DON'T PASS MUSIC BY

"Secrets are fun to a certain degree, but......"<Jake Holmes>

第29回「ロックンロール動物園・十二支編」(3)

(午)John Fahey & His OrchestraHorsesAFTER THE BALL1973
 お馬さん。曲名には割とよく入る言葉ですが、ズバリ「Horses」というのがあったのでこれにしました。アメリカのギタリストJohn Fahey氏の作品。ジャンルはなんなんでしょうかね、アメリカン・フォーク?ルーツ・ミュージックっていう言い方もあるみたいですが、私が唯一持っているCD――AFTER THE BALLOF RIVERS AND RELIGION2 in 1――では、ソロ・アコースティック・ギター主体のインストゥルメンタルが聴けます。別に交響楽団が付いているわけではありませんが……ホントに“多彩な”ギタープレイが繰り広げられております。私はフォークとかカントリーに疎いの(その意味では米国音楽の半分を知らないことになりそう……)ですが、Faheyさんのお陰でその方面の音楽の面白さが少しはわかった気がします。
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 「Horses」はFaheyオリジナル作品で、軽快なカントリータッチの短い曲。アメリカの“馬モノ”というと、S.フォスターの「草競馬」が浮かびます(原題は「Camptown Races」というそうですが)が、リズムの根本は共通してる気がしますね。私が好んで聴いているロック系ギタリストのプレイではあまり聴けない雰囲気なんですが……ああ、Jimmy Pageのアコギ・プレイには少しああいうところがあるかな。Led Zeppelinの(というか事実上ジミー単独演奏ですが)「Bron-Yr-Aur」(PHYSICAL GRAFFITI収録)っていうのがわが好物なんですが、なんか音遣いと雰囲気が似てる。
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 あとはなんだろう。John FaheyさんがわれらがCanned HeatLIVING THE BLUESにゲスト参加して20分にわたるサイケ・プログ・ブルーズ「Parthenogenesis」の冒頭部分「Nebulosity」を演じてるとか、Faheyさんのレコード会社TakomaからCanned HeatHUMAN CONDITIONを出してたってことくらいですかね。こないだ「ロックとジャズの間に垣根不要」とか申しましたが、「ブルーズとフォーク」も当然なのでありまして、あんまり了見の狭いことを考えない方が音楽ぁ楽しめますな。
 
(未)QuatermassBlack Sheep Of The FamilyQUATERMASS(1970)
 「未(ひつじ)」は本来“goat”であるという風に理解する方が近いようですが、ここだけは“sheep”とさせていただきます。この曲は何といってもRitchie Blackmore's Rainbowヴァージョンが有名でございますが、作者はSteve Hammondという人(英国のギタリスト・ソングライター)。おそらく初出はChris Farlowe with the HillSteveが在籍)による録音だと思います。ファーロウさんの初期作品コンピで聴きましたが、オルガンが効いてて乙なうえ、ファーロウ’sソウルフル・ヴォーカルが凄い。
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 で、その曲を(The HillSteveと共にプレイしていたPete Robinsonが居たので)Quatermassがカヴァーしたのですが、私はこのヴァージョンが一番好き。ファーロウのソウル・ヴァージョン、ロニー・ジェイムズ・ディオの歌う(Rainbowの)ハード・ロック・ヴァージョンも捨てがたいですが、このオルガントリオによるプログレちっくなやつが最高なんですよ。というか、リッチーはこれを聴いて「やろうぜ!」ってDeep Purpleの面々に呼びかけたんだったハズ!ところがパープルの諸氏からは「えー?」っていう消極的反応しか得られなかったので、「じゃあ自分でバンド作ってやるからいいもん」っていうてRonnie James DioElf(バンド)ごと従えて独立した……。この曲がなければ、Quatermassの名演がなければ、Rainbowは始まらなかったかもしれぬ!というのは明らかに言い過ぎですが、でもそういう切っ掛けの曲ではあった。余談ですが、リッチーは結構外部の優れたライターの曲をうまく発掘しますよね。中後期レインボーではRuss Ballard(元Argent)の曲を取り上げて大成功してるし。(「Since You Been Gone」、「I Surrender」)


 さて、Pete RobinsonKey)+John GustafsonBa, Vo)+Mick UnderwoodDr)のトリオによる「Black Sheep Of The Family」、アルバムではPete作の「Entropy」というオルガン演奏から続いて始まりまする。ボヨボヨいってる妖しいイントロに重なるようにして骨太なMickのドラミング、そこへJohnの歌が入ります。サビは「♪~俺あみんなの厄介モン(I’m a black sheep of the family.)」です……リッチーがコレをやりたがったっていうのはどういう心境だったんでしょうね。ギターレスのキーボードトリオでプログレ感強め。シンセサイザー登場以前のロックオルガン――キース・エマーソンジョン・ロード、ヴィンセント・クレイン、マシュー・フィッシャーなど名手は綺羅星のごとしですが――が堪能できるのが良いのだ。
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 この曲はQuatermassがヒットさせた(ライヴでも演奏していた)ほか、さいぜんより申していますようにRitchie Blackmore’s Rainbowのヴァージョンも有名。レインボーのファーストアルバムに入ってますのでどうぞ。ちなみに私は、レインボー全アルバムの中でファーストが一番好きです。コージー・パウエルが居なくてもね。元Elf組(ドラムのGary Driscoll、ベースのCraig Gruber、キーボードのMicky Lee Soule)のロックンロールが最高なの!リッチーもこの曲ではスライド・ギターなんか披露してて、いい味出してるのよ。このほか私の手持ちにある限りでは、元Judas Priest(デビュー前のヴォーカルだった)のAl AtkinsのアルバムVICTIM OF CHANGES1998)で、些か性急な感じのカヴァーが聴けますよ。
 
(申)Jethro TullSteel MonkeyCREST OF A KNAVE1987
 ジェスロ・タルといえば、英国プログレ(フォーク・トラッド風味もあり)の名バンドで、特に70年代の作品群が名作として認知されております。リーダー(ヴォーカル兼フルート他)のIan Andersonは右腕Martin Barre(ギター)と共にバンドを守り続け、80年代以降も作品を発表し続けているのですが、この「Steel Monkey」は1987年のアルバムCREST OF A KNAVEの冒頭に収められた楽曲でして、彼らのキャリアからするとやや異色。ハードロック的ギターをフィーチュアしつつ、ドラム・プログラミングを利用したディスコ調(?)のナンバーになっているのでした。これだけだったらとても私の好みじゃないんですけど……私、これを初めて聴いたのはオリジナル・アルバムじゃなくて、THE VERY BEST OF JETHRO TULL2001)でだったんですね。「Living in the Past」「Aqualung」「The Whistler」「Locomotive Breath」といった70年代的名曲の後にいきなりコレが挟まって、次の曲が「Thick As A Brick」(やはり70sの名曲!)っていう流れだったの。それで聴くと、「Steel Monkey」が逆に新鮮に聴こえましてなあ。Jethro Tullというバンドの幅の広さにいい意味で感銘を受けた次第。
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 ちなみにこのCREST OF A KNAVE1989年のグラミー賞「ハードロック/メタル」部門で受賞をしてしまいました。当時はMetallicaの快進撃が続いており、誰もが――一般のファン、メタリカ自身、イアン・アンダーソンでさえ――…AND JUSTICE FOR ALLが受賞すると思っていたのに、です。ロック史に残る珍事件でしょうなあ。ただ、そんなことを抜きにしても、このアルバムは叙情的なところとモダンなアプローチがうまいことかみ合った佳作だと思いますね。ちなみにJethro Tullには動物ものが他にもありまして、78年のアルバムにHEAVY HORSESっていうのもあります。(このアルバムでは、穏やかで美しいタイトル曲の他に、起伏に富むロックソング「No Lullaby」が聴きものですぜ。ライヴ・ヴァージョンなんかは“プログレ・メタル”張り。)
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<続く>