DON'T PASS MUSIC BY

ラーズ(メタリカ)が“RIOT Fire Down Under”のTシャツ着て御父上(92)と写真に納まってるのが超クール。

第60回「Bobby Harrison」(3)

 今回の主役Bobby Harrisonさんは、1939年生まれのドラマー兼ヴォーカリスト。次第に「ヴォーカリスト」にシフトしていきます(なおRobert Wyatt氏のような事情ではありません)が、初めに世に出たのはProcol Harumのドラマーとしてでした。名曲「青い影(A Whiter Shade of Pale)」を送り出した初期バンドメンバーだったのです。(ただし、ややこしいことに、「青い影」は別の人がドラムをたたいています。この辺の初期プロコル話は後日させていただきますね。)

 

 ほどなく、やはり同じくプロコル・ハルムのメンバーだったRay Royer(Gt)とともにバンドから離脱しまして、二人を中心にFreedomという新グループを結成しました。彼らはイタリア映画のサウンドトラックを制作するなどしますが、英国でブレイクには至りませんでした。(当時はサイケデリック・ロック路線だったそうなのですが、私は未聴のため評せません。)そうこうするうちに、ハリソンとロイヤー等とが対立するようになり、一旦バンドは瓦解します。

 

 その後ハリソンが再建に着手、今度はブルーズ・ベースのハードロック・トリオとして新生Freedomをスタートさせます。彼らの実質的デビューアルバムが次の『FREEDOM AT LAST』(1969年録音)ですが、これも英国ではすぐにはリリースされなかったそうです。Bobby Harrison関連作品の‟英国で「出ない」度”はなかなかに高くて、ちょっと驚かされますね。(このころから業界とかマネージメントとかの問題があったのでしょうか?)

 

Freedom『FREEDOM AT LAST』(1970)

  1. Enchanted Wood
  2. Deep Down In The Bottom
  3. Have Love Will Travel
  4. Cry Baby Cry
  5. Time Of The Season
  6. Hoo Doo Man
  7. Built For Comfort
  8. Fly
  9. Never Loved A Girl
  10. My Life
  11. Can’t Stay With Me
  12. Dusty Truck

<メンバー>

 Bobby Harrison(Vo, Dr, Perc

 Roger Saunders(Gt, Piano, Org, Vo)

 Walter Monaghan(Ba, Gt, Piano, Mellotron, Vo)

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 ベースが前面に出る、ゴツゴツした「Enchanted Wood」で幕を開けます。粘っこいギターとダブルヴォーカルも効果的な、ヘヴィ・ナンバー。次の「Deep Down In The Bottom」(Howlin' Wolfのカヴァー)ともども、“動き回るベース”を中心に、トリオのハードロックを追求(?)しております。CreamJimi Hendrixほどの異次元的クオリティはありませんが、特に後者で顕著なBobbyの“丸い(スクエアにならない)”ドラム・フィルは個性的。

 

 このアルバムの面白いところでもあり、(1969年のロック作品としては)中途半端なところでもあるのは、カヴァーが多いこと。さきの「Deep Down In The Bottom」(Willie Dixon作のハウリン・ウルフ曲)のほかに、同じメンツ(Dixon作・Wolf演)による「Built For Comfort」、The Beatlesの「Cry Baby Cry」、The Zombiesの「Time Of The Season」、Sonny Boy Williamsonの「Hoo Doo Man」、Ronnie Shannon作・Aretha Franklin演の「I Never Loved A Man」(ここではNever Loved A Girlと改題)。

 

 ビートルズの「Cry Baby Cry」はちょっと面白い。THE BEATLES(通称ホワイト・アルバム)に入っていた気怠いグルーヴの曲を、3人でカヴァーですと。メロトロンなんかも加えてイチゴ味にしてあるところは悪くない。ビートルズ後期のジョン曲は、結構ヘヴィ・ロック向きだったりするね。「Yer Blues」とか「I Want You」とか。

 

 それから、ゾンビーズの「Time Of The Season」を比較的素直にカヴァーしてる。意図はよくわからないけどね。多重ヴォーカルをバンドの売りにしたかったのかもしれない。この辺のテイクを聴いていても、ベースの存在感がデカいですな。

 

  ロック・ポップ畑にも目配りしてるかと思うと、ブルーズ・マニアみたいなこともやる統一感のなさが良い(?)。サニー・ボーイ・ウィリアムソン(1世)の「Hoo Doo Man」ていう選曲は渋いのでは。こういうやり方(‟オールド・ブルーズをハードに再生”)は、作法としては既にクリームが3年前に完成させたワザ故、新味はありませんが、まずまず軽快に仕上がってはおります。次の「Built For Comfort」は、後にUFOが初期に十八番にするのでも有名かな。やっぱりベースが目立ちながら淡々と進行するブルーズ・ロック。UFO『PHENOMENON』)より4年も早いよ。

 

 それから、アレサ・フランクリンのカヴァーね。最近(でもないか……)Aerosmith『HONKIN’ ON BOBO』で披露しましたが、とうの昔にFreedomがやってたのですねえ。ボビーが(例のソウル調で)暑苦しく歌えば、オリジナルに近い感じになるかも……という予想をうらぎり、思いの外淡々とした歌唱のためむしろフォーク・カントリータッチになっているのが面白い。(ヴォーカルもボビーじゃなくてウォルターかもしれん。)そうそう、カヴァーするならこのくらいやってくれないと。ゾンビーズを素直にやるよりも、面白いよね。

 

 さて、残りはオリジナル曲のようですが、どうでしょう。「Enchanted Wood」はさっき聴いたので次は、「Have Love Will Travel」ですか。ハンド・クラッピングも入る軽快なロック。シンプル(というか単純)な曲ですが、バンドのやりたいことが端的に伝わる気もするね。カウベルがポンポコ繰り出される「Fly」も、バンドの手作り感が感じられてむしろ良いし、こちらのような素朴なロックが本来はコアだったんではないですかね。(話題性は乏しそうですけど。)

 

 あとは最後の三連打。マイナー調の(憂い風味ありの)「My Life」は、ボビー関連作では珍しいかな。にしても、自分が歌わない曲でプレイするポール・マッカートニーばりに「動きまくるベース」がすごい。さすがに“歌を邪魔するレベル(笑)”かもしれないけど。その次の「Can’t Stay With Me」も、ハードロックというよりは、米国風フォークロックの趣ですか。

 

 この辺のオリジナル(「Fly」「My Life」「Can’t Stay With Me」+「Enchanted Wood」「Dusty Track」)は、Saunders/Monaghan/Hillmanのいずれかの組み合わせが作曲、となっています。前二者はバンドのギタリストとベーシストですが、Hillmanとは誰か。少し調べてみましたが、おそらくこれはBrian Hillmanさんだと思われます。ソーンダース・モナガン・ヒルマンの三氏は、The Washington D.C.’sというポップ・グループに在籍していたという共通点がありますので、ひょっとするとその頃からの曲の可能性が。……すなわち、「‟ボビー・ハリソン趣味全開!”ではありません」ということですな。ボビーさんはむしろブラック・ミュージックの再現の方に関心があったんでしょう。

 

 なんていうと、音楽の方向性がバラバラだったみたいに聞こえますが……締めの「Dusty Track」は、グッと引き締まったハードロックに仕上がっていて、これはナイス。アルバムから何か一曲、といわれたらまずこれを薦めますかね。自信作だったのか未完成だったからなのか、次のアルバムには同じ「Dusty Track」の長尺版(8分くらい)が再収録されますけれども。

 

 アルバムを通じて、テンポが似た曲が多いであるとか、方向性の焦点が絞られていない気がするとか(もっと疾走ったり停まったりしても面白かったと思う……)、トラックによっては未完成な印象も与えるとか(リズムのバタつき等)、いろいろ言えるアイテムではあるのですが、われらがファンキストBobby Harrison氏の英国復帰作としてはおもしろいと思います。

<続く>