DON'T PASS MUSIC BY

"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

第22回「特集:このドラミングがすごい②Bobby Caldwell」(2)

2Captain BeyondCAPTAIN BEYOND1972
 1曲目「Dancing Madly Backwards」・2曲目「Armworth」・3曲目「Myopic Void」はひとつながりの組曲となっておりまして、ライヴでも必ず続けて演奏されました。「Dancing~」は、ボビーさんによる5拍子のドラムから始まる曲。リーさんとライノさんの弦楽器が重なり、満を持してロッドさんのヴォーカルがかぶさってきます。同じパターンが繰り返されるなあと思っていると、140秒のあたりから切り替わり。疾走する間奏パートになだれ込みます。ライノさんの繰り出すリフのカッコよさ、豊富さは感激ものだなあ。惜しげもなく一つの曲で披露してしまうなんてねえ。Jon Lordの言った通り!そして続く2曲目は150秒と短いですが、印象的なリフが耳に残るのでした。このギターリフ、なんか聴いたような……と思ったら、人間椅子の名盤怪人二十面相収録の「名探偵登場」のメインリフがやっぱり「デデドゥデ(EEGE)」っていうフレーズ。影響関係はわかりませんが、人間椅子の方々はロック通なのでCaptain Beyondもきっとお好きな筈。さて3曲目「Myopic Void」は、最初の2分半ほどスローなフレーズにのせて(ドラムはマーチングのロールのようなプレイ)、「I’m so common, on your grave…」という歌が延々繰り返される催眠術的な曲……と思うと、230秒から最後の330秒まで怒涛の疾走パートに突っ込むのでした。歌詞はひたすら「Dancing madly backwards, dancing on a sea of air」を繰り返す。「おっ!」と思っていると「ダダダダダダダッ!」といって終わっちゃう。
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 4曲目は独立した曲で、ライノのリフが冴えわたる「Mesmerization Eclipse」。5曲目は「Raging River of Fear」というヘヴィソング。基本が3拍子なので、場所によってワルツに聴こえる。この曲で軽やかに踊るのは難しそうですが。

 

 6曲目から8曲目も組曲。アコギ+ヴィブラフォン(ボビーさん演)による静謐な「Thousand Days of YesterdaysIntro)」から、激しい「Frozen Over」につながります。この7曲目「Frozen Over」は、ひょっとすると本作中いちばん展開の目まぐるしい曲かもしれません。340秒くらいしかないのですが、冒頭・メインの歌のところ・サビ・間奏・終盤の展開部分と、すべてパターンが違う。この曲の雰囲気が後のArmageddonの曲の型を先取りしてる感じがします。フェイドアウトするところに重なって入ってくるのが「Thousand Days of YesterdaysTime Since Come and Gone)」。ここではアコースティックギターがリフに活用されますが、ヴォーカルパートが多重録音されていたりして壮大な盛り上がりを見せます。

 

 最後の5曲(9曲目から13曲目)がこれまた組曲。ライヴでは最もよく演奏された、たぶん彼らの自信作。9曲目「I Can’t Feel Nothin’Pt.1)」は、ミドルテンポの執拗なリフから疾走パートにつなげる彼ら十八番のパターン。10曲目「As the Moon SpeaksTo the Waves of Sea)」は静かに始まり、アコースティックギターアルペジオに導かれる中エフェクトのきいたヴォイスが囁く。かと思うと変拍子リフレインの炸裂する11曲目「Astral Lady」につながって、ハードに行くのかな?と思うと再び「As the Moon SpeaksReturn)」。ここだけは妙に(?)爽やかなコード進行と歌……なんだが歌詞は「I can’t feel nothin’……」を繰り返すばかり。なんなの?と思っていると曲の後半でパーカッションが乱打され……ベースが不気味に鳴ったかと思うと、Rodが「Ah, here it comes!」とシャウトし、ラス曲「I Can’t Feel Nothin’Pt.2)」になっているという具合。ここから一挙に盛り上げて「ジャララララ!」でおしまい。目まぐるしいとはこういうことでしょう。

 

 結論。名盤。ちなみに、アルバムによる作曲のクレジットは「Bobby Caldwell & Rod Evans」となっていますが、実際はLeeRhinoも曲作りに大いに加わっていたそうです。Iron Butterflyで活動してた関係で、ニューグループでのクレジットが打てなかったとかなんとか。
 
3Rick DerringerALL AMERICAN BOY1973
 以前Derringerの話をしたところで述べましたので繰り返しはしませんが、Rickとほぼ二人でアルバムを作りあげたボビーさんの力量はもっと評価されてしかるべき。特に代表曲「Rock and Roll, Hoochie Koo」は、Rickによる独特の跳ねたリズム(ベースもリックが弾いている)に適応しながらも、軽くなり過ぎない絶妙なサポートをしてるのが凄い。さっきも書いたけど、この人はキックの入れどころが見事なんですよね。心地よい。
 
4The Allman Brothers BandTHE FILLMORE CONCERTS1992
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 偉大なるThe Allman Brothers Bandについてはまたきちんとご報告せねばなりますまいが、わが敬愛するボビーさんが1曲参加しているという理由で取り上げさせていただく(邪道)。その一曲は「Drunken Hearted Boy」といいまして、1971年のフィルモア・イースト公演を収めた2枚組ライヴ・アルバムの最後に入っております。いまクレジットを確認したら、ボビーさんだけでなく、作曲者のElvin Bishopさん(Gt,Vo)、Steve Millerさん(Piano)も加わった大所帯になっておりました。オールマン兄弟より45歳若い計算のボビーさん、「フロリダのミュージシャン」として先輩である兄弟からチャンスをもらったというところなのでしょうか。この曲はスロウなブルーズ・ナンバーで、ボビーさんのプレイも控え目?【後編に続く】