ちょっと疲れるくらい密度の濃いアルバム『MARQUEE MOON』でした。なおバンドはこの後『ADVENTURE』というセカンドアルバムを出しますが、さほど振るわず解散。メンバーは別々の道へ進みTom Verlaineはソロで活躍、Richard Lloydも寡作ながら作品を発表しています(近年ではRocket from the Tombsへの参加なんていうのもあった)。BillyFiccaはThe Waitressesへ参加したりしていました。Televisionとしての一時的再結成もあり、アルバム『TELEVISION』を1992年に出しています。
<思い出話>
これは明確に記憶しています。地元にあったBOXっていうCDショップ(今は亡き)で、『THE NO.1 PUNK ALBUM』っていう最高なタイトルの2枚組オムニバスを買ったんですよ。1枚目の冒頭がSex Pistolsの「God Save the Queen」、2曲目がThe Jam「Going Underground」……という風に、名バンドの名曲が目白押し。わたくし当時はパンク初心者だったので、ココに入ってるアーティストで気に入ったのを追いかけていくことにしました。Sex PistolsやThe Damnedはもちろん、XTCもElvis CostelloもStiff Little FingersもThe Stranglersもね。
そして、二枚目16曲目に入っていた「Marquee Moon」っていう曲(いま思えばこれはショートヴァージョンでしたね)に妙に心ひかれまして、Televisionっていう変なバンド名も気になったので、探してみることにしたのでした。『マーキー・ムーン』は名盤の誉れ高く、割合すぐCDショップで発見できたことを覚えてます。当時はCDを弟などにも聴かせて楽しんだりしたものですが、「Torn Curtain」が流れ出した瞬間(例の“てれれれれー”で)一緒に爆笑してしまったことなども思い出しますなあ。
高校の時いっしょにバンドをやってた友達にも「こんなのあるよっ!」と貸し付けたこともあったから、よほどテレヴィジョン気に入ってたんだろうなあ、わたくし。(ちなみに、ギタリストである彼にギタープレイの凄いのを聴いてもらおうと思ってJohnny Winter『CAPTURED LIVE!』・Michael Schenker『英雄伝説(日本編集のベスト)』と『MARQUEE MOON』を貸していたわたくし。今更ながら、なんだろうこのチョイス?)
<作品紹介>
(1)Television『MARQUEE MOON』(1977)
プロデューサーの一人Andy Johnsさんは、The Rolling StonesやLed Zeppelinを手掛けたことでも有名ですね。いまちょっと調べてみたら、数えきれないくらいのロック・アルバムをプロデュースしてました。プロデューサーにもいろいろタイプがあるようですが、この人は「音作り」から出来る人のようですね。本作ではそれが最良の結果に結びついたようです。
(2)Television『ADVENTURE』(1978)
前作のインパクトが強いために、あまり目立たないセカンド。『MARQUEE MOON』は、デビュー前にさんざんステージで練り上げられていた曲を録ればよいだけだったといいますが、今作ではスタジオにこもりながら曲作りをしたとのこと。
決して楽曲の質が下がっているわけではないのですが、前作の如きマジカルな雰囲気は乏しい。明るい感じの曲、ポップな感じの曲があるのは良いと思うのですが、わたくし個人的にはドラムの繊細さを味わえる部分が減っているのがやや残念。なお、タイトル曲(?)「Adventure」はオリジナルアルバムには収録されていませんでしたが、再発時のボーナスで入りました。これがビックリ、John Lee Hooker風のブギーなのでした。ブックレット(Alan Licht氏)によると、Richard Lloydが18歳のころJohn Lee Hookerのコンサートを観に行って楽屋をうろついてたら、御大John Leeが「一緒に演るか!」って声をかけてきたんですって。それが彼のステージデビューだっていうんですから、本当だったら美しい話よな。
(3)Television『TELEVISION』(1992)
再結成作。メンバーは前と同じ。Tom Verlaineの作曲センスも衰えてませんし、二本のギターが丹念に組み上げられているところはさすが。ああ、確かにテレヴィジョンだなあと思う一方……ベースがかなり引っ込んでいること、ドラムがかつてのような細かいフレーズ(フィルなど)を入れなくなっていることもあって、雰囲気は変わりましたね。
(4)Television『THE BLOW-UP』(1982)
解散後に出されたCDで二枚組のライヴ・アルバム。1978年のコンサートを収めますが、かなり音質は悪いです。オフィシャル盤なんですけどね。
一枚目の1曲目「The Blow-Up」は、米サイケの名バンド13th Floor Elevatorsの「Fire Engine」と同じ曲。「See No Evil」「Prove It」「Venus」などの『MARQUEE MOON』収録ナンバーのほか、『ADVENTURES』から「Foxhole」「Ain’t That Nothing’」、Bob Dylanの「Knockin’ On Heaven’s Door」なんかをやっています。アルバムだけ聴くとクールな面々ですが、観衆の前では熱くなってるのがわかって嬉しい(気持ち前のめりの演奏だ)。
もっとすごいのは二枚目で、1曲目が「Little Johnny Jewel」というオリジナルアルバム未収録ながらステージではデビュー前から演奏されてきた十八番。これがいきなり15分。「Friction」を挟んで、「Marquee Moon」の15分ヴァージョンへ。後半Tomのギターを中心に10分以上引っ張るのが凄い。そして、ラストがなんと「(I Can’t Get No)Satisfaction」、The Rolling Stonesのカヴァーであります。Billy FiccaさんのドラムスタイルはCharlie Wattsとは真逆でしょー、と思うのだが……どうにも本人(Ficca)が楽しそうなんだよなあ。パンク!
ちなみに、音質の良いライヴ・アルバムとしては『LIVE AT THE OLD WALDORF』っていうのがありますが、見つけるのは難しいみたい。一部動画サイトで聴けたりするのでちょっとチェックしましたが、音がキレイっていうことと感動的っていうことは必ずしもイコールじゃないのかなあと思ったり。『THE BLOW-UP』に思い入れがありすぎるため、小ぎれいにまとまっているよりカオティックな(ふうに聴こえる)方が「ロックだぜ」とか思っちゃう単細胞。〔もう少し続く〕