前回の続きで、Mark O'Connorさん入りのThe Dregs(Dixie Dregs)作品のお話です。
The Dregs『INDUSTRY STANDARD』(1982)
1. Assembly Line
2. Crank It Up#
3. Chips Ahoy
4. Bloodsucking Leeches
5. Up In The Air*
6. Ridin’ High♭
7. Where’s Dixie?
8. Conversation Piece
9. Vitamin Q
<メンバー>
Steve Morse(Gt)
Andy West(Ba)
Rod Morgenstein(Dr)
T Lavitz(Key)
Mark O’Connor(Vln)
+
Steve Howe(Gt)*
Alex Ligertwood(Vo)#
Patrick Simmons(Vo)♭

冒頭の「Assembly Line」は、Andy & Rodの強靭なリズム隊の上でリード三者が舞い踊る、彼らの十八番。T Lavitzさんのピアノはジャズ風味強め。そのピアノソロを受ける形で、短いながらも華麗なソロを決めるMark O’Connor。あとは、最近聴けてないんですがラジオbayfmのPower Rock Today(伊藤政則さんの番組)の“プライム・ムーヴァー”というコーナーのBGMがずっとこの曲ですね。
そしてお次が新機軸のヴォーカルナンバー「Crank It Up」。Alex Ligertwoodさん(Santanaでの活躍が有名)が歌います。TV出演してこの曲をやってるThe DregsもYoutubeで観られたはず。凄いねえ。
Steve Morse先生は後にKansasに入って「歌モノ」の世界でも活躍しますけど、これはその先駆けという感じで、程よく疾走するメロディアスな佳曲。ソロもとるけどMarkのプレイは控え目かな。T Lavitzのオルガン・ワークがいいアクセント。Morse先生のプレイは完璧、終盤のソロは最高だ。
あああ、いま思い出したけど、Steveと共にプロデュースに当たってるのはEddy Offordさまじゃないですか。Yesでの仕事は神業ですな。本作のカギを握るお人かも。
3曲目の「Chips Ahoy」は、後にSteve Morse Bandでも好んでやるような、クラシック(バロック?)の作法を踏まえたエレガントチューン。1分40秒辺りからのMarkのヴァイオリン・ソロも端正。
続く「Bloodsucking Leeches」は、「Assembly Line」ともども彼らのお気に入りで、ステージでもよく取り上げられているもよう。(『LIVE INCONNETICUT 2001』で聴けます。ヴァイオリンはなんと元Mahavishnu OrchestraのJerry Goodman!)重く弾むドレッグズ流ロック。さっきも書きましたが、Steveと並んでギターを弾くMarkが観られますんで、動画を探して御覧なさい。とっても楽しそうなロッド、貫禄たっぷりのアンディ、多種鍵盤を見事にさばくT・ラヴィッツも素敵です。
いささか騒がしく盛り上がった後に来るのは、クラシック・ギター二本によるバロック小品「Up In The Air」。Steve Morseはクラシック・ギターを修めた人なんでこういうのが出てくるんですが、本曲はゲストが凄い。Eddy Offordプロデュースと関係があるのかわかりませんが、YesのSteve Howeさんとのギター・デュオ。モーズ先生にとって、ヒーローとの共演は嬉しかったことでしょう。
短いけどいい曲に仕上がっていて、後にも相手を変えて時々再演してます。例えば、(本職の)クラシック・ギタリストManuel Barruecoのアルバム『NYLON &STEEL』(2001)では、この曲(他にも数曲ありますが)で共演。また、Steve Howe先生とは録音は別々だったみたいですが、TV番組か何かのでこの曲をTriumphのRik Emmettと生演奏してる映像(1987年らしい。Thanks, Youtube!)には仰天しましたね。最初はちょっと緊張してる風だったのが、だんだんリラックスしていって、一糸乱れぬ演奏が終わるとリックはガッツポーズ、二人で握手。Steveもそうだけど、Rik Emmettのことも尊敬し直すことに決めました。
1987のトライアンフのアルバム『SURVEILLANCE』にはSteve Morseがゲスト参加してるのですが、「HeadedFor Nowhere」っていう曲(これは疾走ロッキンナンバー)の終盤にとんでもないギターバトルが待っていますのでこちらも是非。

おっと、主役のMarkから離れちゃいました。B面に行きましょう。「Ridin’ High」はPatrick Simmons(TheDoobie Brothers)をフィーチュアしたもう一つの歌モノ。ゆったりしたシャッフルにパトリックさんのヴォイス……アメリカン・ロックの味わい十分ですが、器楽に隙が無い。
次の「Where’s Dixie?」は、Dixie Dregs時代からお得意の軽快なカントリー・チューン。Markさんのヴァイオリンが堪能出来ます。1分過ぎからのプレイは美しい。その後に続くSteveのギターソロ、Tのピアノソロもコンパクトながらグレイト。ところでタイトルは、「Dixieをバンド名から外しちゃったけどさあ……」っていうジョークなんでしょうかね。
8曲目は、「ConversationPiece」。「Chips Ahoy」とはまた別に、クラシックを感じさせるシンフォニックなスロー・チューン。3分10秒過ぎからのT Lavitzのシンセサイザーがいいなあ。本作中最も「プログレ」を感じさせてくれる曲かも知れない。終盤のスリリングなギターソロにはロック魂がある。
締めくくりの「Vitamin Q」。(Qってなんだろうね?)ヘヴィなベース・パターンが引っ張るゆったりした曲。2分15秒辺りからヴァイオリン・ソロ……Markさんの見せ場多し。Tさんのキーボードソロがピアノ一辺倒じゃない(けっこうシンセ類もふんだんに使ってる)っていうのも、今回聴き直して再発見しました。うむ、楽曲最後もきれいに閉じましたね、美しいエンディング。
Steve Morse先生。!Deep Purpleの一員として来日された際に拝んで以来大ファンなんですが、Dixie DregsかSteve Morse Bandで日本に来てくれませんかねえ。<完>