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"Louis XIV, finesse and force......."<Chroming Rose>

第5回「Derringer」(1)

<アーティスト概要>
 さて、ABCと来て次はDDeep PurpleDave DaviesDixie DregsDamnedも素敵ですが、ここはDerringerを取り上げましょう。いずれくどくど語りたいんですが、Rick DerringerRonnie Montroseこそ、アメリカン・ハード・ロックの立役者だと思うというのがわたくしの見解なのです。(KissAerosmithの偉大さと観客動員数の大きさは認めますが、どうも彼らの基本はブリティッシュ・ロックにあるような気がしていて……異論反論招いてしまいそうですが。)


 DerringerというのはRick DerringerVo, Gt)が率いたバンドでして、このグループの話をするにはRickのプロフィールに触れなければいけません。Rick Derringerがにショウビジネス界に登場したのはThe McCoysというバンドの一員としてでした。「HangOn Sloopy」という曲がヒットし、彼は十代でポップス界のアイドルとなります。The McCoysは別に一発屋ではなく、他に当たったシングルもありますし、アルバムも4枚残している(後期になるとサイケ・ロック風になる)のですが、最初のヒットの印象は強すぎましたね。Rick自身、後のソロ活動やDerringerの時代にも、「Hang On Sloopy」は演じ続けています。


 その後70年代に入ってRickは、アメリカのブルーズ・ギタリストJohnny Winter及び彼の弟のEdgar Winterの参謀役(プロデュース、ギターでの参加)として貢献します。Johnny WinterのアルバムJOHNNY WINTER ANDJOHNNY WINTER AND LIVEでは彼のセンスとプレイが楽しめます。Edgarの方でもROADWORKTHEY ONLY COME OUT AT NIGHTなど多くに参加。そして73年には、Rick Derringer名義でソロアルバムを発表します。「Rock And Roll, Hoochie Koo」という大ヒット曲を含むALL AMERICAN BOY、この作品はハード・ロックというにはヴァラエティに富んでおりまして、「~Hoochie Koo」や「Teenage Love Affair」のような軽快なロッキングソングもあれば、「It’s Raining」や「Jump, Jump, Jump」のようなバラード、ミドルテンポの「Umcomplicated」「Slide On Over Slinky」、「Joy Ride」「Time Warp」のような軽妙なインストも配されておるのであります。ほとんどすべてのパートをRickが演奏し、ドラムは名手Bobby CaldwellJohnny Winter, Captain Beyond)がつとめておりますね。
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75年にはセカンドソロSPRING FEVERを発表。こちらは、Johnny Winterに提供した「Still Alive And Well」「Roll With Me」のセルフカヴァーを含むほか、終曲の「Skyscraper Blues」ではピアノでEdgar、スライドギターでJohnnyWinter兄弟が参加。そのせいもあって、ブルーズ色が強まった感じがあります。ちなみにドラムはJohn Siomos!そう、Peter Framptonのモンスター・ヒット・ライヴ・アルバムFRAMPTON COMES ALIVEで叩くことになる方なのであります。手堅いドラム。


70年代のRickはまあそんなわけで大変に忙しくしていたのですが、自らのハード・ロック・バンドDerringerを遂に結成します。今までとどう違うかと言えば、固定メンバーで曲を作りライヴも行うという意味で、「生きた」グループにしたということでしょう。周りのメンバーは、Danny JohnsonGt)、Kenny AaronsonBa)、Vinny AppiceDr)。いやあ、凄い。
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*『SWEET EVIL』ジャケ。左からKenny、Danny, Rick, Vinny.
Dannyは、後にGraham BonnetAlcatrazzに三代目ギタリストとして参加しますが、先代がSteve Vai、先先代がYngwie Malmsteenだったために比べられて「地味」とか言いがかりをつけられてしまいました。しかし、これは冤罪である。彼は曲芸的な速弾きをしないというだけで、ブルージーハード・ロックは実にうまいのです。とにかく、Derringerを聴いて欲しい。ちなみに、最近ではなんとアメリカン・ロックの古豪Steppenwolf(「Born To Be Wild」が有名な)のリードギタリストになっているのですね。


次にKenny Aaronsonですが、多分本格的デビューは1970年のDustDUSTRichie Wiseが率いたへヴィロックバンド(ついでにいうとドラムは後にパンクバンドThe Ramonesに加入するMarc Bell)なんですが、ベース暴れまくりですね。Kennyは後に、Sammy HagarMontroseVan Halen、ソロ)、Neal SchonJourney)、Michael ShrieveSantanaAutomatic Man)とのバンドHSASでもプレイしています。


最後はVinnyですが、彼の年はなれた兄Carmine AppiceVanilla FudgeCactusBeck Bogert & Appiceその他で名をはせた名ドラマー。本人もDerringerでの活躍後、一時Black Sabbathに加入し、その後Ronnie JamesDioのバンドDioを支えた名ドラマー。あるインタビューで「お兄さんの影響は?」と訊かれて、「ドラムを叩くようになったきっかけではあるけど、自分のスタイルとしては好きだったBlack SabbathBill Wardに近いんじゃないかな」という旨答えていたように記憶します(出典が示せず申し訳ない)。VinnyDerringerDioでの叩きっぷりを聴いてると、持ち味は手数の多さかなと思いますが、どうでしょうね。


さて、前置きが長くて済みません。要するに、Derringerというバンドは、Rickの名前だけに頼ったグループなんかじゃなく、アメリカン・ロックの猛者・巧者が集まったスーパーバンドだったのでは、と言いたいわけです。で、作品がつまらなければ何にもなりませんが、期待は裏切られません。(続く)