DON'T PASS MUSIC BY

"Louis XIV, finesse and force......."<Chroming Rose>

時代の産物を追う?(6)

 まだまだいきます。

(9)Watchtower『CONCEPTS OF MATH:BOOK ONE』(USA)
 あるディスクガイドに「キレたラッシュか、壊れたホールズワースか」と評されたことのある米国産プログレッシヴ・メタルバンド、まさかの新作。Ron Jarzombek(Gt)がこのところ元気なのは知っていましたが(メジャーな仕事として、Marty Friedmanのツアーバンドのメンバーなんてのもありましたね)、Doug Keyser(Ba)・Rick Colaluca(Dr)の“オリジナル・メンバー”もご健勝であらせられるのには歓喜あるのみでございます。

 Alan Tecchio(Vo)の声も良し。『CONTROL AND RESISTANCE 』を聴いた後、彼の歌うのをもっと聴いてみたくて、Hadesにまで手を出したんですよね。ホント、力量のあるミュージシャンと組んで、輝いて見せる人だ。このEPも、彼の歌が入るまでは「どっちかっていうと、Spastic Inkっぽいかな?」と思わせておきながら、「Technology Inaction」あたりになるともうこれは“Watchtower以外の何物でもない”感じになるからね。
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 何かに載った(たぶん『BURRN!』)インタビューでは、Ronはもっと練り上げてフルアルバムで出したかったみたいなことを言っていた気がしますが……この5曲でも相当な仕上がり。さきほどの「Technology Inaction」とか、「The Size of the Matter」は(あくまで彼らにしては、ですけど)ストレートなアグレッションを表現して爽快。かと思うと終曲の10分近い「Mathematica Calculis」はまさしくお得意の「数学的プログメタル」でクラクラさせる。通しで30分しかないのに、この心地よい疲労感はなに。

(10)春秋楽隊『THE LAST PAGE(最後一頁)』(China)
 中国のヘヴィメタル・バンド春秋楽隊(Spring And Autumn)のラスト・アルバム。ライヴ。春秋楽隊は、大陸初のヘヴィメタル・バンド唐朝楽隊の創立メンバーだったKaiser Kuo(Gt)が中心となって2001年に結成されたバンド。Kaiserは唐朝楽隊のセカンド・アルバム演義(1998)に出戻り参加していましたが、彼の趣味が反映されたものか、そのセカンドはプログレッシヴ・ロック色が濃くなっておりました。

 そういう彼が仕切った(らしい)本バンド、唐朝以上に「プログレ趣味」が出てまして、かつそこに「民族音楽」の風味がまぶされて仕上がったアルバム『春秋』(2006)はなかなか聴きごたえのある作品に仕上がりました。(ただ、北京在住のメタル専家の友人に言わせますと、「“メタル+プログレ+フォーク(民族色)」……”何でもありなのはわかるけど、でもそれが何なんだ?」だそうで。唐朝楽隊を絶賛する彼からすれば、その二番煎じにみえるところ、あるいは「コレっていう核が見えない」ところが物足りないのかもしれません。
 
 一理あるなあ……と思いつつも、正統派メタルをベースにした大陸バンドはなかなか探し当てられませんので、なんだかんだで私は好きだったり。ファーストアルバム『春秋』の「新的一天(A New Day)」や「天下(The Subcelestial)」、「伝奇(Legend)」なんかは時どき聴きたくなります。
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 で、『最後一頁』なんですが、CDとDVDの二枚組。CDの方はアコースティック・ライヴで、DVDの方は通常のメタルバンド・ライヴという構成。私の好きな「新的一天」「天下」はDVDの方でないと観られないのであまり再生できていないなあ。唐朝楽隊の「你的幻境(Your Vision)」も演奏されてます。あと、ドラマー刁磊が超載楽隊のメンバーであるからか、超載楽隊の「九片稜角的回憶」のカヴァーも披露されております。

 リード・ヴォーカルの楊猛は、ところどころ音程が不安定だったり本調子ではなさそうですが、いろいろなタイプの曲を歌いこなしております。「Your Vision」はKaiserが歌いますが、やや心許ない歌唱よりもやはりギターの腕前とセンスに耳が行きますな。

 うーん、スタジオ作の完成度を先に耳にしていると、少々きついところがあるのも確かかな。友人のいわんとするところも、ちょっとわかってきたし。本作はあくまでファン向けの記念品かもしれませんね。これから聴いてみようという方がいたら、『春秋』の方をよろしくお願いします。

(11)Last In Line『HEAVY CROWN』(USA)
 バンド名でおわかりのごとく、Dioのセカンドアルバム『THE LAST IN LINE』でプレイしていたメンバー三人――Vivian Campbell(Gt)・Jimmy Bain(Ba)・Vinny Appice(Dr)――が、Andrew Freemanというヴォーカリストを迎えて作った正統派メタル・アルバム。演奏のクオリティは言わずもがな見事な職人芸でありまして、安心して聴けてしまう。
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 AndrewはRonnie James Dioと似ているわけではないですが、力強さはなかなかのもの。冒頭のヘヴィな「Devil In Me」はほんの挨拶がわりですが、2曲目の潔い疾走曲「Martyr」なんかはかなりいい感じ。後者のVivianの華やかなギターワークも嬉しいし、前者でのVinnyの細かいロール・フィルを隙あらばぶち込んで来るドラミングも「流石」の一言。ミドルで始まって、テンポチェンジして疾走する「Starmaker」もいいなア。

 このアルバム、一つ一つの曲が(正統派メタルにしては)けっこうコンパクトな感じで、「I Am Revolution」とか「Already Dead」とかは3分台なんですね。(「Martyr」は2分台。)きちんと作りこめば、だらだら長くしなくても起伏のあるドラマティックな曲はいくらでもできるということですかね。個々の面子の楽器名人芸よりも、楽曲の品質の方に感銘を受けました。

(12)Simon Kirke『ALL BECAUSE OF YOU』(UK)
 Free・Bad Companyの名ドラマー、Simon Kirkeのソロ・アルバム。あれ、これは2017年作だったか……。ハードロック!ではなく、かなりリラックスした雰囲気の音。

 知っている人は知っているでしょうが、Simonはけっこう歌がうまいです。Paul Rodgersと同じバンドに居たら歌う機会はないでしょうけど……現に、Ringo StarrのAll-Starr Bandに居た時は、Bad Company「Shooting Star」やらFree「All Right Now」やらを、叩きながら堂々と歌っていましたしね。

 軽快な「All Because of You」、カラフルなドラミングが堪能できる「Warm Gulf Water」、Paul Rodegrsが歌いそうなBad Company風(?)のアコースティック・ソング「Maria」、得意の8ビート・ドラムを披露してくれる「Into the Light」、ギター弾き語り調の「Stay with Me」……
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 味のある曲は多数ありますが、おもしろいのはやっぱりコレ。Bad Companyの名曲「Feel Like Making Love」のカヴァー、なんですが、Simonがウクレレ弾き語るんですよ。途中からドラムとベース他も参加しますが、そこのリズムはレゲエっぽい(?)。コーラスの「♪Feel like makin' love……」っていうところは原曲に忠実ですが、オリジナル以上にハッピーで明るい雰囲気に。終盤歌メロに絡むように微かに入るチューバの音もユーモラスだったりね。この曲はYoutubeなんかで探せばすぐ聴けるようですから、アルバムに手を出す前にまずはお試しでどうぞ。

 1960年代から活動しているドラマーはそう多くなくなりましたが、サイモンおじいちゃんにはどうか末永く頑張ってほしいものです。
<続く>