<思い出話>
Iron Maiden自体は、例によって後追いで知ったので、最初はベスト盤から入りました。『BEST OF THE BEAST(限定版)』(1996)を手に入れて聴きましたね。ブックレットが充実していて、ここでいろいろ学ばせていただきました。(アーティストに対する愛情のある編集作業、これには敬意を表します。)このコンピは時代の新しい方(96年)から古い方(78年)へ遡る構成になっているのですが、わたくしは古い時代の作品(二枚組CDの二枚目のほう)に特に惹かれました。先ほども申しました「2 Minutes To Midnight」「Aces High」「Where Eagles Dare」……格好ええ、歌うめえ。そうやって聴いていると、途中でVoの声が別の人のになりました。
「Wrathchild」「Phantom of the Opera」「Sanctuary」「Strange World」「Iron Maiden」の5曲は、「ポール・ディアノ」っていう人が歌ってるのか、へえー。この最初期の音(歌だけでなく)に魅力をおぼえて今日に至るというわけであります。(ちなみに、ここで「Iron Maiden」という曲を聴いて、「バンドのテーマ曲かあ」と思って何度もリピートしておぼえたんですが、実はこのコンピに収録されていたのは『THE SOUNDHOUSE TAPES』というデビューEPに収録されたヴァージョンでした。「疾走感はあるけど、スピードはさほどでもないなあ」と思ったのは若干勘違い、ファーストアルバム収録版はずっとスピーディーで驚きました。ドラマーが別人なのでそのせいが大きいと思います。余談)
その後、オリジナル・アルバムとしてはファーストなんかを入手して聴いたりしていましたが、あるとき映像集『VISIONS OF THE BEAST』(DVD)を輸入盤で得て、歴代のPVを観ていく中で、さいぜん申している「Women in Uniform」にギョッとなったわけです。「こんな曲、アルバムになかったけど?」とか思って調べると、シングルオンリーだったことがわかりまして、「それじゃあ音源は手に入らないね」とあきらめていたところ……1990年に企画された「バンド初期10年の音源を完全にリイシューする」という『THE FIRST TEN YEARS』の一部としての本作が中古店にあるのを見つけまして、「やったあ」とこうなったと。オリジナル・アルバムを揃えるより前にこういう物件に走るあたり、邪道ですなあ。
ついでにいうと、バンドを脱退(解雇)となったあとのDi’Anno氏の動向も気になりまして、彼のソロ活動なんかも割と追っているのですけど、その辺はまた別の機会に申し上げさせていただきます。
<今回取り上げた作品>
(1)Iron Maiden『WOMEN IN UNIFORM/TWILIGHT ZONE』(1980/81)
(2)Iron Maiden『IRON MAIDEN』(1980)
むかしはこれのジャケットが怖かったなあ。これ以降、ジャケットやステージに必ず登場するこのひと(?)が「Eddie」というキャラ。本作の音はメロディアスなので(「デスメタル」とかではない)、皆様におすすめしたいのですが。「Prowler」「Sanctuary」で疾走ったあと、起伏のあるミドル・テンポの「Remember Tomorrow」、シャッフルの「Running Free」、プログレ風大作「Phantom of the Opera」……むすびのテーマ曲「Iron Maiden」まで、捨て曲なしの名盤。
(3)Iron Maiden『LIVE AFTER DEATH』(1985)
Bruce Dickinson加入後のライヴ盤。みんな大好き「Aces High」や大作「Rime of the Ancient Mariner」、Bruce時代の幕開け曲となった「The Number of the Beast」などとともに、Paul時代の「Iron Maiden」「Running Free」もあり。わたくしの持ってるヴァージョンはボーナスディスクが付いていて、そっちには「Sanctuary」「Murder in the Rue Morgue」も入ってます。
(4)Iron Maiden『BEST OF THE BEAST』(1996)
1996年までのまとめベスト。一枚ものもあるがわたくしが持ってるのは二枚組ヴァージョン。バンド史上初のベスト盤だった模様でかなり充実していますが、後に別編集のベスト盤が何種類か出るようになると、なかなか見られなくなってしまいました。最初期の『THE SOUNDHOUSE TAPES』の音も聴けるので、探す価値ありだと思いますが。
(5)Iron Maiden『VISIONS OF THE BEAST』(2003)
映像集DVD。副題に「The Complete Video History」とあるように、基本的にPVを集めたものです。Paul時代は「Women~」と「Wrathchild」のみだったのでわたくしは繰り返し観たものだ。Bruce時代のビデオも面白く、「Run To The Hills」「The Trooper」「2 Minutes To Midnight」ほか、いかにも80年代的な(?)「バンドの演奏と奇妙なストーリー映像が組み合わされたもの」が楽しめます。(80年代の面白ビデオは、Judas Priestが王様だと思いますが、その話もまたどこかで。)あ、「Holy Smoke」のビデオはファニーで面白いですよ。メンバーがみんなニコニコ(ニヤニヤ?)してんですけどね、どことなく初期The Whoの音楽ビデオっぽい感じがあって……映像を観るまでは「変なポップな曲」として片付けていた同曲が、途端に興味深く思えるから不思議。
(6)Paul Di’Anno『THE CLASSICS: THE MAIDEN YEARS』(2006)
Lea Hartという、NWOBHM界隈ではちょっと知られたひと(メロディアスハードを手掛けるとなかなか)がプロデュースした「初期Iron Maiden曲をPaulが歌い直した」リレコーディングアルバム。演奏している面々は固定のバンドではないようで(Lea Hartもギターで一部参加)、器楽を楽しむアルバムとは言いにくい。ですが、四半世紀前の曲――とはいえライヴでは歌い継いできたものも多いのですが――をご本人がセルフカヴァーしているのは、楽しめます。Di’Anno自身があまりステージでも取り上げてこなかった「Charlotte the Harlot」「Women in Uniform」「Killers」あたりが興味深いですかね。あとは「Wrathchild」「Running Free」「Iron Maiden」などソロバンドでもひたすらやっていた曲が多数。
終わってみれば、Paul Di’Anno偏愛をさらしたのみのような。Di’Annoさんは、曲によってはデスヴォイスみたいな押しつぶした声で歌おうとすることがあって、それはあまりうまくいっていないと思うのですが(Killersというグループとして出した二枚目の『MENACE TO SOCIETY』なんかは、“Panteraもどき”とか叩かれてました。確かに、「Die by the Gun」なんかは、Phil Anselmoっぽさが露骨でしたね)。
しかし、ちゃんとメロディのある曲を彼のスタイルで歌おうとすると妙味が生まれる。そういう路線でまた作品を出してくれないものでしょうか。本家Iron Maidenの大活躍とともに、その辺にも注視してまいりたいと思っております。