DON'T PASS MUSIC BY

"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

第46回「Narita」(1)

 メタルに回帰しましょう。今はなきデンマークの名バンドNarita。読み方は「ナリタ」です。今回は四の五の言う前に曲を聴きましょう。
NaritaNARITA1992
1. Ivory Gates
2. Altar Of Freedom
3. Stonehenge
4. Ship Of 69
5. Forever Wonderin’
6. Don’t Leave Me This Way
7. So Much For Life
8. Break The Ice
9. Say Your Prayers
<メンバー>
Henrik PoulsenGt
Mac GaunaaGt
Chris D. RaikaiBa
Flemming OlsenDr
Brian RichVo
 +
Ulrich PösseltProduce, Mixing
Eric PhilippeCover Art, Logo
 
イメージ 1

 

 序曲「Ivory Gate」は、テクニカルな二拍三連インストゥルメンタル。このバンドのことは予備知識なしでジャケ買い(というか、バンド名買い)したので……「どういう音が来るか」知らないで再生したのですが、いきなり凄いネオクラシカル速弾き炸裂のナンバーが飛び出してビックリ。嬉しい誤算、これは大当たりでは?
 
 2曲目「Altar Of Freedom」から歌モノか。ミドルテンポのドラム・パターンの上に細かい刻みのギター、様式美様式美……うおお、ヴォーカルも良いぞ。Bruce Dickenson系の声といっていいと思うんですが、このBrian Richはメロディアスなラインを歌わせたら一流の素晴らしいシンガー。ギター部隊も遠慮なく、ソロ・パートでは目も眩むネオクラシカル・フレージングを繰り出す。ツイン・ギターでどちらも巧者だけど、ブックレットに書いてあるソロ順によって判断すると、この“Mac Gaunaa”っていう方の人はとんでもなく滑らかに弾く(就中スウィープがうまい)名手じゃないの。
 
 「Stonehenge」は、おそらくバンドの初期からあった曲と思われる。Naritaヒストリーは後でちょっとだけ記しますが、リーダーHenrik Poulsenが結成した当初の名前はStonehengeだったといいます。リズム・チェンジ、ツイン・ギターのリフを使ったキメ、ミステリアスな歌詞(“Stonehenge lives forever, eternal mystery……”)と、Naritaのその後の基本をなす要素をすべて備えております。そして、ギターソロ。215秒過ぎからのマックのソロは即効性あり。ブライアンの歌唱も高音から低音域まで駆使して、説得力十分。
 
 このバンドのメインソングライターはHenrik Poulsenなんですが、「Ship Of 69」はバンド全員の共作となってます。インテンスなリフ構成から、ブレイクでテンポを落とし、テンポを戻してソロに入るお得意の構成。ドラムも結構テクニカルなことをやっていますなあ。この曲はギターソロがバトル風(ヘンリック→マック→ヘンリック→マック)に構成されているのもスリリング。“♪Ooh, here we are, a landscape of stone for all eternity.”内容から察するにこれはアポロ11号(1969年に月面着陸)のことを歌っているようです。Brian Richの作詞。
 
 ここからはブライアン作詞・ヘンリック作曲のナンバーが続きます。「Forever Wonderin’」……これも二拍三連が基本リズムですが、細かいリフに合わせてフレミングさんがきっちりバスドラを踏むので、ヘヴィな突進力が生じる。“Sky, I might get there”っていうところのブライアン歌唱はBruce Dickensonが憑依したとしか思えぬ凄味。マックのギターソロも冴え渡る。このレベルのプレイを、メタル初心者だったころに聴いちゃったので、生半可な技には驚かなくなっちゃいました。
 
 「Don’t Leave Me This Way」はミドルテンポの重厚な曲。歌詞の内容は、ここまでのミステリー・SF路線とちょっと違って個人的感傷みたい……“♪Don’t leave me this way……don’t bring this pain”。この曲はヘンリックがソロを取りますが、彼も構築されたソロを弾きます。
 
 シンプルで力感のあるリフから始まる「So Much For Life」は、ブライアンの歌がとりわけ力強く響く。肺活量が凄いなと思うんですが、彼はノートをすごく伸ばすフレーズを得意としているみたいで、“♪The game has spoken, I loose……”、‟What are we going to do……?“といったところの歌いかたはなかなか真似できない気がします。ヴォーカルパートはミドルで歌に説得力を持たせておきながら、ギターソロのバッキングはスピードモードに入って、マックの速弾きを盛り立てるなんていうのもあざとくて良い。
 
 そして印象的なリフで開幕する高速シャッフル「Break The Ice」。スピード感でいうと本作中随一かもしれないが、一筋縄ではいかない捻りも。フレミングオルセン氏のドラムもいいなあ、と思うんですがリリース時には既に離脱してたそうで。ヘンリック→マックのソロ・リレーも楽しめるし、二人ともここでは典型的ではないフレーズを繰り出していて面白い。歌は、‟相互扶助”が求められているのに自己のことのみに専念して他者を無視するような風潮に憤る立場から歌われています。“♪Is it the way we are, is it that we all close our eyes. Maybe we’ve gone too far to turn around and break the ice.
 
 ラストの「Say Your Prayers」も類似のテーマ。とりわけ環境破壊と貧富の格差に怒りが。“♪Say your prayers, believe me we’re headin’ for doom. All our ego affairs will bring us disaster soon.”ブライアン・リッチの詞は痛烈。演奏の方もメロディアスなパワーメタルのお手本みたいなもの。ツイン・ギターのメロディー弾き、マックの華麗な指さばきと聴き所一杯。終盤は、ミドルテンポの上でツインのフレーズがひたすら繰り返されて行ってフェイドアウト 
<続く>