<前期>1978-1982
ハード・ロックの時代に出発しながらヘヴィ・メタル全盛の時期にも適応して乗り切ったグループ、というのはいくつかあるかと思いますが、Whitesnakeはその代表格といえるでしょう。大物ゆえそのバイオグラフィ・ディスコグラフィも十二分に世に出ておりますから、基本インフォメーションについてはそちらにお任せしたいと思います。本欄では、このグループの「楽しみ方」を中心にお話しできればと。
そもそもこのバンドの歴史は、第Ⅲ・Ⅳ期Deep Purpleのリード・ヴォーカリストであったDavid Coverdale(Vo)のソロ・プロジェクトから始まりました。David Coverdale名義でアルバム『WHITE SNAKE』(1977)・『NORTHWINDS』(1978)を発表後、これら作品での制作パートナーだったMicky Moodyを含むバンド形式に移行したのがWhitesnakeでした。ソロ名義での諸作品がR&B寄りだったのに対し、バンドではハード・ロックに焦点が絞られて来た……というのが通説のようです。
*David Coverdale『WHITE SNAKE』ジャケット
バンドのデビュー作となったEP『SNAKEBITE』、ファーストLP『TROUBLE』(1978)は、ヴォーカルのDavidの他、作曲パートナーとしてギタリストのMicky MoodyとBernie Marsden、ベースにNeil Murray、ドラムにDave Dowleといった布陣で(キーボードとして前者にはPete Solley、後者には元Deep PurpleのJon Lordが参加)作られています。Micky Moodyは英国ハード・ロック/ブルーズ・ロックのJuicy LucyやSnafuで活躍していた人物。Bernie MarsdenはドラマーCozy Powellのプロジェクトに参加したり英国ハードのBabe Ruthに加わったりしていましたが、1976年にはPaice Ashton Lord(Deep PurpleのIan Paice&Jon Lord+Tony Ashtonからなるグループ)のギタリストとなっています。Neil Murrayは70年代初頭から活躍してきた名ベーシストで、Whitesnake以前ではJon Hiseman(Dr)率いる英国ジャズロック・バンドColosseumⅡやカンタベリー系プログレのNational Healthでもプレイしてきていました。Dave Dowleはやはり英国ジャズロックの名バンドBrian Auger’s Oblivion Expressや、Roger Chapman(元Family)らのThe Streetwalkersにいたことのあるドラマー。KeyのPete SolleyはPaladinやProcolHarumでも弾いていた人物、そしてJon Lordは言うまでもなくDeep Purpleの創始者ですから、メンバーからみると「70年代英国ロック」を支えてきた名手たちがDavidのもとに集まったという様相。
当然これは「Davidのバンド」ですから、不動のメンバーは彼のみでその他メンバーはしばしば入れ替わるわけですが、ロック・ファンなら反応せざるを得ない豪華ラインナップがこの後もずっと続くのがバンドWhitesnakeの楽しいところ。絶対的個性を有するDavidの歌唱を中心に「歌モノ」として優れた楽曲を世に送り出したWhitesnakeの偉業は、Davidの実力とセンス及びその時々で彼と組むことになった制作パートナー・演奏陣の貢献の組み合わせによるわけですね。
『TROUBLE』収録曲には、軽快ながら哀愁も感じさせるシャッフルの「The Time Is Right for Love」(Neil Murrayのベースラインが凄い……)、ミドルテンポの明るく爽快な「Love To Keep You Warm」(久々に聴き直しましたが、いいですねコレ!)、といったオリジナルに並んでThe Beatlesの「Day Tripper」のヘヴィなカヴァーなんていうのもあったりします。Davidはブラック・ミュージック好きというイメージが強いですが、結構良いな。ギターソロでは例の(本ブログ第17回「Peter Frampton」(1)をご参照ください)「トーキング・モジュレーター(talk box)」が使われていますな。