本家Quatermassについてはいろいろすでに語られていますし(ちょっと調べてみて、ネット上の情報の多さに驚いた)、実は当ブログでもすでに「Black Sheep of the Family」の名演について言及済みです(第29回「ロックンロール動物園・十二支編」(3))。そこで、天邪鬼な私としては、今回は「Ⅱ」の方を繰り出そうとこういうわけで。
QuatermassⅡ『LONG ROAD』(1997)
- Prayer for the Dying
- Good Day to Die
- Wild Wedding
- Suicide Blonde
- River
- Long Road
- Woman in Love
- Hit and Run
- Daylight Robbery
- Coming Home
- Circus
- Undercarriage [Demo Version]
<メンバー>
Gary Davis(Gt)
Bart Foley(Vo, Gt)
Nick Simper(Ba)
Mick Underwood(Dr, Perc)
+ゲストDon Airey(Key)
どうです、このメンツ。地味に凄くない?本家QuatermassのメンバーだったのはMick Underwood。Mickさんは、Gillanでの80年代前半頃の活躍が個人的には好き。「Unchain Your Brain」(『GLORY ROAD』収録)のビシバシ決まるなドラミングなんか、NWOBHMの若い連中が束になってもかなわんよ。
彼と語らってバンドを動かしたのはNick Simperらしい。ご存知Deep Purple第一期のベーシスト。(Roger Gloverの前任ね。)パープルをやめ(させられ?)てからもWar HorseとかFandangoとか、渋いブリティッシュハード作品を残してる人。近年はNasty Habitsという連中を率いてDeep Purple第一期の楽曲を演奏するプロジェクトなんかもやってます。
ミックとニックは旧友らしいんですが、1994年頃、ジャムったりするうちに「バンドをやろうや」ってことになったと。セッションシンガーのPeter Taylorと元GillanのBernie Tormeを引き入れて始動したそうですが、間もなくヴォーカルとギターが交替。それぞれBart FoleyとGary Davisが後任になったというわけです。この二人が作ったマテリアルが大部分を占めるほか、Bernie Tormeの曲と、本家Quatermassのベーシスト兼ヴォーカリストJohn Gustafson作の曲も入って、『LONG ROAD』は完成しました。あっと、忘れちゃいかんが、元Rainbow他で現Deep Purpleの名手Don Aireyもキーボードで客演しております。
さあ、聴いてみよう。陰陽座の「桜花の理」っぽい――No,こっちが先だった――ギターのアルペジオから始まるのが、1曲目「Prayer for the Dying」。Bartのやや塩辛いヴォーカルが渋いミドル・ナンバー。Garyの泣きのギターも味わい有り。
少し地味かなあ、と思っていると、2曲目にヘヴィなリフの「Good Day to Die」が来る。Mickのスケールの大きなドラミングがイイ。メロディアス且つ(微かに)東方風のGaryのギター・ソロも良し。“♪Good day to die……”というリフレインも耳に残る。
3曲目はJohn Gustafson提供の曲なんですが、70年代的なプログレ風味は無くて、むしろアップテンポの――Chris Speddingが大好きそうな――明るいロックンロール。こういう曲を弾いてるドンさんってあまり思い浮かばないけど、リトル・リチャーディッシュな転がるピアノも素敵。3分弱で潔く終わり。
再びBart & Garyのペンによる「Suicide Blonde」へ。バートさんの声質の性もあるかな、哀愁漂う一曲で、ニックさんのベースもいい動き。ゲイリーさんのギターは、80年代を通過したものらしく、モダンな技(タッピングとか)も織り交ぜてきてたりする。このあたりの「いかにもトラディショナルなハードロックの中に、新人のセンスとテクを突っ込んでくる」ところは、かつて当ブログで取り上げたSix Ton Budgieとか、Alvin Lee脱退後のJoe Gooch入りTen Years Afterとかにも共通するところかなと。
次の「River」はバーニー・トーメ(先だって亡くなってしまいました……)作のナンバー。バーニー自身1997年のアルバム『WILD IRISH』で取り上げていまして、そちらでは自分で歌ってギターを弾いてます。QuatermassⅡヴァージョンは、ピアノも入ってより劇的に演出されております、物悲しい雰囲気のバラードです。ゲイリーのソロもバーニー版に負けてない華やかさあり。
タイトルトラック「Long Road」は6曲め。オルガン+歌でしんみりと始まりつつ、ドラムが入るところからは(どことなく)Led Zeppelinのテイストを感じさせる展開となるのです。「ダダダダ、ダダダダッ」っていうシンプルなスネア・フィルが心地好い。
<続く>