Freedomは、1972年に解散と相成りました。その後ボビーはソロアルバム制作に着手、『FUNKIST』を作ります。(レコーディングは72年でしたが、リリースは75年。またもや、ボビー作品をめぐる時空捻じ曲げですよ。困ったことだ……)
ソロアルバム制作時に協働したギタリストMicky Moodyと意気投合してボビーが次に立ち上げたのが、Snafuというバンドでした。
ちなみにMicky Moodyさんは、Snafu以前はJuicy Lucyというヘヴィ・ブルーズ(ロック)バンドで活躍していました。そして、Snafuの後はご存知Whitesnakeで世界的な成功を収めます。(初期・前期Whitesnakeの音楽的充実は、Micky MoodyとBernie Marsdenという名ギタリスト両名の貢献なしには考えられません。)
閑話休題。主役はボビーさんだったね。Snafuのファーストから。
Snafu『SNAFU』(1973)
- Long Gone
- Said He The Judge
- Monday Morning
- Drowning In The Sea Of Love
- Country Nest
- Funky Friend
- Goodbye U.S.A.
- That's The Song
<メンバー>
Bobby Harrison(Vo, Perc)
Micky Moody(Gt, Mandolin, Cho)
Colin Gibson(Ba)
Terry Popple(Dr)
Pete Solley(Key, Cho)
SnafuのFreedomとの違いは、(1)前者の方がファンクネスが前面に出ていること、(2)ドラム奏者がボビーでなくなったこと、(3)その分リードヴォーカルはボビーが独占することになったこと。つまり、ここからはBobby Harrisonは「シンガー」なんですね。
あと、アルバムのアートワークはRoger Deanさんだそうです。
「Long Gone」は、ソロアルバム『FUNKIST』でもやってた曲ですね。ややこしいのは、ソロ用の方が録音は早い(72年)のに、世に出たのはSnafu版(こっち)が先だったっていうこと。同じ曲ですから差はほとんど無いですが、Snafu版の方がリズムのキレがやや鋭い、かも知れない。ファンキーなハネが命の、Harrison/Moody曲。
Snafuというバンドは、アメリカン志向だとかサザンロック・スワンプロック系統だとか言われることが多いようです。どの辺を指してそういうのか実はよくわかっていなかったりするのですが……
「Said He The Jungle」あたりを聴いて感じるのは、Micky Moodyのスライド・ギターの味わいは確かにブリティッシュHRの作法の中ではあまり聴かれないなということ。(最近Rainbowのファースト『RITCHIE BLACKMORE’S RAINBOW』(1975)を聴きなおしたら、意外にも巧みにリッチーがスライドを決めていてびっくりしたものですが。)英国人ロッカーの中では、Micky Moodyはやっはり別格で上手いなあ、と。歌もかすんじゃうくらいにここではギターが主役。作曲にも関与したPete Solley(元Paladin、後にProcol Harumへ)のピアノも実はいい仕事をしてたり。
「Monday Morning」は、フィドルとマンドリンの合奏で幕を開ける、これまたビックリの一曲。カントリーというのかフォークというのか。ちなみに、フィドルはPete、マンドリンはMickyの手になるようです。器用な連中だ……。ブラック・ミュージック一辺倒でなくて、米国音楽全体に対する憧れがもろに出ているよね。Harrison/Moody作。
次の「Drowning In The Sea Of Love」は、米国のソウル/ファンクのソングライター(ズ)Gamble & Huffの楽曲のカヴァー。オリジナルはJoe Simon版(1971年)とのことですが、調べてみるとRingo Starrなんかもカヴァーしてたんですね(77年)。これまた完全にソウル/ファンクのダンサブルナンバーでありまして、英国っぽさは無し(?)。
たとえば「エリック・クラプトンがブルーズを演る」、とかいう場合でも、たいていは何らかの英国味が出ちゃうものですけども――そして、米国音楽に対する英国人の「照れ」や「気おくれ」が逆に新しい音楽を生むのでありますが――、ここまで全開で「そのまんま」取り組んじゃうと、「凄い!けど創造はないね!」となっちゃうのがロックの不思議ところ。
そういう意味では、米国のカントリーロックをやりながらも、もう少し遠慮がある(まあ、マンドリンがポコペンと入るのだが)「Country Nest」あたりの方が私には面白かったりするのです。Harrison/Solley作。終盤に何か鳥の鳴き声などの効果音がかぶさってくる仕掛け何かは良いんですよ。
と言って褒めると、フィドル全開のカントリー・ロック「Funky Friend」(Harrison/Moody)を繰り出してきよるんですがね。こういう音って、確かに楽しいですけど、73年時点の英国ではどう評価されたんでしょうね。最後に加速していってドンガラゴンと幕。
それでいて「Goodbye USA」って、どういうことなの?あんたたち、全面移住希望じゃないの!?……というのは冗談としても。細かい刻みがクールなSnafu流ファンキー・ロック。ピート・ソリーによる(よね?)ピコピコ・シンセが面白い――ただし、プログレにはならないのだった――のさ。
ラストは「That’s The Song」(Solley/Jerry Marcellino)という、元気なダンシング・ナンバー。Bobbyの歌は、『FUNKIST』の時ほど力んではいないが、相当にソウルフル。ここでも、米国っぽさを施しているのはMicky Moodyのギターワークであった。後に彼を手に入れたDavid Coverdaleが大成功するのもわかる気がする……(「じゃあ、ボビーはなんで大成功しなかったん?」と言われると困りますが……その謎は追々考察していきましょう。)やっぱり逸材ですよ、ね。
私が持ってる再発CDには、この後にボーナストラックとして「Dixie Queen」と「Sad Sunday」っていう曲が入っています。(前者はシングル曲、後者は未発表曲だった模様。)「Dixie Queen」は流れるようなリズムとテンポが心地好いロックソング、「Sad Sunday」はオルガンも入って重厚な(仄かにProcol Harumを感じさせるのはそのせいでしょうか)楽曲。ジャズ風味強し。出来が良いのに未発表だったのはなぜでしょうね。
ということで、アルバムとしての内容はお見事なもの。私のような捻くれ趣味者からすると、「米国音楽を、巧みに米国音楽そのもののように演じる」点に物足りなさを感じないでもないのですが、それはこっちが悪いんでしょう。本人たちは気合を入れて次作も作りますよ。
<続く>