同じラインナップで録音された2作目が『LOVE HUNTER』(1979)。ライヴでも盛り上がる「Walking In The Shadow Of TheBlues」、短いが情感あふれるバラード「We Wish You Well」などが味わい深いところですかね。キャッチーなタイトルソング「Love Hunter」におけるMicky Moodyのスライド・ギターも格好いい。演奏にしてもDavidの歌唱――当時28歳にしては渋いヴォイスだなァ――にしても、bluesyという言葉がよくあてはまる。英国ハード・ロックは一般に、CreamやLedZeppelinがそうであったようにブルーズ・ロックの延長線上にありますが、Whitesnakeもその正統的な流れにあるといえましょう。
ドラマーがIan Paice(元Deep Purple)に交替しての『READY AN’ WILLING』(1980)からは、「Fool For Your Loving」がヒットしまして、バンドは第一の黄金期を迎えます。メンバーの過半数が「元Deep Purple」になっても、Jon LordやIan Paiceが器用なのか、「パープルっぽく」なっていないのは興味深いところ。「Fool ForYour Loving」は確かに名曲で、もちろんDavid入魂の歌唱も起伏に富んだギターソロを含むギターセクションも素晴らしいのですが、あらためて聴くとリズム隊の仕事の見事なこと。Neil Murrayのメロディアスなベースラインは惚れ惚れするほどですし、フレーズ(数小節)毎のキメに小粋なフィルをブチ込むIan Paiceの腕前には脱帽ですよ。ミドルテンポの曲ってよほどうまくやらないとダレちゃうんですが、これは全員の名演で名曲になっていますな。
他にもこのアルバムにはやはりミドルテンポの佳曲「Ready An’ Willing」、ソロ作『WHITE SNAKE』収録のバラード「Blindman」のリメイク、アコースティック・ギターに導かれて始まり、ハネるロックソングになる「Ain’t Gonna Cry No More」などを収めます。1980年というと、すでにNWOBHM(英国ヘヴィメタルの新たな波)のムーヴメントが起こっていた時期になりますが、オト的にはそちらとの接点はあまり感じられません。どちらかというと、渋いハード・ロックで。(同じ元Deep Purpleでも、Ian Gillan率いるGillanは若々しく荒々しいメタルモードに入っていくんですがね。まずは、Bernie Tormeというリードギタリストがいた時期の「UnchainYour Brain」て曲を聴いてみて下さい!出来ればライヴ・ヴァージョンで。)
さてWhitesnakeに戻りまして。ライヴ・アルバム(名盤!『LIVE…IN THE HEART OF THE CITY』)を挟んで、4作目が『COME AN’ GET IT』(1981)。メンバー同じ。ヒットした「Don’t Break My Heart Again」は、お得意のキャッチーなミッドテンポ・ハード・ロック。「Fool~」との違いは、Murrayのベースが四分で刻んで(動き回らず)どっしりした印象を与えるところですかね。「Hit An’ Run」はちょっとLed Zeppelinっぽいリズムとリフの組み立て方、かな。Paiceがリードするビッグなビートが心地好い。他にもJon Lordのオルガン・ソロの聴ける「Till The Day I Die」や、Murrayの饒舌なベースラインが楽しめる「Lonely Days, Lonely Nights」など、あくまでDavidの歌が主役でありながら好サポートの光る佳曲が数々。
次の『SAINTS & SINNERS』(1982)で同一メンバーによる作品としてはひと区切りとなり、一旦バンドは解散状態に。
【思い出話】
ここまでの“前期Whitesnake”に関しては、実はオリジナル・アルバムは集めておりませんで、最初はライヴ盤『LIVE…IN THE HEART OF THE CITY』で聴いたのでした。いま聴くと「いいなあ」と思うんですが、昔の私にはちょっと地味に思えたのかもしれず、あまり積極的にオリジナル作品チェックに向かわなかったのですねえ。そのライヴ盤でも当初は、後半に収められた“Live At Hammersmith”音源の「Might Just TakeYour Life」とか「Mistreated」とか「パープル楽曲」ばかり好んでました。
後に私は、『THE SILVERANNIVERSARY COLLECTION』(2003)というCD二枚組のコンピレーションに出くわします。こちらは、ソロ時代とバンド時代、そしてCoverdale・Page――元LedZeppelinのJimmy Pageとのプロジェクト。ドラマーが元MontroseのDenny Carmassi先生なのもちょっと嬉しい……――の音源を網羅したオールタイム(当時)ベストで、これでちゃんと前期の音にも触れるあり様なのでした。
あとは、そうですなあ……随分とむかし、国立にあるライヴハウスに出た時に(当時私は6-70年代のポップス・ロックをやる地元のアマチュアバンドに入っていたのです)、対バンがBad CompanyだのCactusだのの曲に交えてWhitesnakeの「Fool For YourLoving」をやってたのが印象的だったことですかね。70年代のハードロックをガンガンやる人らがいるんだなあと嬉しくなったおぼえが。<続く>