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"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

温故知新旧稿再録(11)「プログレッシヴ・ロック特集」(6)

 日本のプログレ特集、後編。当時のわたくしの好み(偏愛)がわかりますな。何が何でも聖飢魔Ⅱに引き込むやり口は変わってないし……
 
 あ、なお、文末の注釈も執筆当時(2006年)に付けていたものです。
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PROGRESSIVE ROCK vol.3 in Japan
 
6. Go on!*1986(Black PageOpen the Next Page)
 
7.  Illusion*1980(Novela『魅惑劇』)
 
8.  黎明*1983(Novela『聖域』)
 
9.  Gathering Wave*1988(ViennaStep Into…)
 
10.  Tempest*2001(RXElements)
 
Black Pageは、テクニカルな奏者が集結したグループで、バンド名はFrank Zappaの曲名から取られているが、音は(テクニカルであることを除けば)ザッパ系というよりブリティッシュっぽい。尚ドラムの菅沼孝三氏は後に名うてのセッションプレイヤーとして引っ張りだことなる。U.K.を彷彿とさせる6.では、彼らによる高度な演奏力とキャッチーな歌の融合を垣間見ることができる。
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Novelaは、私見では80年代以降の日本のロックにとっての最重要バンドである。彼らをプログレとは認めない人々もいるが、客観的にその功績を捉えれば、日本プログレ中興の祖、日本ハードロック中興の祖 [1]、日本ヴィジュアル系の元祖 [2]として評価せざるを得ないだろう。関西のシェラザード山水館という二つのグループの合流から成立したNovelaは、平山照継氏(g)という優れたソングライター、五十嵐久勝氏という卓越したヴォーカリスト永川敏郎(key)をはじめとするハイレベルなミュージシャンからなっていた。
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7.はどちらかというとハードロック色が強いが、記念すべきデビューアルバム冒頭に収められていた名曲。独特の疾走感がある。8.は、彼らの作中最もプログレ色の濃いアルバム『聖域』のラストを飾る大曲。徐々に高揚していく楽曲展開が見事である。Novelaのメンバーの多くは、解散後・脱退後も旺盛な音楽活動をしている。平山氏はTeru’s Symphoniaで独自のファンタジックワールドを追求し、五十嵐氏は他のアーティストとのコラボレーションなどを積極的に行なっている。永川氏は自らのバンドGerardを率いて現在も活動しているし、初代ベーシストの高橋ヨシロウ氏も自らのバンドActionで活発に動いている。
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Novela後期のドラマー西田竜一氏と、元Outerlimitsの塚本周成氏(key)、元Gerardの藤村幸宏氏(g,v)、そして永井敏己氏(b)が組んでできた(仕掛け人がいたようだが)のが、スーパーグループVienna80年代後半というプログレ停滞期に、状況を打破するべく結成されたのである。演奏能力は当然問題ないし、塚本氏や藤村氏によって書かれた楽曲も優れたものが多かったが、結局はアルバムを三枚残して解散してしまった(1998年に再結成してアルバムを発表。このときのドラムは菅沼孝三)。その後各メンバーはセッションなどで活躍している [3]9.は、二枚目のアルバムに収められたインスト。
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10.は、RXというグループによる一曲。RXは、ヘヴィメタル楽団聖飢魔ⅡRaiden湯沢氏(d)Xenon石川氏(b)松崎雄一(key)によるユニットで、聖飢魔Ⅱ活動中の1990年代にもアルバムを発表している。音楽的にはヘヴィメタルではなく、彼らの好きなフュージョン・ファンクそしてプログレの色を前面に打ち出している。
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聖飢魔Ⅱを見てもわかるように、彼らの演奏能力はレベルの高いもので、長年活動を共にしているだけあって呼吸もよく合っている。10.2001年に発表されたアルバムの冒頭曲で、Raiden湯沢氏の作曲。タイトなリズムセクションの上に、キーボードと、ゲストの奏でるギター&管楽器がメロディを置いていく形になっている。本アルバムにはJohn Wettonもゲスト参加しており、全体にプログレ色の強い仕上がりとなっているのが興味深い。
 
<続く>

 [1] ハードロックとしては、音の攻撃性や演奏能力に加え、日常を離れたコンセプト作りにも特徴が見出せる。セカンドアルバム収録の「ヒドラ伯爵の館」など、あの聖飢魔Ⅱ蝋人形の館」より約4年も早く怪奇な世界を歌い上げている。
 [2] ここも評価が分かれるところであろう。彼らは別に顔を白塗りにしたわけではない。しかし、それまでの日本のバンドがヴィジュアル的な演出に基本的に執着しなかったのに対し、彼らはステージ衣装やライティングなどに拘った。このことは、楽曲製作面でのリーダーたる平山氏の考え方「あまりに日常じみた、生活感のあることを曲にしたくない」にも関係していると思われる。Novelaの一貫したファンタジー的演出は、おそらく後のヴィジュアル系のスタイルに影響を及ぼしている。
 [3] 藤村氏や西田氏は現在、元Malice MizerGackt氏のバンドメンバーを務めている模様。