<楽曲紹介>
まず1976年の『DERRINGER』ですが、1曲目「Let Me In」はThe Kinks風というかThe Who「I Can’t Explain」風というか、そういうリフで幕を開けます。かっちりしたセクションとルーズなパートが組み合わされ流れる代表的一曲。このクオリティが全編保たれるので安心して聴けますが、Danny Johnson作の「Sailor」や、ファストナンバー「Beyond The Universe」の出来は特にすばらしい。両方ともステージでも好んで演奏されておりますね。

2枚目は『SWEET EVIL』。ごりごりのロックだけが持ち味じゃないぜ、っていうのが1曲目の「Don’t Stop Lovin’ Me」から伝わってくるようです。武骨さは前作より退いたようですが、「Sitting By The Pool」なんかはさすがの出来。プロデュースはJack Douglas。
Derringer名義ではもう1枚、『IF I WERE SO ROMANTIC, I’D SHOOT YOU』がありますが、ギターはMark Cunningham、ドラムはMyron Grombacherに交替していまして、当初のバンドとは別物になっております。またプロデュースはMike Chapman、ハード・ロックというよりポップなロックのうまい人ですね。こうした影響があるのか、今作はハード・ロック・バンドという感じはしなくなっています。Rickのセンスは衰えてないので、「Ez Action」や「Lawyers, Guns And Money」ほか良い曲はありますが……
バンドとしてのDerringerは1976-78年で実質終わってしまいますが、この間に彼らが残したライヴ盤を聴くと、彼らがアメリカン・ハード・ロックの雄だったことがわかります。1977年の『LIVE』は、2枚目を引っ提げてのツアー音源。「Let Me In」に始まり、Rickのソロから「Teenage Love Affair」の元気一杯なヴァージョン、Dannyの名曲「Sailor」を経て、前半のハイライト「Beyond The Universe」へ。この曲はRickとDannyのギターリフ・ソロも熱いですが、ぜひドラムを聴いてくださいませ。2分40秒くらいからの短いドラムソロなど、全編Vinnyが凄いことになっておりまする。『LIVE』後半はセカンドから「Sitting By The Pool」、Rickのソロから「Uncomplicated」、「Still Alive AndWell」、最後が「Rock And Roll, Hoochie Koo」。「~Hoochie Koo」は、エンディングが引き伸ばされたライヴ仕様で、The Kinksの「You Really Got Me」の1番完奏を挟んでます。このアルバムはジャケットも格好いいですね。

『LIVE』よりも早い時期のライヴを収めた『LIVE IN CLEVELAND』(商品化されたのは『LIVE』より後ですが、76年9月のステージ)では、後半の曲が「Rock And Roll, Hoochie Koo」、「Roll With Me」、「Rebel Rebel」(David Bowieのカヴァー)になっているほか、4曲目の「Beyond The Universe」の冒頭でRickが「Real fast one!(マジで速いヤツな!)」と叫ぶのが聞こえます。若干演奏は粗めの気がしますが、気合いの入り方は『LIVE』以上かもしれません。
<思い出話>
わたくしの場合、かなり変な経路でRick Derringerに行き当たりました。Deep Purpleが好きだったそのむかし、「元パープルの人がやってる」と帯に書いてあった『CAPTAIN BEYOND』を買いました。聴いてみるとこれが良い、特にドラムが凄いじゃんかということでプロフィールを調べると、「Johnny Winterのバンドにいた」とある。「へえー」と思って今度は『JOHNNY WINTER AND LIVE』に手を出す。すると「おお、Johnny Winterのロックンロールはカッコええ」、「ところで、ギターは2本あるようだが誰だ」、「Rick Derringerというのかい」という流れでRick様にたどり着くと。(続く)