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Matthew Fisher「Nut Rocker」(『A SALTY DOG RETURNS』1990)
「青い影」があまりにも有名なProcol Harumの、初代オルガニスト。ただし、この人は単なるプレイヤーではなく、プロデューサーとしても後に手腕を発揮した人です。プロコル・ハルムの3rd『A SALTY DOG』(1969)やRobin Trower『BRIDGE OF SIGHS』(1974)、Bobby Harrison『FUNKIST』(1975)といった仲間関係の作品だけでなく、NWOBHMのChariot『THE WARRIOR』(1983)に関与していたりするようですね。ピアノでのセッション・プレイも数多く(Lord Sutch & Heavy Frindsとか。David Bowieのツアーに加わったこともあったらしい)、プロコル・ハルムだけに収まる才ではなかったことがわかります。
『A SALTY DOG RETURNS』というタイトルは、前述の『A SALTY DOG』(フィッシャー氏がプロデュースしたプロコル・ハルムの名盤)を踏まえているようですが、内容はシンセサイザーを活用したオール・インストゥルメンタル。一時期Geoff Downes(Buggles/Asia)がこういう作品を出してたなあ。ロック的ではないし、「おもしろいか?」と聞かれるとそうでもない作品ですが……
Emerson, Lake & Palmerの「Nutrocker」(チャイコフスキーの「くるみ割り人形」を鍵盤ロックにアレンジしたもの)のカヴァーが入ってますね。あとは、「Peter Gunn」のパロディと思われる「Peter Grump」とかがちょっと耳を引くくらいかな。やはり、生楽器が使われていないのと、ご本人の味のあるヴォーカルがまったく聴けないのとがネックでしょうか。
マシュー・フィッシャーの偉業を知りたければ、やっぱり初期プロコル・ハルムのアルバムや70年代のソロアルバム(『JOURNEY'S END』など)を聴くのがよいでしょうね。というわけでこちらをどうぞ。