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"But holy men and kings would die in the year Twenty Twenty-five......"<Satan>

温故知新旧稿再録(9)「プログレッシヴ・ロック特集」(4)


  前回から続いております。「こんなのもあるね」プログレ集(2006.3-5作)。


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10.    Island*1969(RenaissanceRENAISSANCE)
11.    Fantasia*1976(Jon LordSARABANDE)
12.    Bouree*1969(Jethro TullSTAND UP)
13.    Silver Machine*1972(HawkwindIN SEARCH OF SPACE)
14.    Tomorrow Never Knows*1966(The BeatlesREVOLVER)
15.    Danse Macbre*1974(EsperantoDANSE MACBRE)
16.    Hocus Pocus*1970(FocusMOVING WAVES)
17.    Carry on Wayward Son*1976(KansasLEFTOVERTURE)
 
 このほか、イギリスからは別のタイプの個性的バンドも出てきている。カンタベリー系がジャズとの接触を図ったのに対し、クラシックとの融合を試みたアーティストたちもあった。

 まず挙げたいのがRenaissanceである。このバンドは、元The YardbirdsのヴォーカルKeith RelfとドラムJim MacCartyがブルースロックを離れ新しいことを始めようとしたことがきっかけで生まれている。当初はフォークデュオのような形を模索するが、クラシックの素養のあるピアニストJohn HawkenとベーシストのLouis Cenamo、更にKeithの妹Jane Relf(vo)を迎え入れ、クラシックとフォークとロックの融合を図るようになる。10.は彼らのデビューアルバムに収録された曲で、透明感のある歌を端正なピアノが支え、ベースが躍動感を加えるという彼らのスタイルが見て取れる。この後バンドはもう一枚アルバムを作るが、その後Keithがハードロックをやるために手を引き、程なく自然活動停止となった。後に、二作目に参加していたギタリストを中心に全く異なるラインナップでRenaissanceというバンド(一般にはこちらの方が有名で評価も高い)が作られていく。
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 また、ここに11.を収録したJon Lordも当時のロック界にあってクラシックに対し並々ならぬ情熱を燃やしていた人物である。Deep Purpleのキーボーディストとして、オーケストラとの共演を実現させたLordだが、バンドの方向性はすでにハードロックに定まっており、クラシック志向はソロ活動で発揮されることになった。SARABANDEは、Lord(key)Pete York(d)Andy Summers(g,後にStingらとThe Policeでブレイク)を核とし、オーケストラを加えてLordが書いたクラシックの舞曲を演奏するプロジェクトであった。
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 Lordが範をとったのはバッハであったが、バッハの楽曲は他のロックミュージシャンにも愛されている。12.はバッハの曲をアレンジしたJethroTullのシングルナンバーである。Jethro Tullはもともとブルースロックバンドとして出発したが、リーダーのIanAnderson(vo,flute)を中心に音楽性を拡大していった。クラシックを大胆に取り入れるかと思えば、ロックンロール的表現も好み、シアトリカルなステージ演出も独特であった。中でもAndersonの吹くフルートがバンドの個性を増進したことは疑えない。フルートを使ったのは、「他にそういうのが無くて珍しかったから」ということらしいが、ある時は牧歌的な雰囲気を醸し出し、ある時はアグレッシヴな感覚をもたらす彼のフルートは、表現の幅を広げる効果をもたらしている。
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ジャズ、クラシックの他にプログレの源泉となったものに、サイケデリックがある。ジャズのようなインタープレイを導入するでもなく、クラシックの構築美を追求するでもなく、極限まで音の感覚にこだわったグループに、Hawkwindがある。デビューアルバムのインナーには「ドラッグなしでトリップさせます」と書いてあったとか……。比較的ルーズなリフを執拗に繰り返して陶酔感を煽っておき、SEシンセサイザーで奇妙な音を挿入、宇宙を表現するというようなのが彼らのスタイルである。13.は彼らのヒット曲。因みにこのバンドには一時Lemmy Kilmister(ba,vo,後にモーターヘッドを結成し、率いる)も在籍していた。もっとも、他のメンバー以上にドラッグに耽溺したせいで解雇されているが。
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で、どうしてもサイケデリックというと、The BeatlesTomorrow Never Knows(14.)を思い出してしまう。John Lennonはドラッグ体験からいくつかのサイケソングを残しているが、これは最高傑作である。テープの逆回転やヴォーカルエフェクトを駆使しつつ、シュールな歌詞をワンコード&ミニマルなリズムに乗せて歌う……後続のアーティストに大いなる影響を与えたであろう究極の前衛ポップ() である。既に述べたように、The Beatlesは芸術性と商業性を兼ね備えたグループであり、見方によれば最初のプログレッシヴロックバンドだったといえなくもない。この他、まるっきりインド音楽というべきLove You Toや、SEを派手に使ったYellowSubmarineを収録するなど、アルバムREVOLVERはポップアルバムの範疇で語るのを躊躇いたくなるほど音楽的に豊かな広がりを持っている。このアルバム、そしてThe Beatlesが与えた影響には、まだまだ研究の余地があるだろう。
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ここまでイギリスのバンドばかり紹介してきたので、ここで少しだけそれ以外の地域のプログレを挙げておこう。15.はベルギーやイタリア、イギリスなど多国籍メンバーからなる(ゆえにEsperantoと名乗った)グループの作品。ビオラやチェロといった弦楽器とロック的リズムセクションがアグレッシヴに対決する異色の音楽だ。
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次に、オランダ代表はFocusFocusThijis Van Leer(vo,flute,key)Jan Akkerman(gt)を中心に結成されたバンドである。クラシックやジャズを含む広い音楽的素養を持つ両者が組み合って作り出す音楽のクオリティは高い。16.はセカンドアルバムの冒頭曲であるが、Akkermanリズムセクション(特にドラムは毎回フレーズを変えていて面白い)によってハードロック的リフが繰り返される中に、Leerヨーデル風ヴォーカルが舞い踊る壮絶な一曲。この曲の邦題が「悪魔の呪文」というのも納得。アルバム全体が叙情的な作風である分この曲が目立ち、彼らの代表曲となった。
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最後に、アメリカのバンドを一つ。Kansasは、ヴァイオリンを含む5人組。当初アメリカでは複雑な曲展開は受け入れられなかったというが、この17.辺りでは展開の妙とキャッチーな歌とが程よく結びついており、ヒットを記録している。Kansasもそうだが、アメリカのバンドの場合、アメリカ音楽の一要素であるカントリーのフレイヴァーを取り入れることが多く(好例がSteve Morseの率いたThe Dixie Dregs)、それが他地域にない特徴になっているといえるかもしれない。
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<vol.2完>