Brian Rossの率いるNWOBHMの名バンド、2018年作品。メンバーはブライアン以外は若手に交替していますが、「音」はアーリー80sのフレイヴァーを伝えています。それにしても、Satanが復活してからBlitzkriegもますます旺盛にやるなんて、ブライアン先生はホントにお元気。なんか、Alice Cooperのトリビュート・バンドもやってるらしいですしね。お、本作にもアリス・クーパーのカヴァーがオマケで入ってる。
(3)Blitzkrieg『JUDGE NOT !』(UK)
- Heretic
- Who Is Blind?
- Forever Is A Long Time
- Reign Of Fire
- All Hell Is Breaking Lose
- Without You
- Loud And Proud
- Angels Or Demons
- Wide Legged And Headless
- Judge Not Lest You Yourself Be Judged
- Falling Into Darkness
- School's Out
<メンバー>
Brian Ross(Vo, Mandolin)
Ken Johnson(Gt, Key)
Alan Ross(Gt)
Huw Holding(Ba)
Matt Graham(Dr)
ブリッツクリーグお得意のおどろおどろおしいイントロ「Heretic」から、やはり十八番の正統派リフ・メタル「Who Is Blind?」へ。奇抜だったり超絶技術が繰り出されたりするわけではないですが、主宰ブライアン・ロス公の威厳あるヴォイスが入ってくると、唯一無二の世界に引きずり込まれてしまう。“♪If you don’t see it, you don’t believe it. I have the question, “Who is blind?””っていう、テンポが半分になるところが不気味で良い。
ブライアンの短い語りを受けて劇的に始まる「Forever Is A Long Time」は疾走曲。マットさんのややドタバタしたドラミングもこのバンドの伝統にのっとったもの。スマートに決めちゃったらブリッツクリーグじゃないぜ(暴言)。“♪I am cursed to live forever……”。粘っこいギターソロも聴きどころ。
次の「Reign Of Fire」も疾走る曲で、80年代NHOBHM風の味わい。ここまでの4曲は、作詞ブライアン・ロス+作曲ケン・ジョンソン。ケンさんはかれこれ二十年近くバンドに在籍するブライアンの右腕ですが、ギタープレイだけでなく楽曲づくりでも中心を担うようになっていたんですねえ。
次の「All Hell Is Breaking Loose」は、ベースソロから始まる異色の曲……と思いきや、本編が始まるとこれも得意のヘヴィ・シャッフルに。初期の「Take A Look Around」以来、こういうのもレパートリーにしてきた人たちでした。2分30秒辺りからの「ダダダ・ダダダ・ダ」っていうキメの繰り返しがダサカッコいい。この曲は、作曲が器楽の4人となっています。
あれ、次はちょっと雰囲気が変わったぞ。少しテンポはゆったりしてるけど、ハード・ポップ調というか。些かメロウなメロディの運びも、いつもと違う。この「Without You」だと歌が少し細く若くなったような……ってオイ、アラン・ロス君が歌ってんのかい。やっぱり親子ですな、声は似てます(アランはブライアンの息子。写真を見ると親父より恰幅が良いが……)。作詞もアランじゃよ。声に気をとられ、うっかりギタープレイのことを忘れましたが、くどいまでにメロディ重視のソロも珍しいかな。
ヘヴィに押す8ビート「Loud And Proud」はブライアン&ケン作。ブライアン・ロスさんといえば、‟シャープなエッジを売りにする”様な他の多くのメタル系ヴォーカリストたちと異質で、愁いを帯びた唯一無二の“煮え切らない”ヴォイスが個性的ですが、詞がひじょうに聴き取りやすいのが意外。この曲は少しゆっくりだからっていうのもあるかもしれませんが。ギターズもオーソドックスなロックンロール系プレイに徹しています。“♪We’re loud, loud and proud!!”
8曲目でブリッツクリーグ流リフ疾走曲(80年代風)「Angels Or Demons」に戻る、と。このギターチームは、メロをきっちり聴かせることに注力しているようですね。あまりフラッシーなことはやらないので、そこは人によっては物足りないかもしれないけど。この曲は、“♪Angels or deMON”の“-MON”のところで金切り声を聴かせるブライアン氏が主役だからそれでよい、ということにしましょう。
ちょっとテンポが似通った曲が続きがちかなあと言う気がしないでもないですが、「Wide Legged And Headless」も疾走します。マットさんのドラムの力技人力風味が微笑ましい。さっきも申しましたが、「字余り」ならぬドラムの「符余り」(フィル)は、それこそ先達Sean Taylorさん以来の伝統芸なのだ!ドタバタして落ち着かない!それが良い!……失礼、ただ、この曲は間違いなくドラムが主役なのよ。
重々しく幕を開け、リフと決めの応酬で進む「Judge Not Lest You Yourself Be Judged」。歌メロの一部がMetallica「Master of Puppets」の一節を何故か思い起こさせるのですな。これはまあ、たまたまでしょう。ただ、メタリカは――特にNHOBHM大好きっ子だったラーズ少年は――ブリッツクリーグを好んでまして、「Blitzkrieg」をカヴァーもしてます(『GARAGE INC.』で聴けます)。……閑話休題、「Judge Not……」の方ですが、曲の終わり間際にはJudas Priest「Tyrant」を彷彿とさせる歌いまわしも出てくるのよ。うーん、そうするとさっきのも偶然ではないのかな。
終曲「Falling Into Darkness」はヘヴィ。ブライアン入魂の歌唱は熱いですけど、“♪I’m falling into darkness……help me !”ですからね。途中で軽快になったりもしないで、重苦しく最後まで。ヘヴィ・メタル!
この流れだと蛇足に思えますが、ボーナス的にアリス・クーパーの「School’s Out」が入ってます。ブライアン・ロス公、アリス・クーパーになりきってますね。こうして聴くと、アリスの歌って結構メロディアスだったのね。映像的インパクトに惑わされがちだけど、極上のメロディアス・ハードロックじゃありませんの。
というわけで、新作鑑賞会はおしまい。
<続く>