのBernie Tormeを引き入れて始動したそうですが、間もなくヴォーカルとギターが交替。それぞれBart FoleyとGary Davisが後任になったというわけです。この二人が作ったマテリアルが大部分を占めるほか、Bernie Tormeの曲と、本家Quatermassのベーシスト兼ヴォーカリストJohn Gustafson作の曲も入って、『LONG ROAD』は完成しました。あっと、忘れちゃいかんが、元Rainbow他で現Deep Purpleの名手Don Aireyもキーボードで客演しております。

 

 さあ、聴いてみよう。陰陽座の「桜花の理」っぽい――No,こっちが先だった――ギターのアルペジオから始まるのが、1曲目「Prayer for the Dying」。Bartのやや塩辛いヴォーカルが渋いミドル・ナンバー。Garyの泣きのギターも味わい有り。

 

 少し地味かなあ、と思っていると、2曲目にヘヴィなリフの「Good Day to Die」が来る。Mickのスケールの大きなドラミングがイイ。メロディアス且つ(微かに)東方風のGaryのギター・ソロも良し。“♪Good day to die……”というリフレインも耳に残る。

 

 3曲目はJohn Gustafson提供の曲なんですが、70年代的なプログレ風味は無くて、むしろアップテンポの――Chris Speddingが大好きそうな――明るいロックンロール。こういう曲を弾いてるドンさんってあまり思い浮かばないけど、リトル・リチャーディッシュな転がるピアノも素敵。3分弱で潔く終わり。

 

 再びBart & Garyのペンによる「Suicide Blonde」へ。バートさんの声質の性もあるかな、哀愁漂う一曲で、ニックさんのベースもいい動き。ゲイリーさんのギターは、80年代を通過したものらしく、モダンな技(タッピングとか)も織り交ぜてきてたりする。このあたりの「いかにもトラディショナルなハードロックの中に、新人のセンスとテクを突っ込んでくる」ところは、かつて当ブログで取り上げたSix Ton Budgieとか、Alvin Lee脱退後のJoe Gooch入りTen Years Afterとかにも共通するところかなと。

 

 次の「River」はバーニー・トーメ(先だって亡くなってしまいました……)作のナンバー。バーニー自身1997年のアルバム『WILD IRISH』で取り上げていまして、そちらでは自分で歌ってギターを弾いてます。QuatermassⅡヴァージョンは、ピアノも入ってより劇的に演出されております、物悲しい雰囲気のバラードです。ゲイリーのソロもバーニー版に負けてない華やかさあり。

 

 タイトルトラック「Long Road」は6曲め。オルガン+歌でしんみりと始まりつつ、ドラムが入るところからは(どことなく)Led Zeppelinのテイストを感じさせる展開となるのです。「ダダダダ、ダダダダッ」っていうシンプルなスネア・フィルが心地好い。

<続く>

Riot特集:時系列全作品紹介(10)『INISHMORE』

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Riot『INISHMORE』1997

  1. Black Water
  2. Angel Eyes
  3. Liberty
  4. Kings Are Falling
  5. The Man
  6. Watching the Signs
  7. Should I Run
  8. Cry for the Dying
  9. Gypsy

    Irish Trilogy

  1. Inishmore(Forsaken Heart)
  2. Inishmore
  3. Danny Boy

<メンバー>

Mark Reale(Gt)

Mike Flyntz(Gt)

Pete Perez(Ba)

Mike Dimeo(Vo)

Bobby Jarzombek(Dr)

 

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 新体制での出発作となったアルバムです。と言いましても、メンバーが替わったわけではありません。(ドラムはボビーさんが復帰しましたが。)デビュー以来の縁であったSteve Loeb氏と手を切ったことにより、プロダクション(制作過程及び品質)が変化したのですね。

 

 Loebの庇護下(管理下?)にあった時は氏の所有するスタジオを使っていたRiotですが、本作からは同じニューヨークでもPaul Orofino氏のMillbrook Studioを拠点とするようになります。で、これが奏功したのか、音質面はかなり良くなりました。オロフィノさんの仕事については本ブログ「第37回「Faith And Fire」(1)」「第37回「Faith And Fire」

(3)」などでも言及しておりますが、クリアな音像の、Riot的なハードロックを表現するにはふさわしい音作りとなっております。

 

 ライオットは、『NIGHTBREAKER』以来相変わらずイニシャル・リリースは日本(のみ)で、欧米ではなかなか販路が確保できなかった様子なのですが。メジャーレーベルとディールがなくても良い作品を送り出すことは可能となった、といえるでしょうね。本人たちは相変わらずたいへんだったと思いますが、ボビーさんが戻ってきた、っていうだけでも状況の好転を示しています。(前作で叩いたJohn Macalusoさんに難があったっていう意味ではなく、長年Mark Realeの近くにいた人Bobbyが「戻ろう」と思えたという変化がポジティヴだという事。)

 

 もう一つ制作面でのことを添えておくと、本作では豪華なバッキング・ヴォーカルが加わっておりまして、それも良い方向に作用しています。曲ごとの効果はあとで申し述べますが、パワーメタル曲のコーラス部分など「厚み」が求められるところに特に効いてます。中音域を得意とするMike Dimeoをうまいこと補っているのは、Riotのツアーにも帯同したLigaya Perkinsさん、TNTのTony Harnellさん、TykettoのDanny Vaughnさん。リガヤさんは後にPete Perezのパートナーとなるので、バンドに近いミュージシャンだったと思われます。トニー・ハーネルさんはマーク・リアリとWestworldをやりましたが(第41回「Ice Age」(2))、直接の出会いはここでしょうね。ちょうどこの頃、オロフィノさんのスタジオはTNT『FIREFLY』の制作にも使われていました。ダニー・ヴォーンさんとの接点はわかりませんが、彼のソロアルバムVaughn『SOLDIERS AND SAILORS ON RIVERSIDE』(2000)にオロフィノさんはプロデューサーとして関与しています。

 

 さてアルバムを再生しますと、30秒ほど低音の前振りがありましてから、ヴァイオリンが奏でられていきます。(クレジットによるとYoko Kayumi氏によるプレイ。)そこへ鍵盤・ギター・リズム隊も加わって美旋律の一大オープニングとなるのですが、この辺りは前作の手法を踏襲している感じがありますね。

 

 といいますか、方法論としては『INISHMORE』は明らかに『THE BRETHREN OF THE LONG HOUSE』のそれを引き継いでます。前作ほどの明確なコンセプト作品ではありませんが、「アイルランドのリヴァーダンス(Riverdance)を観て感激したマークが、アイルランドをテーマに作品を作ってみようと思った」っていうわけで‟テーマ設定”がまずあること。(それにしても影響されやすい人だな、マーク先生。そういやあ、前作ではアイルランド関連でGary Mooreの「Out in the Fields」もやってたね。)インストゥルメンタルをいくつか入れてること。トラディショナル・ソングを取り入れてること。このあたりですかね。パワー/スピードメタル的な曲が多いのはちょっとした変化ですが……あくまで正統的なバンド演奏を核にしながらも、劇的(ドラマティック乃至映画的)な盛り上げを意識した作風になっているのは、継続路線なんでしょう。

 

 さて、本格的にスタートとなるのは次の「Angel Eyes」から。本作はほとんどReale/Dimeo作品ですが、この曲はReale/Dimeo/Flyntzの作となってまして、それもあるのか現在のRiot V(マーク・リアリ没後、マイク・フリンツとドン・ヴァン・スタヴァンがバンドを引き継いだ)でもしばしば演奏されています。97年当時ですでに長年のギター・パートナーとなっていたマークとマイクによるツインが決まりまくる、たしかに名刺代わりの一曲ともなりましょうなってなもの。ピートの可動的ベース(?)もライヴリーだし、復帰したボビー・ジャーゾンベクの完璧な手技足技も素晴らしいですが、コーラス(サビ)部分を中心に一層カラフルになったヴォーカル部門がなんとも素敵。この曲は久々にPVも作られてまして、バンドの気合いが感じられますね。(‟演奏場面+ニューヨーク(?)のストリートを背景としたちょっとした映像”の、まあメタルバンドとしてはエライ地味な作風ですがね。彼ららしいや。)

 

 スピードナンバーが続きまして「Liberty」ですが、このへんとなると何かしら過去の作品を思わせるところが増えてまいります。スピードメタルのバリエーションって難しいのかもしれませんが、前作なら「Glory Calling」のような感じで、ね。ライヴ盤も含めて何十回も聴いてるせいかもしれませんが、ちょっと予定調和的な感じにも感じられる……この曲の個人的味読ポイントは、ギターソロ後半(3分17秒辺り~)の爽快な展開になるくだりですかな。

 

 少しテンポを落として‟ざっざかざっざか”進行する「Kings Are Falling」のほうに、いまだとより魅力を感じますな。まあこれも、「『NIGHTBREAKER』の「Soldier」の作風かな」、と思わなくもないですが……ピートとボビーが凄くいい仕事をしててダイナミックなので楽しい。ギターソロのところは、「これこれ!」のリアリ節を堪能。“♪Kings are falling~”のところ(コーラス)のバッキング・ヴォーカルの入り方も良くて、ともすれば地味になりそうな曲が華やかになっています。

 

 同じスピードナンバーでも「The Man」は、よく出来てると私は思います。歌メロがよく動いてダイナミックなのと、ギターソロのところで敢えてツインは締めくくりだけにして両人の個性を出すようにしてるのがいい感じ。勿体ぶらずイキナリ始まるところもいいし、3分50秒くらいで終わる黄金パターンだしね。1分55秒からのソロは、マークが先攻→マイクが後攻→最後にツインだと思われますが、マークらしい粘りのあるフレージングも聴ければ、転調する箇所を背景に巧いところを聴かせるマイクの技量も味わえてお腹一杯。

 

 楽曲単位でアイルランド的な要素を取り入れているのは、まずはこの「Watching the Signs」ということになるでしょうか。近年のインタビューでも、フリンツさんが「マークが作ったWatching the Signsみたいな曲を自分で作りたいとずっと思っててさ……」って話してて、印象的でしたね。マイク・フリンツさんもThin Lizzyは大好きみたいですが、それ以上にマークのこと尊敬してるんだよねえ。まあそれはさておいて単に聴いても、マークの美学が端的にあらわれた曲としてよく出来てると思います。2分12秒からのギターソロはまさしく「曲の中の曲(ミニ・ソング)」として構築されてて、かつての名曲「Altar of the King」以来の名演の流れにありますしね。効果的なバッキングを得て、ディメオさんの歌唱が無理なく伸び伸びしてるのも嬉しい。この曲に関しては、ギターのフレーズを聴きながらのフェイド・アウトというのも雰囲気に合っていてナイス。

 

 さて、実は私このアルバムは入手するのがずいぶん遅かったんですが、その理由は「先に買って聴いてた『SHINE ON』っていうライヴ盤にこのアルバムの曲は大半が入ってたから」なんです。当時の来日公演を収めた『SHINE ON』に入っていなかった唯一の曲、それが次の「Should I Run」でした。別にレア曲でも何でもないんですが。Dimeo/Flyntz作。「Warrior」と「On Wings of Eagles」と「Glory Calling」を足して三で割った……じゃないけど、何か既聴感をおぼえさせるんですね。ボビーさんのバスドラ・ワークは凄いし、ギターソロ後半(3分ちょうど辺り~)のメロディセンスはわるくないですけど。

 

 やはり疾走ナンバーが続きます。「Cry for the Dying」。Riot様式美といえばそこまでですが、新鮮味はさほどなし。ギターソロが意外にあっさり終わっちゃったりするのは珍しいかな。あと、この曲で良いのは、Bメロでしょうか。Aメロやサビがあまりにお約束なのに比べるとね。それと、“♪Hear your cry for the dying but no one will see……”云々というコーラスなど、ディメオさんの真面目なタッチの歌詞は私は嫌いじゃありません。

 

 「Gypsy」もパワー/スピードメタルで、この流れで聴くと少しもたれる。ライヴで本編の締めくくりにやったりしてるのはうまい嵌まり具合なんですけどね。コーラスのメロディにうまいこと載せたリリック“♪Save us we cry from……”は、キャッチーさにやや欠ける(単純でないのでライヴで一緒には歌いにくい)きらいはありますが、真面目な正統派メタルとしてはよく出来てる。器楽では、ボビーのドラムがイイのはもういちいち言うまでもないとして、ピートの動きまくるベースのお陰でダイナミックになっていますね。ギターソロはマーク→マイク→ツインの黄金パターン。

 

 最後の三曲は「アイリッシュ・トリロジー」という組曲扱いになっております。「Inishmore (Forsaken Heart)」は、ギター+キーボードをバックにした、抒情的なバラード。ディメオの独擅場。これが短く終わった後、バンドによるインストゥルメンタルの「Inishmore」に。前作では映画音楽のカヴァーをやっていましたが、これは自作。イニッシュモア(Inishmore または Inis Mór)というのは、アイルランドに実在する島の名前で、本作のテーマの(マークにとっての)インスピレーションの中心にあったところ(らしい)。この組曲では「海」を思わせる効果音が挿入されております。劇的なインストが終わった後の締めくくりには、トラディショナル・ソングの「Danny Boy」をやはりインストで。アイルランド民謡でもって本作を余韻嫋嫋に結ぶというのは心憎いですが、実はマーク・リアリは『THUNDERSTEEL』期のステージでのギターソロ・コーナー(他のメンバーはさがって彼だけがプレイするパートね)でとうに披露していたのでした。『RIOT IN JAPAN-LIVE!!』でも聴くことが出来ます。

第48回「Pat Boone」(5)

 『IN A METAL MOOD』から派生して(?)の、名鼓手Gregg Bissonetteのソロ作品紹介続編です。

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Gregg Bissonette『GREGG BISSONETTE』(1998)*[   ]内はゲストギタリスト

  1. Common Road [Steve Vai]
  2. Teenage Immigrant [Scott Henderson]
  3. Dr. Toulak [Ty Tabor]
  4. Frankenstein [Doug Bossi, George Bernhardt]
  5. Wildwood [Andy Summers]
  6. Vulgar Boatman [Paul Gilbert]
  7. Tribute To Tony [Mike Miller]
  8. You Kill Me [Scott Henderson]
  9. Frybrain [Steve Lukather]
  10. 1920 Shady Dr. [Michael Thompson]
  11. No Matter What [Doug Bossi, George Bernhardt]

<メンバー>

Gregg Bissonette(Dr)

Matt Bissonette(Ba)

 他

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 「Wild Wood」はAndy Summers(元The Police他)を迎えた一曲。リムや高音タムを絡めたドラミングと、アンディの空間を活かすギタープレイがマッチしてナイスな感じに。ああ、この曲のドラミングは、ひょっとするとStewart Copeland(元The Police)にオマージュを捧げているのかもね。ハイハット連打の絡め方とか、よく雰囲気を寄せてるし。

 

 ヘヴィな「Vulgar Boatman」のゲストは、Paul GilbertRacer X風の弾き倒し……では「ない」感じなのが新鮮。ポールもさすがに名人だね。

 

 「Tribute To Tony」は、ゲストギタリストMike Millerのジャジーなアウトが繰り出される、(たぶん)Tony Williamsへのトリビュート。冒頭や中盤の叩きっぷりはTony WilliamsLifetime時代を彷彿とさせるし、お得意のライドのレガートはトニーから来てるのかと思うとそれも納得。

 

 二度目の登場Scottをフィーチュアしての物騒な(タイトルがね)「You Kill Me」。ここまで言及する機会がありませんでしたが、弟さんMatt Bisonnetteのプレイも実に巧みです。(ドラムと弦の兄弟は、Van HalenだけでもSpastic Ink(Jarzombek兄弟)だけでもないのだ……)後半にバスドラの連打とかも聴けますが、この人(グレッグ)のプレイは音の粒がきちっと揃って立っているのがいいんだよね。

 

 次のハイパーな「Frybrain」のツーバスもそう。やっぱりJoe Satrianiがやりそうな高速シャッフルで、ここでのゲストはSteve LukatherTOTO他)。スカッとした爽快感を味わいたけりゃあ、まずこれかな。3分台からのギターソロ裏のドラミングなんかもとんでもないね。Billy Cobhamの「Quadrant 4」あたりの足さばきに影響を受けているのではありますまいか。

 

 Michael Thompsonを迎えては「1920 Shady Dr.」。マイケル・トンプソンさんって知らなかったんですが、いいプレイするなア。ちょいと調べて……あら、Andy Fraser『FINE FINE LINE』1984)で弾いてた方ですか。

 

 ラストのみ歌が入ってまして、これはグレッグが自分で歌ってるようです。爽やかな8ビートの歌モノ。Badfinger「No Matter What」のカヴァーですな。ボーナストラック的な位置づけだと思いますが、こんなところにもグレッグのビートルズ好きが出てますね。(Badfingerはご存知ビートルズが設立したアップル・レコードに属し、バンド間には人的交流もありました。)

 

 ドラマーのソロアルバムとしてはなかなかにカラフルで面白い作品ですが、探すのはちょっと大変ですかね。Discogの記載によると、日本盤も出ていたようですが……。ロックとジャズと両方イケるドラマーってのはそうそう沢山はいない――Simon PhillipsやVinnie Colaiutaなんかは別ですけど――なかで、数少ない名手Greggさんのプレイをまとめて聴ける作品です。

<完>

Riot特集:時系列全作品紹介(9)『THE BRETHREN OF THE LONG HOUSE』

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Riot『THE BRETHREN OF THE LONG HOUSE』1995

  1. The Last of the Mohicans(intro)*
  2. Glory Calling
  3. Rolling Thunder
  4. Rain*
  5. Wounded Heart
  6. The Brethren of the Long House
  7. Out in the Fields
  8. Santa Maria
  9. Blood of the English
  10. Ghost Dance
  11. Shenandoah
  12. Holy Land*
  13. The Last of the Mohicans*

<メンバー>

Mark Reale(Gt)

Mike Flyntz(Gt)

Pete Perez(Ba)

Mike Dimeo(Vo)

John Macaluso(Dr)

+[guest]Bobby Jarzombek(Dr*)

 

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 Riotとしては初となるコンセプトアルバム。後で述べるように楽曲の出来はなかなかのものなのですが、デビュー以来の縁であったSteve Loeb(マネージャー、プロデューサー)と袂を分かつこととなる問題作ともなりました。何よりの問題は、音質。Loeb主導で行われたミックス(Mark Realeは立ち会えなかったとか)が――控え目に言っても――酷かったこと。音が潰れて平板になっているというか……ドラムに関しては妙なエコーのせいでキレが悪いですし。音質向上が期待された最近のリマスター版でも、遺憾ながらさほど良くはできていなかったところをみると、モトがかなり厳しかったことになる。

 

 またLoebマネージメントはRiotのツアー管理・サポートが出来ていなかったらしく、決まった(決まりかけた)コンサートがキャンセルになるなどしたために、ついていけなくなったBobby Jarzombek(Dr)が脱退してしまうことにもなりました。

 

 バンド周辺の状況は斯様に良好でなかったのでありますが、RiotというかMark Realeのクリエイティヴィティは衰えていなかった。というか、これだけの充実作を完成させながら、音質で足を引っ張られ、フォローするツアーもきちんとできなかったというのは悲劇としか言いようがない……。と、ネガティヴ話はここまでにして、あとは本作の内容を味わって参りましょう。

 

 冒頭「Intro/The Last of the Mohicans」が流れますが、これは映画『ラスト・オブ・モヒカン』のメイン・テーマ(Trevor Jonesによる)。なんでもマークがこの映画をみて感銘を受け、そこから本アルバム――ネイティヴ・アメリカンとヨーロッパからの移住者の歴史をモチーフにしたコンセプト作――の構想に入ったということなんですが。インスピレーション源をストレートに表現するのが正直な人マーク流。

 

 次の「Glory Calling」からが本編ということになりますが、まずは得意の疾走ナンバーから。メインリフがRainbowの「Spotlight Kid」(とかAlcatrazzの「Jet to Jet」)に似てるとか野暮なことを言っちゃあいけません。この曲のポイントはそのリフでなく、“♪Fight!”のやや一本調子なサビでもないのです(私見)。Bobbyが抜けちゃったあとのドラムはどうなの?というのに対するアンサー、John Macalusoのプレイが聴けるということが重要。Johnさんは――Mark Reale関連でいうと――TNTに居たこともありますし、業界では名うての巧者ですが、ライオットでは如何。

 

 まずは、Aメロの後ろのバスドラ3ツ打ちがいいですな。Bメロに移るところのストレイトな8分スネア×8も心地よい。これでさっき言ったアンクリアな音質じゃなきゃあねえ。あとは、ギターソロですか。ちょっとくどいんじゃないかというくらい、頭から終わりまでマークとマイクのツインで決めまくる。ソロ明けから後奏にかけて、メロディアスなオブリガードを入れまくるところは「Warrior」以来の伝統芸。この曲はPVが作られておりますので、探して観られたい。いかにも彼ららしい地味なつくりですけどね。

 

 少し似た感じの曲が続きますが。「Rolling Thunder」なんて今じゃ取り上げられませんけど、アタマのゴツゴツしたところなんかホントに「雷ゴロゴロ」って感じで雰囲気ある。1分55秒辺りからのギターソロ前移行部分のリフィングも、途中からベースもユニゾンになってくるところとか良い。3分50秒くらいで終わっちゃうところも含めて、私好みなんですがな。(おっと、これはDimeo/Flyntzの共作でしたか。Reale/Dimeoナンバーが多い本作中では珍しい部類。)

 

 Mike Dimeoの歌も前作以上にタフになっていてよいのですが、それでも彼の本領は上のようなスピードメタルよりも、この「Rain」のようなバラードで発揮されますな。アコースティック調で始まり、ディメオの歌をじっくり聴かせてから、十八番のソロを経て劇的に盛り上げて終わるという。あと、この曲のドラムはBobby Jarzombekが叩いています。(脱退する前に録っていたのでしょうか。)

 

 古き良きハードロックの味わい、「Wounded Heart」。程よい疾走感と伸び伸びした歌唱、Mark Realeお得意のフレーズ満載のギター部門……これで録音が良かったらなかなかの名曲といえたでしょうに。(こもった音質で割と台無しになりやすいのは、スピードナンバーやバラードでなくて、こういう曲だよね。)当時はライヴでも演奏されて盛り上がっていたのですが、さすがに最近のRiot Vが採り上げそうな気配は無いな。

 

 前二曲はReale/Dimeo作でしたが、ここでDimeo/Flyntzの手になるタイトルトラック「The Brethren Of The Long House」が登場。二拍三連の細かな刻みがやや異色ながら、重い突進感は本作のヘヴィなテーマには合っているのかもしれませんな。この曲の功労者はベースのPete Perezでしょうか。硬質で粒の揃った音の繰り出しは、先代までのベーシストとは異なったテイスト有り。

 

 コンセプトアルバムでありながらカヴァー曲が来るってのも面白い話ですが、ここでGary Moore「Out in the Fields」。Gary MooreThin Lizzyは大好きだと思われるRiot(特にマーク)がコレを選ぶこと自体はさほど意外ではないのですがね。オリジナルはPhil Lynott とGary Mooreのデュエットでしたが、ここではマーク・リアリとマイク・ディメオがリードヴォーカルを分け合っております。ギターソロも含め、基本的にオリジナルに忠実なカヴァー。ついでにオマケ情報を添えると、フィンランドSonata Arcticaはソロをすべて鍵盤にするヴァージョンで、ドイツのPrimal Fearはソロ全編をツイン化するアレンジで、それぞれやってます。

 

 Reale/Dimeo作に戻っては、ピアノ・バラードの「Santa Maria」。ストリングスも入ったりして荘厳なんですが、マークのアコースティック・ギターさばきが特に素晴らしい。Westworld以前ではここまで披露したことはなかったんじゃないかな。コロンブスの用いた船舶の名前にちなむ(と思われる)、抒情的な一曲。ライヴだと(ストリングスがいない分)よく動くピートのベースラインが聴こえて印象的。

 

 次は、彼らには珍しくスライド・ギターがフィーチュアされた、ヘヴィな8ビート「Blood of the English」。Riotには従来あまりなかった作風を取り入れている感じがします。シンプルかつ規則的なドラムは、「行軍」の様子を表しているのかもしれない……歌詞も兵士たちの悲壮な心情を歌ったもののようですしね。

 

 メランコリックからヘヴィへ行って、とやや聴き手が沈まされたところで繰り出される「Ghost Dance」は……いかにもRiotなメロディアス疾走曲。前作の「Babylon」あたりに近い雰囲気とでも言いますか。メンバー全員(Reale/Dimeo/Flyntz/Perez/Macaluso)の共作。“♪Someone see me……”に始まるコーラス部分も程よくキャッチーで良いし、ギター・プレイも(ソロだけでなくリフ・オブリも)よく練られていると思います。

 

 前の曲はフェイドアウトしていくとともに「遠くで響くような」独唱が微かに聴こえるんですが、その区切りとともに始まるのが次曲「Shenandoah」。オーケストレーションをバックにマイクが朗々と歌う、トラディショナル・ソング。アメリカでは19世紀から歌われているとか。ディメオ入魂の歌唱も素晴らしいですが、伴奏として入るマーク(だよね?)のギターが美しい。同僚マイク・フリンツが絶賛する「(ブライアン・メイとも肩を並べるような)マークのヴィブラート」が堪能出来ます。トラディショナル・ソングをロックバンドのフォーマットで演るっていうのに成功した彼らは、次作でも同様の試みを行っていくのです。

 

 「Holy Land」もReale/Dimeo作。こちらも手触りは「Wounded Heart」や「Ghost Dance」に近い感じかな。無理にパワーメタルにしない方が、マイクのヴォーカルも生きる感じがしますね。一面やや地味な感じ無きにしも非ず、ですが、その分ギターソロ・セクションはちょっと頑張ってて、「オッ!」とひきつけられます。ツインになるところとかね。あと、この曲(次の曲も)はBobby Jarzombekさんのプレイとなっております(ドラム)。

 

 締めくくりは、イントロでもちょっとやっていた「The Last of the Mohicans」をフル(?)ヴァージョンで。一番がひとしきり済んだところで、細かい太鼓のロールの上でピートのベース・ソロが繰り出されたりするよ。さっきもあったよね、二拍三連&細かいベースのパターン。インストゥルメンタルで劇的な曲をやる、っていうのもこれまた次作で踏襲されるんですね。

 

 とまあ、こんなアルバムを完成させたマーク・リアリと仲間たち。  『THUNDERSTEEL』の路線が好きな人には(「パワーメタル」色は抑え目で)刺激が足らんのかもしれませんが、楽曲の出来はなかなかのものでしたね。本来Riotの持ち味は「あくまでメロディを大切にして硬派のハードロックをやる」ことにありましたから、「これでいいのだ」とも思えます。

 

 ……が、それだけにやっぱり音質(ミックス)の問題は気になりますよね。「名盤」となる素質十分だった作品を、台無しとは言わぬまでも損なってしまい、ツアー関係のマネージメントでもバンドに利益をもたらさなかったLoeb氏とはやっていけないという判断にバンドが至るのは、時間の問題でありました。