DON'T PASS MUSIC BY

"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

第17回「Peter Frampton」(2)

【前編(続)】

<作品>
Ringo StarrRINGO STARR and HIS FOURTH ALL-STARR BAND1997,VHS
1.It Don't Come Easy
2.Act Naturally
3.The Devil Came From Kansas (Gary Brooker)
4.Show Me The Way (Peter Frampton)
5.Sunshine Of Your Love (Jack Bruce with Peter Frampton)
6.Shooting Star (Simon Kirke)
7.Boys
8.Baby I Love Your Way (Peter Frampton)
9.You're Sixteen
10.Yellow Submarine
11.A Salty Dog (Gary Brooker solo)
12.Norwegian Wood (Peter Frampton solo)
13.Theme From An Imaginary Western (Jack Bruce solo, featuring Peter Frampton)
14.Conquistador (Gary Brooker w/o Ringo)
15.I'm The Greatest
16.No No Song
17.I Feel Free (Jack Bruce)
18.All Right Now (Simon Kirke)
19.I Wanna Be Your Man
20.Do You Feel Like We Do? (Peter Frampton)
21.White Room (Jack Bruce)
22.A Whiter Shade of Pale (Gary Brooker)
23.Photograph
24.With A Little Help From My Friends
@( )内はリードシンガー。記載のないものはすべてRingo Starrによる。
メンバー
 Ringo StarrVo,Dr
 Peter FramptonGt,Vo
 Jack BruceBa,Vo
 Simon KirkeDr,Vo
 Gary BrookerKbd,Vo
 Mark RiveraKbd,Sax,Cho
 
イメージ 1

 どうですか、このお腹一杯のセットリストは。まあ、ある種の「懐メロ大会」ではあるんですが、リンゴも含めて全員が「現役バリバリ」なんで、後ろ向き感は無し。冒頭まずリンゴが2曲歌うと、Procol Harumのヘヴィな「The Devil Came from Kansas」に行って、お次はピーターの「Show Me The Way」。これでピーターさんが客を煽って大いに盛り上げたとこで、御大ジャック・ブルースが「Sunshine of Your Love」のリフを弾き始める。二人の弦楽器ソロ・掛け合いを満喫していると次はサイモンが叩きながら歌うBad Companyの名曲「Shooting Star」(オリジナルのPaul Rodgersの歌にはソウルフル度で敵いませんが、サイモン結構うたうまい)に。いい曲だなあと思っていると、リンゴのリードでオールドロックンロール(「Boys」)を全員で熱演。とまあこういう感じで、各人の見せ場がそれぞれ繰り出されるかと思うと、リンゴが――このメンツの持ち曲と比べると、「渋さ」より「陽気さ」が際立つような――古典的ロックンロール・ポップソングを持ち出すのですよ。たんなるコンピレーションCDとかで「この曲順」を聴いたら“チグハグ”だったでしょうけど、このAll Starr Bandは一体感が見事なんで楽しめちゃうんですよね。何よりも、リンゴ曲をやるときの面々の楽しげなこと!観客が大盛り上がりなのも当然ですね。

 

 なお、タイトルにもあるようにこれは「第4次オール・スター・バンド」です。リンゴの顔の広さは尋常じゃなくて、1989年にJoe WalshDr.Johnと始めた「第1次バンド」から、現在の「第12次バンド」(Steve LukatherTodd Rundgrenが参加)まで、数十人の大物――自分の持ち曲があるレベルの――が“友達・バンドメンバー”として加わってきているのですが、1997-98年にかけてツアーを行ったのが「第4次バンド」でした。サポート的なMark Riveraを除くと、はじめてメンバーがみな英国出身となったので、当時ちょっと話題になったみたいですが、それだけではなくて、歴代の中でも特に評価の高いオール・スター・バンドとなりました。わたくしも他のヴァージョンを詳しく知っているわけではないので比較はできませんが、この映像を観る限り、「このバンド」のこなれ具合は素晴らしいと思います。各人が持ち味をしっかり出しながらも、エゴは捨てられていますので。やっぱり、親分リンゴの人徳なんでしょうか?

 

 「Theme from An Imaginary Western」、「Conquistador」といったいかにもブリティッシュ・アート・ロックを感じさせる名曲が続いた後に、リンゴが出てきて「I’m the Greatest」(ちなみに故John Lennonがリンゴのために作った曲)や「No No Song」といったちょっと呑気で明るい曲に切り替わるところなんかもいいなあ。ピーター関連では、「Do You Feel Like We Do」という長尺の曲で、ピーターのギターソロはもちろん、ジャックのベースソロ、ゲイリーのピアノソロがたっぷり味わえるのが嬉しい。ステージ全体でもこの曲がハイライトですね。
 
得てしてこういう「スター勢ぞろい」モノって、どれだけ好きな面々が集まっていても、ダレてしまう部分があるものなんですが、そうならないのが本作。さっき申しましたように、最初に観た時わたくしはバンドの人を半分はロクに知らなかったのですが、それでも目が離せなかった。そういう良作なのですが……どうもDVDなどにはなっていないようですね。動画サイトなどを探すと部分的に出てくるかもしれませんが。

 

 あ、ドラムファンとしてまたたわ言を言っておきますか。このバンドでは、メインのドラマーはサイモンがつとめていまして、彼による“手数少な目、骨太重厚ビート”が全編で楽しめます。一方のリンゴは、曲によって「叩き語り」をしていたり、「ドラムのみ」参加していたりします。そういう曲では、ツインドラムになるのですが、サイモンとリンゴのビート感がちょっと違うので、不思議な感じになります。サイモンはやや後ノリ感がある人、リンゴはスクエアかちょっと前ノリ気味の人なんですよね。二人とも派手なフィルを入れるタイプじゃないので“邪魔しあう”ようなことはありませんが。わたくしは割と手数の多いドラマーに幻惑されやすい質の人間ですが、「シンプル派」の代表としてはこの二人を尊敬してます。サイモンは、有名どころではFreeの「All Right Now」の一切無駄のないドラミングが完璧ですね。そしてリンゴ。ドラマーとしての評価はもっとされるべきだと思いますなあ。The Beatlesの、特に後期(1966年以降)のドラミングははっきり言って凄いです。「プログレ」なんてジャンルがない時期に、ポール・マッカートニージョン・レノンが作ってきたへんちくりんな曲に涼しい顔して(かどうかはわかりませんが)ナイスなビートを付けてたんですからね。とりあえず「Rain」とか「I Am the Walrus」とか「You Never Give Me Your Money」とか聴いてくださいな。

youtu.be

 

 とまあ、このヴィデオはみどころ一杯。ロック初心者であった二十余年前のわたくしにとって教科書的なものともなりました。これ以降わたくしは、The Beatlesを聴き直し、Procol Harumを追い始め、Jack Bruceのソロ活動に関心をもち出し、そしてPeter Framptonの作品にも向かうこととなったのでございました。【前編完】