DON'T PASS MUSIC BY

"But holy men and kings would die in the year Twenty Twenty-five......"<Satan>

第11回「Jackie Chan」(1)

 題目は、間違いではありません。今回は、シンガーとしてのジャッキー・チェン及び彼の映画音楽を自分の好みにそって(rock fanの観点から)ご紹介せんとするものであります。
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 調べてみるとチェン氏、否、ジャッキーはこれまでにかなりのレコードを出しているようです。それも、広東語・普通話(中国語の標準語)・英語・日本語とさまざまであり、堂々たるインターナショナル・スターと認めぬわけにはいきますまい。ただ、彼が「歌手」として出した曲にはあんまりロック調のものは多くないようですけどもね。


本来映画音楽は映像とセットで語られるべきではあると思うのですが、映画本体については触れることを最小限として進めてまいります(さもないと、映画について言いたいことを並べるだけで三日三晩はかかるから)。ちょっと確認しておくと、「ジャッキー映画の音楽」と「ジャッキーの歌う曲」は厳密には同じではありません。ごく初期のカンフー映画、例えば『蛇拳』(1977)で奥義習得・修練の場面で印象的に流れるのがフランスの電子音楽Jean Michel Jarreの「OxygenⅡ」(1976)などという物凄い例もありますし、70年代末~80年代前半に日本公開されたジャッキー作品には「オリジナル版にはなかった」主題歌や挿入歌が付けられていることもありました。(『酔拳』の「拳法混乱」、『カンニングモンキー天中拳』や『ドラゴンロード』のテーマ曲他多数。)これらは、“ジャッキー・チェンの音楽”というわけではありません。


また、『スパルタンX』などは、香港版と日本公開版で音楽が全然違っていまして、後者の冒頭ジャッキー・チェンとユン・ピョウのトレーニング場面及び終盤ジャッキーとベニー・ユキーデの死闘シーンで掛かる軽快な曲や、同じく中盤で流れるテーマ曲(キース・モリソン=木森敏之氏作曲)が、前者には全くありません。わたくしは昔ポニーキャニオンから出ていたVHS版(日本公開字幕版を収録)でずっと観ていたので、当然その曲は「ある」ものと思っていたのですが、最近買い直したDVD(オリジナルの香港版を収録)では「ない」ばかりか、ベニー・ユキーデ戦で掛かる音楽も中国風ののどかな(緊張感が無いよ……)曲だったりして愕然。とまあ、きっとジャッキー本人も把握していないだろう不思議がいっぱい。(研究している方もおられますが、わたくしは追いきれない。)


あ、『サンダーアーム』(1986)は香港のポップスター&映画での共演者アラン・タム譚詠麟)による「暴風女神Lorelei」「朋友」「午夜騎士」が掛かりますが、楽曲としての質はジャッキー映画史上最高レベル。アランのアルバム『暴風女神LORELEIには3曲とも収録されているのでお薦め(古い作品なので入手は難しいかと思いますが)。


対して、「ジャッキーの歌う曲」の方は比較的はっきりしています。クレジットと声でわかりますのでね。ただ、1993年の『ポリス・ストーリー3』より前は、ジャッキー映画ではジャッキー含めキャストたちの声は香港版であっても「吹き替え」が行われていました。専任の広東語吹替声優さんがいたため、わたくしなどはその人の声を「ジャッキーの声」だと思っていた。(ちなみに、日本語版も声優は固定=石丸さん=ですね。)わたくしがさんざん観まくった『プロジェクトA』(1983)なんかではジャッキーの声は結構甲高いイメージなんですが、『PS3』で喋ったジャッキーの声がえらい低い声だったので驚いた記憶があります。80年代の同時代にジャッキーの歌とかバラエティ番組出演とかを観聴きしていた人は、とっくに知っていたのでしょうけども。


で、彼が自ら歌うようになったのは80年代、ちょうど日本で最も受けていた時代でございました。80年の『ヤング・マスター』主題歌(これは全編英語)から、名作『プロジェクトA』『ポリス・ストーリー』『プロジェクトA2』の主題歌といったあたりは彼のものですし、珍品としては香港製作の松竹映画『ファースト・ミッション』の主題歌・挿入歌「東京サタデーナイト」「チャイナ・ブルー」(両方ともジャッキーが“日本語で”歌っております)なんていうのもありました。わたくしの持っている日本編集の『決定版ジャッキー・チェン』なるCDには、ジャッキー歌唱の上述楽曲(『ファースト・ミッション』関係を除く)のほか、当時最新作だった『PS3』のテーマ曲、映画には使われていないイメージソング(『プロテクター序曲』)、初期カンフー映画の日本オンリー曲(しかもオリジナル音源でなく謎のカヴァーヴァージョンだったりもする)などが詰め込まれております。まあ、かなりヘンな編集盤ではあるのですが、80年代中盤頃のジャッキー(人気面)絶頂期をとうに過ぎておりましたので、他にほとんど手に入る作品などなかったのです。こればかり繰り返し聴いておりました。

<作品紹介>
  1.希望:I Hope You Will Understand(『ポリス・ストーリー31992)*
  2.:The Riddle(同上)*
 3.プロジェクトA2のマーチ:March from Project A2(『プロジェクトA21987)*
 4.プロジェクトA2テイク2:Project A2 Take2(同上)
 5.トライバル・ドラムス:Tribal Drums(『サンダーアーム/龍兄虎弟』1986
 6.ポリス・ストーリー:Theme from the Police Story(『ポリス・ストーリー』1985)*
 7.プロテクター序曲:Prelude from the Protector(『プロテクター』1985
 8.パワー・オン:Power On(『キャノンボール21983
 9.ドラゴン・ロード:Dragon Lord(『ドラゴン・ロード』1982
 10.拳法混乱:Kungfusion(『酔拳1978
 11.ラクル・ガイ:Miracle Guy(『少林寺木人拳1976
 12.プロジェクトA:Project A(『プロジェクトA1983)*
 13.スパルタンX:Spartan X(『スパルタンX1984
 14.デンジャラス・アイズ:Dangerous Eyes(『蛇鶴八拳』1977
 15.キャノンボールのテーマ:The Cannonball(『キャノンボール1981』)
 16.さすらいのクンフー:Theme from the Young Master(『ヤング・マスター』1980)*
 17.蛇形拳伝授:Lesson ofKung-fu(『蛇拳1978
 18.クレージー・モンキー:Crazy Monkey(『笑拳』1979
 *ジャッキー本人が歌っているのは、1,2,3,6,12,16
 
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 時系列でも種類別でもないトラックリストなので困りますが、「ジャッキー歌唱」第1番は16曲目。さっきも書きましたが全編英語です。作詞:湯川れい子、作曲:宇崎竜童という、完全日本側プロデュース作品。ミッドテンポの歌謡ロック。ジャッキー曰く「『ヤング・マスター』では、僕は何と英語で歌っているのだが、当時の僕の英語は酷いものだった。以来、中国語で歌うようにしているが、僕のファンにとっては歓迎すべき変化だと思う。」(近代映画社刊『I AM JACKIE CHAN1999年より)聴いてみると、本人が恥ずかしがるほどひどくはないと思うのですがね。(1980年当時の非英米における英語歌唱はそんなものであり、またそこに味があるのである。ジャパメタにしてもジャーマンメタルにしても、“英語がうまいから”より大事な要素がちゃんとあるものは残る。)


 時系列で次は、12曲目。『プロジェクトAという映画については、「いいから観ろ、黙って観ろ」というレベルの名作ですと述べるにとどめておきますが、この主題歌も割合有名ではないでしょうか。広東語の歌でこれほど日本の市井に入り込んだものはないのでは?沿岸警備隊OR水上警察)が主役だからですね、勇壮な曲で、歌っているのも「不懼強敵!不怕那風波湧! 心中緊記!龍種!東方的威風!」(強敵も風波も恐れぬ!強き信念をもつ、龍の子孫は東洋の英雄也!)とかいうもの。映画の内容は別に殺伐としたものではなく、この主題歌以外も音楽の使い方が良いのだ。(主人公=ジャッキーが敵から追われて逃げるときのBGMが最高。)


 3曲目は、『プロジェクトA』の続作にあたる作品のテーマ曲。『A』の方は、合唱的パートが多かったのに対し、こちらではジャッキーのリードがしっかり聴けます。例によって映画のエンディングで流れるのですが、エンディング――ジャッキー映画ではNG場面を流すのがお約束となっていますが――の映像ではなぜか左上の小窓で「マイクの前でこの歌を歌ってる楽しそうなジャッキー」がずっと映ってましたね。


 あと有名なのは6曲目ですか。劇場公開以後もテレビなどでひたすら再放送されてきた作品なので、『ポリス・ストーリー』はご存知の方も多いと思われますが、主題歌はジャッキー本人です。いったいどれだけの若者が「♪はんてぃもー……」の広東語歌詞を耳コピしようとしたことであろうか。わたくしなど一時期は耳コピでは飽き足らず、まじめに広東語を勉強しようと思って、千島英一先生著『初めて学ぶ広東語(カセット付き)』まで購入したのだが……自学では限界がありました。声調がすごく多くて……。結局、映画に出てくる「数字の言い方」とか「もうまんたい」とか若干しかわからぬ体たらく。


 そんなことは別によいですね。曲はアップテンポのロックで、イントロから(とサビのバック)のホーンのフレーズが印象に残る、と。かなりむかしに、友人たちと「この曲カヴァーしてみようぜ」ってことになって、音と歌詞をとってみたことがあるんですが……ドラムは8ビートなのにベースはずっと4分を弾いてるし、ギターは16分の刻みを続けるという、単純なようで変な感じでしたなあ。


 ジャッキー歌唱が聴けるのはほかに1曲目、2曲目。当時最新作の『ポリス・ストーリー3から。1曲目はバラード、2曲目はエンディングで流れたミッドテンポのロックソング。ちなみにどちらもここでは「普通話」版が収録されていますが、『PS3』のオリジナルサウンドトラックには両曲の広東語版が入ってます。うちにあるVHSで流れてるのは広東語の方じゃないかな。こういう風に、「普通話」版と広東語版があるっていうのは、香港映画人ジャッキーとしては必然のようでして――彼の場合はそれに英語と日本語が加わるんだから恐れ入る――、『レッド・ブロンクス1995)の主題歌(演歌ロック調?)も2ヴァージョン存在します。


 さて、ジャッキーが歌ってないものでも、「スパルタンX」なんかは単品として聴いても粋な曲ですね。プロレスラーの故・三沢光晴さんが入場曲として使用していたことでも知られます。(わたくしは知らなかったのですが、プロレス好きの友人が教えてくれました。)