DON'T PASS MUSIC BY

"Why don't you all fade away......"<The Who>

第60回「Bobby Harrison」(2)

 英国が誇るファンキストBobby Harrison渾身のソロ作を味わう。

 

Bobby HarrisonFUNKIST(1975)

  1. Cleopatra Jones
  2. Whiskey Head
  3. Thinkin’ ‘bout You
  4. King Of The Night
  5. Little Linda Lovejoy
  6. Spotlight
  7. Long Gone
  8. Looking For A Friend

<メンバー>

Bobby Harrison(Vo, Dr)

 +

Micky Moody(Gt)

Tony Iommi(Gt)

Henry McCullough(Gt)

Chris Stewart(Ba)

Herbie Flowers(Ba)

Walt Monaghan(Ba)

Clem Cattini(Dr)

Ian Paice(Dr)

Matthew Fisher(Key)

Bob Sargeant(Key)

Ray Owen(Vo)

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近年のボビー・ハリソン翁


 さあ、聴こう。ボビーのソウルフル歌唱が聴ける冒頭の「Cleopatra Jones」は、オーケストラとブラス・セクションが入るゴージャスな仕様。Led Zeppelinの中期曲のような高揚感もある壮大な曲調だけど、あまり引っ張ることなく3分40秒で幕。あ、この曲の立役者はベーシストだと思う。骨太なプレイ、っていうのかな。

 

 続いてはファンキーな「Whiskey Head」。ホーンも鍵盤も入るけど、耳が行くのはドラム。このスネアの軽やかさはBobby Harrisonさん本人ではなさそう……Ian Paice先生かもなあ(不明)。粘っこいギターソロも味わい深いですが、何といっても歌ってるご本人が楽し気だ。

 

 軽快なピアノが盛り立てる「Thinkin’ ‘bout You」はロックンロール風味。バッキングにソロにと大活躍のスライド・ギターは、Micky Moodyさんかな?1分13秒からのコンパクトで粋なギター・ソロは聴き所。初期Whitesnakeが好きな人も要チェック。

 

 7分を超える「King Of The Night」は、重厚(ヘヴィ)な仕上がり。ボビーさんの歌は美味いんですが、ここまで聴いてきて何となく個性が判ってきました。ブリティッシュHR界のファンキストといえばGlenn Hughesが想起されますが、彼よりも太く力強いヴォイス。ブルージーな楽曲を歌いこなすという点ではDavid Coverdaleにも負けてない(Micky Moodyさんは両方と組むことになるわけでして、‟ミッキーが偉い“可能性も有るが……)。

 ボビーさんはブラック・ミュージック的なフィーリングの醸成は一級なのですが……逆に言うと、どんな曲を歌っても「熱く、あつくるしく、ソウルフルに」なっちゃう。“憂いを感じさせる”要素が少ない気がします。この辺が上記のシンガーたちとの違いで、一般受けしなかったのかもしれませんなあ。上手すぎて逆に……と考えると皮肉な気がします。いまこうして時を隔てて聴くと、驚くほど良いのですが。

 

 この「King Of The Night」も、Davidが歌えばWhitesnakeRobert Plantが歌えばLed Zeppelinの曲といっても通じるような大作佳曲。尺が長い分、中間の浮遊感ある間奏(ピアノ、キーボード)を楽しんだり、後半・終盤のきわめて印象的なギターソロ(これがTony Iommiだったりするんじゃないのかなあ……?)に浸ったりできるんですけども。英国人が長尺曲をやって「プログレチックにならない」っていうのは珍しくて(そうでもないですか?)、他にはStatus Quoの名人芸があるくらいじゃないのかと。

 

 折り返して「Little Linda Lovejoy」は、シンプルなリフレインが耳に残るウォーキング・ハードロック(造語)。やっぱりスライド・ギターが美味しいところを持っていくね。グッと腰の据わったビートが心地好い。

 

 アコースティック・ギターの調べ+ストリングスで始まる「Spotlight」は、ソウル・ファンクというよりはフォーク・カントリー調の明るい曲。少し肩の力を抜いてこういう曲も歌える、っていうところを押し出したらデイヴィッドに負けないポピュラリティを得たんじゃないかと(余計なお世話か)。アルバムの流れの中ではいい位置に来ますな。リラックス出来る。

 

 その後の「Long Gone」で、得意の弾んだロックに戻ります。洒落たピアノのバッキングも素敵ですが、泣きのフレージングを多用したギター・ソロ(スライドではない)が良いね。有名どころのブリティッシュ・ハードロックの王道的味わい……ではありますが、Bobby Harrisonさんの趣味なのかどうか、曲の構成はきわめてシンプル。トリッキーなリフとか大掛かりな転調とかが無いの。さっきもちょいと書きましたが、ボビーの作法の中には「プログレ」は無かったんでしょうね。

 

 そういえばまだバイオグラフィーの話をしていませんでしたが、ボビーさんは初期Procol Harumの楽曲に参加していた(そしてすぐに脱退となった)のでも知られる人なんですが、こうしてみると、プロコル・ハルムにおさまらなかったのは当然でしょうね、やっぱり。

 

 ラストの「Looking For A Friend」は、ピアノとオルガンの二重鍵盤が美しいバラード。これはひょっとするとMatthew Fisher(こちらもまた元Procol Harum)による仕掛け及びプレイなのではありますまいか。この曲の抒情的歌唱は、さっきの「Spotlight」と並んでボビーさんの意外な一面を知ることができる好サンプル。要所要所だけ熱い歌唱で盛り上げるメリハリも素敵。ハードロック・ファンは、Tommy Bolin「Dreamer」(『TEASER』所収)を想起されるとよいかな、あの感じよ。(あっちでは終盤に「だけ」グレン・ヒューズが登場して盛り上げていくよね。)

 

 このアルバム、レコーディングは1972年だった(つまりFreedom解散直後)らしいのですが、発表されたの1975年でした。72年の作品と考えると、(すぐリリースして)売れたかどうかはともかく、英国産ファンク・ソウル・ロック作品としての歴史的評価はもっと高くてしかるべきでは、と思います。Trapezeこそ存在はしていたものの、Whitesnakeなんて形もない頃。ボビーさんがそういう世俗のポピュラリティにこだわりがあったかどうかは存じませんけど。

(ライナーノーツに掲載のインタビューでは、「(75年にはそこそこ売れたはずだが)まったく銭は入ってこなかった」と仰っていました。やはり彼はマネージメントや会社に恵まれなかったのでは……)

 

 まあ、ジャケットもイカすこのアルバム、何かの折に聴いちゃっても損はしないと思いますぞ。

<続く>