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Riot特集:時系列全作品紹介(9)『THE BRETHREN OF THE LONG HOUSE』

Riot『THE BRETHREN OF THE LONG HOUSE』1995

  1. The Last of the Mohicans(intro)*
  2. Glory Calling
  3. Rolling Thunder
  4. Rain*
  5. Wounded Heart
  6. The Brethren of the Long House
  7. Out in the Fields
  8. Santa Maria
  9. Blood of the English
  10. Ghost Dance
  11. Shenandoah
  12. Holy Land*
  13. The Last of the Mohicans*

<メンバー>

Mark Reale(Gt)

Mike Flyntz(Gt)

Pete Perez(Ba)

Mike Dimeo(Vo)

John Macaluso(Dr)

+[guest]Bobby Jarzombek(Dr*)

 

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 Riotとしては初となるコンセプトアルバム。後で述べるように楽曲の出来はなかなかのものなのですが、デビュー以来の縁であったSteve Loeb(マネージャー、プロデューサー)と袂を分かつこととなる問題作ともなりました。何よりの問題は、音質。Loeb主導で行われたミックス(Mark Realeは立ち会えなかったとか)が――控え目に言っても――酷かったこと。音が潰れて平板になっているというか……ドラムに関しては妙なエコーのせいでキレが悪いですし。音質向上が期待された最近のリマスター版でも、遺憾ながらさほど良くはできていなかったところをみると、モトがかなり厳しかったことになる。

 

 またLoebマネージメントはRiotのツアー管理・サポートが出来ていなかったらしく、決まった(決まりかけた)コンサートがキャンセルになるなどしたために、ついていけなくなったBobby Jarzombek(Dr)が脱退してしまうことにもなりました。

 

 バンド周辺の状況は斯様に良好でなかったのでありますが、RiotというかMark Realeのクリエイティヴィティは衰えていなかった。というか、これだけの充実作を完成させながら、音質で足を引っ張られ、フォローするツアーもきちんとできなかったというのは悲劇としか言いようがない……。と、ネガティヴ話はここまでにして、あとは本作の内容を味わって参りましょう。

 

 冒頭「Intro/The Last of the Mohicans」が流れますが、これは映画『ラスト・オブ・モヒカン』のメイン・テーマ(Trevor Jonesによる)。なんでもマークがこの映画をみて感銘を受け、そこから本アルバム――ネイティヴ・アメリカンとヨーロッパからの移住者の歴史をモチーフにしたコンセプト作――の構想に入ったということなんですが。インスピレーション源をストレートに表現するのが正直な人マーク流。

 

 次の「Glory Calling」からが本編ということになりますが、まずは得意の疾走ナンバーから。メインリフがRainbowの「Spotlight Kid」(とかAlcatrazzの「Jet to Jet」)に似てるとか野暮なことを言っちゃあいけません。この曲のポイントはそのリフでなく、“♪Fight!”のやや一本調子なサビでもないのです(私見)。Bobbyが抜けちゃったあとのドラムはどうなの?というのに対するアンサー、John Macalusoのプレイが聴けるということが重要。Johnさんは――Mark Reale関連でいうと――TNTに居たこともありますし、業界では名うての巧者ですが、ライオットでは如何。

 

 まずは、Aメロの後ろのバスドラ3ツ打ちがいいですな。Bメロに移るところのストレイトな8分スネア×8も心地よい。これでさっき言ったアンクリアな音質じゃなきゃあねえ。あとは、ギターソロですか。ちょっとくどいんじゃないかというくらい、頭から終わりまでマークとマイクのツインで決めまくる。ソロ明けから後奏にかけて、メロディアスなオブリガードを入れまくるところは「Warrior」以来の伝統芸。この曲はPVが作られておりますので、探して観られたい。いかにも彼ららしい地味なつくりですけどね。

 

 少し似た感じの曲が続きますが。「Rolling Thunder」なんて今じゃ取り上げられませんけど、アタマのゴツゴツしたところなんかホントに「雷ゴロゴロ」って感じで雰囲気ある。1分55秒辺りからのギターソロ前移行部分のリフィングも、途中からベースもユニゾンになってくるところとか良い。3分50秒くらいで終わっちゃうところも含めて、私好みなんですがな。(おっと、これはDimeo/Flyntzの共作でしたか。Reale/Dimeoナンバーが多い本作中では珍しい部類。)

 

 Mike Dimeoの歌も前作以上にタフになっていてよいのですが、それでも彼の本領は上のようなスピードメタルよりも、この「Rain」のようなバラードで発揮されますな。アコースティック調で始まり、ディメオの歌をじっくり聴かせてから、十八番のソロを経て劇的に盛り上げて終わるという。あと、この曲のドラムはBobby Jarzombekが叩いています。(脱退する前に録っていたのでしょうか。)

 

 古き良きハードロックの味わい、「Wounded Heart」。程よい疾走感と伸び伸びした歌唱、Mark Realeお得意のフレーズ満載のギター部門……これで録音が良かったらなかなかの名曲といえたでしょうに。(こもった音質で割と台無しになりやすいのは、スピードナンバーやバラードでなくて、こういう曲だよね。)当時はライヴでも演奏されて盛り上がっていたのですが、さすがに最近のRiot Vが採り上げそうな気配は無いな。

 

 前二曲はReale/Dimeo作でしたが、ここでDimeo/Flyntzの手になるタイトルトラック「The Brethren Of The Long House」が登場。二拍三連の細かな刻みがやや異色ながら、重い突進感は本作のヘヴィなテーマには合っているのかもしれませんな。この曲の功労者はベースのPete Perezでしょうか。硬質で粒の揃った音の繰り出しは、先代までのベーシストとは異なったテイスト有り。

 

 コンセプトアルバムでありながらカヴァー曲が来るってのも面白い話ですが、ここでGary Moore「Out in the Fields」。Gary MooreThin Lizzyは大好きだと思われるRiot(特にマーク)がコレを選ぶこと自体はさほど意外ではないのですがね。オリジナルはPhil Lynott とGary Mooreのデュエットでしたが、ここではマーク・リアリとマイク・ディメオがリードヴォーカルを分け合っております。ギターソロも含め、基本的にオリジナルに忠実なカヴァー。ついでにオマケ情報を添えると、フィンランドSonata Arcticaはソロをすべて鍵盤にするヴァージョンで、ドイツのPrimal Fearはソロ全編をツイン化するアレンジで、それぞれやってます。

 

 Reale/Dimeo作に戻っては、ピアノ・バラードの「Santa Maria」。ストリングスも入ったりして荘厳なんですが、マークのアコースティック・ギターさばきが特に素晴らしい。Westworld以前ではここまで披露したことはなかったんじゃないかな。コロンブスの用いた船舶の名前にちなむ(と思われる)、抒情的な一曲。ライヴだと(ストリングスがいない分)よく動くピートのベースラインが聴こえて印象的。

 

 次は、彼らには珍しくスライド・ギターがフィーチュアされた、ヘヴィな8ビート「Blood of the English」。Riotには従来あまりなかった作風を取り入れている感じがします。シンプルかつ規則的なドラムは、「行軍」の様子を表しているのかもしれない……歌詞も兵士たちの悲壮な心情を歌ったもののようですしね。

 

 メランコリックからヘヴィへ行って、とやや聴き手が沈まされたところで繰り出される「Ghost Dance」は……いかにもRiotなメロディアス疾走曲。前作の「Babylon」あたりに近い雰囲気とでも言いますか。メンバー全員(Reale/Dimeo/Flyntz/Perez/Macaluso)の共作。“♪Someone see me……”に始まるコーラス部分も程よくキャッチーで良いし、ギター・プレイも(ソロだけでなくリフ・オブリも)よく練られていると思います。

 

 前の曲はフェイドアウトしていくとともに「遠くで響くような」独唱が微かに聴こえるんですが、その区切りとともに始まるのが次曲「Shenandoah」。オーケストレーションをバックにマイクが朗々と歌う、トラディショナル・ソング。アメリカでは19世紀から歌われているとか。ディメオ入魂の歌唱も素晴らしいですが、伴奏として入るマーク(だよね?)のギターが美しい。同僚マイク・フリンツが絶賛する「(ブライアン・メイとも肩を並べるような)マークのヴィブラート」が堪能出来ます。トラディショナル・ソングをロックバンドのフォーマットで演るっていうのに成功した彼らは、次作でも同様の試みを行っていくのです。

 

 「Holy Land」もReale/Dimeo作。こちらも手触りは「Wounded Heart」や「Ghost Dance」に近い感じかな。無理にパワーメタルにしない方が、マイクのヴォーカルも生きる感じがしますね。一面やや地味な感じ無きにしも非ず、ですが、その分ギターソロ・セクションはちょっと頑張ってて、「オッ!」とひきつけられます。ツインになるところとかね。あと、この曲(次の曲も)はBobby Jarzombekさんのプレイとなっております(ドラム)。

 

 締めくくりは、イントロでもちょっとやっていた「The Last of the Mohicans」をフル(?)ヴァージョンで。一番がひとしきり済んだところで、細かい太鼓のロールの上でピートのベース・ソロが繰り出されたりするよ。さっきもあったよね、二拍三連&細かいベースのパターン。インストゥルメンタルで劇的な曲をやる、っていうのもこれまた次作で踏襲されるんですね。

 

 とまあ、こんなアルバムを完成させたマーク・リアリと仲間たち。  『THUNDERSTEEL』の路線が好きな人には(「パワーメタル」色は抑え目で)刺激が足らんのかもしれませんが、楽曲の出来はなかなかのものでしたね。本来Riotの持ち味は「あくまでメロディを大切にして硬派のハードロックをやる」ことにありましたから、「これでいいのだ」とも思えます。

 

 ……が、それだけにやっぱり音質(ミックス)の問題は気になりますよね。「名盤」となる素質十分だった作品を、台無しとは言わぬまでも損なってしまい、ツアー関係のマネージメントでもバンドに利益をもたらさなかったLoeb氏とはやっていけないという判断にバンドが至るのは、時間の問題でありました。