さて、種明かし。なんで私がMark O’Connorさんの作品に手を出したかといいますと、氏がThe Dregsのメンバーだったことがあるから。それだけ。The Dregsは、Dixie Dregsの名でデビューした米国産カントリー・ジャズロック・フュージョン・プログレバンド。何度か当ブログに登場している名手Steve Morse率いるスーパー・グループであります。HRファンには、「ドラムのロッドさんがWingerのメンバーになってたんですよ」とお伝えするのが良いですか。
Dixie Dregsの素晴らしさはいずれ特集でも組んで語りまくりたいんですけど……最高のミュージシャンシップを誇った彼らでも、時代によって波はあって、レコード会社にあれこれ口出しされることもあったそうなんですね。例えばバンド名。ずっとDixie Dregsでやってきてたんですが、最初に属したレーベルが無くなってしまったあとの移籍先(Arista)の要請で「よりコマーシャルな名前に」したそうなんです。“Dixieってつくとディキシーランド・ジャズのバンドだと思われるだろ、って言われた”とかなんとか。まあ、音楽性はその時(1981年)には変わらなかったんですが。
ところが次作、つまり今回の対象作『INDUSTRY STANDARD』を制作する段階では、「歌モノを入れろ」っていう圧力がかかったらしいんですね。Dixie Dregsはずっとインストをやってきましたからこれは大変化。歌える人をゲストに呼んで二曲やったくらいですから、バンドの作法が変わってしまったわけではないですが、こういう“ビジネス上の意向”を受けて作ったことを自ら皮肉って“Industry Standard”(業界標準?)というアルバム名にしたんだとSteveは語っています。
それでポップ狙いの駄作だったら落胆、でしょうけども、そこはさすが手練れの面々。二曲の歌モノも上々、従来路線のハイパーなインストもあり、クラシックギターをフィーチュアした小品あり、としっかり仕上げ。私も特に期待しないで買ったんですが(もちろんすごい後追いで)、いまや愛聴盤でございます。
で、Dixie Dregsはデビュー以来Allen Sloanという方がヴァイオリニストだったのですが、前作『UNSUNG HEROES』後に脱退されまして、後任に若干19歳のMark O’Connorが迎えられます。彼は既に、各種コンテストの類を総ナメにする天才として名高かった、と。
また彼はギタリストとしての腕も持ち合わせていて、ライヴなどではSteveと並んでギターを弾くこともあったようです。(『INDUSTRY STANDARD』収録の「Bloodsucking Leeches」がツインギターで演奏されている映像がYoutube上にあります……ていうか、Steve Morseと同じバンド・舞台でギターを披露したのって地味に凄い。あとはKansasのRich Williamsくらいじゃないの?)
The Dregs『INDUSTRY STANDARD』(1982)
1. Assembly Line
2. Crank It Up#
3. Chips Ahoy
4. Bloodsucking Leeches
5. Up In The Air*
6. Ridin’ High♭
7. Where’s Dixie?
8. Conversation Piece
9. Vitamin Q
<メンバー>
Steve Morse(Gt)
Andy West(Ba)
Rod Morgenstein(Dr)
T Lavitz(Key)
Mark O’Connor(Vln)
+
Steve Howe(Gt)*
Alex Ligertwood(Vo)#
Patrick Simmons(Vo)♭
<続く>