むかし書いたプログレ紹介文、特集その四は「その他いろいろ」。当時(2006年3-5月執筆)聴きだして面白いと思ったものを好き勝手挙げてる感じですかね。
1.Tubular Bells Pt.1 *1973(Mike Oldfield『Tubular Bells』)
2.Watcher of the Skies(live)*1973(Genesis『Live』)
3.Tuesday Afternoon(Forever Afternoon)*1967(The Moody Blues『Days of Future Passed』)
4.Freefall*1974(Camel『Mirage』)
5.Killer*1971(Van Der Graaf Generator『H to He』)
6.Foghat Digs Holes in Space*1971(Gong『Camembert Electrique』)
1.は、Mike Oldfieldがほぼ一人で多重録音をこなして作り上げた驚くべき作品。アルバム『Tubular Bells』は、パート1とパート2の二曲からなるが、これはそのパート1である。冒頭のフレーズが映画『エクソシスト』に使われたということで一般にも知られるという。同じフレーズの繰り返しの中に変化を持たせ、展開させるという手法なのであるが、すべてを人力(楽器演奏)でやっているところが凄い。終盤、楽器名が告げられる毎にその音が重ねられていく部分は、ハイライトといえる(「Tubular Bells」がここで出てくる)。このアルバムを世に出すために「Virgin Record」が新しくスタートしたという逸話が、この作品のインパクトを伝えている。

ビッグネームとして取り上げるべき重要グループ、Genesis。バンドの歴史は、PeterGabrielが在籍し叙情的プログレを追求した初期、Gabrielが抜けてよりコンパクトな作風にシフトした中期、ギタリストSteve Hackettが抜けポップな路線に移行した後期に分けられる。2.は、初期を代表する名曲のライヴ・ヴァージョンである。Phil CollinsとMike Rutherfordによるテクニカルなリズムセクションの上に、HackettのギターとTony Banksのキーボード(&メロトロン)が乗り、更にGabrielのヴォーカルが歌い上げる。Collinsはいまやソロでポップ界に君臨しているし、Gabrielもトリノ五輪のオープニングでImagineを歌ったので、多くの人になじみがあるかもしれない。このほかにも、Hackettは実はロック界で初めてライトハンド奏法を取り入れた(Van Halenより5年以上早い)であるとか、興味深い話は少なくない。

で、2.の冒頭から鳴り響いているのが、メロトロンという楽器である。この楽器の出す独特の響きは、叙情的雰囲気を醸し出すのに長けているらしく、多くのプログレバンドがこれを取り入れた音作りをしている。その代表格がGenesisであり初期のKingCrimson(「The Court ofthe Crimson King」などで聴かれる)であるが、最も早くにこれを用いたバンドの一つがThe Moody Bluesであるといわれている。このバンドは、これまで紹介してきたような多くのバンドのように大作志向をとることはほとんどなく、短い曲によるシングルヒットが多かった。ただし、いわゆるポップというには実験精神が旺盛で、またアルバムのコンセプトなどにも凝っていたことから(もちろん楽曲の、特にメロディの良さはいうまでもないのだが)、プログレの範疇で語られることが多い。現在もギターのJustin Hayward、ベースのJohn Lodge、ドラムのGraeme Edgeを中心に活動しているようだ。3.は初期のヒットであるが、途中のリズムチェンジやメロトロンの使用(どちらもさりげなく行なわれているのが巧い)などプログレ的聴き所も多い。

2.3.と叙情的なプログレを取り上げてきたので、もう一つその手の代表格Camelを紹介したい。Camelの中心人物はギターのAndy Latimerであるが、彼を中心に紡ぎ出すテクニカルでありながら叙情性を失わない優れた楽曲は魅力的である。また、よく聴くと、ドラムのAndy Wardもかなり面白いフレーズを叩き出している。4.は、バンドのセカンドアルバムからの、ややアグレッシヴな曲。

イギリスのプログレを語る際に、VanDer Graaf Generatorを避けてはいけない、のだそうだ。ヴォーカル兼ソングライターのPeter Hammillのアイデアと、それを具現化するバンドメンバーの優れた技量の上に成り立つ楽曲は、ブリティッシュプログレ界でも異彩を放っている。5.は巷間最高傑作といわれる『Hto He』に収録。

Gongの中心人物は、Daevid Allenという人物である。ヒッピー的生活をしてヨーロッパ中を放浪し、イギリスでThe SoftMachine結成に携わるも、アルバムデビュー前には脱退していたという人物。彼がフランスに拠点を置いて作ったのがGongというグループである。Gongのコンセプトは、メルヘンチックというかユーモアに溢れているというか、兎に角一筋縄では行かない不思議ワールドなのだが、音の方もそのイメージを伝える作りになっているようだ。Allen自身がテクニカルなプレイヤーというわけではないが、グループの総監督として各プレイヤーを導いて独特の音楽を完成させている。初期の作品6.は、ソリッドなリズムの中にも浮遊感があり、怪しさ全開の「いかにも」な曲。
