DON'T PASS MUSIC BY

"There is no wrong or right, and nobody's talking to anyone......"<Love Sculpture>

第60回「Bobby Harrison」(9)

 Procol Harumの正ドラマーはB.J.Wilsonです。オリジナル活動時代の全作品に関与したという物理的事実、前身のThe Paramountsにも居たという歴史的事実、そして彼のドラミングこそがプロコル・ハルムの楽曲を高次に引き上げたという芸術的事実によってそう断言されるのであります。彼こそ「このドラミングがすごい」で必ずとり上げたい名手中の名手なのですが……プロコル’sカタログ中数曲だけ、彼が叩いてないのがあるのです。

 B.J.の前に短期間在籍したBobby Harrisonによるものと、セッション・ドラマーによるものと。それらがまとめてが聴けちゃう便利な(?)コンピがこちら。※がついてるトラックが、Bobby Harrisonドラミングです。

 

Procol Harum『30TH ANNIVERSARY ANTHOLOGY』(1997)

<Disc3: Singles A & B Sides / Outtakes / Alternative Takes >

  1. A Whiter Shade Of Pale (A-Side)
  2. Lime Street Blues (B-Side) ※
  3. Homburg (A-Side) ※
  4. Good Captain Clack (B-Side)
  5. Quite Rightly So (A-Side)
  6. In The Wee Small Hours Of Sixpence (B-Side)
  7. A Salty Dog (A-Side)
  8. Long Gone Geek (B-Side)
  9. Monsieur Armand (Outtake)
  10. Seem To Have The Blues (Mostly All The Time) (Outtake)
  11. A Whiter Shade Of Pale (Previously Unreleased Stereo Version) ※
  12. A Whiter Shade Of Pale (Previously Unreleased Backing Track)
  13. Homburg (Alternative 1967 Re-Recording)
  14. Homburg (Previously Unreleased 1967 Stereo Version) ※
  15. Conquistador (Alternative 1967 Stereo Take)
  16. She Wandred Through The Garden Fence (Alternative 1967 Stereo Take)
  17. Magdalene (My Regal Zonophone) (Previously Unreleased Original 1967 Version) ※

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 おそらくバンド史上最高に有名な「青い影(A Whiter Shade of Pale)」、この完成ヴァージョンで叩いているのはBill Eydenというジャズ系セッションドラマーであります。軽やかにして影のような叩きぶり……この曲だけは、「ヘヴィ」じゃダメですから、仕方ないね。B.J.やBobbyさんはもっとR&B寄りのルーツを有するためか、「おもく」なっちゃうからね。

 ……と思ったら、このコンピには「未発表版」としてBobby Harrisonがプレイしたヴァージョン(トラック11)ていうのが入ってて、お宝お宝。Eydenさんと比べると、ビートもフィル・インも“丸っこい”感じね。ロックソングならイイ感じだと思いますが、この「クラシック」の中では少し違和感。

 逆に言えば、この「青い影」というのがいかに「ロック史に残る異形の曲」であるかということですな!本人たちも同じような曲を二度と作れ(ら)なかった、ということからもわかりますが、「ロック」のイディオムに収まらないのです。

 

 60年代当時リリースされたプロコル・ハルム音源でBobby Harrisonのドラムが聴けたのは僅か二曲、それもシングル・オンリーでありました。

 一つは、上記の大名曲「A Whiter Shade of Pale」のシングルB面だった「Lime Street Blues」(トラック2)。Gary Brooker(Vo, Piano)+Matthew Fisher(Org)+Dave Knights(Ba)+Ray Royer(Gt)+Bobby Harrison(Dr)。ジャム・セッション的にできたんじゃないかなと思わせる、60年代風R&Bナンバーで、ボビーのドラミングはベスト・マッチ。

 もう一曲は、クラシカル且つエレガントな「Homburg」(シングルA面、全英シングルチャート6位)(トラック3)。似てるわけではないですけど、雰囲気と作法・詞世界が共通してるので「青い影」のヴァリエーションにも思える。まあ、「You Really Got Me」に対する「All Day and All of the Night」(The Kinks)みたいなものだと思ってください(?)。

 いや、独立した曲として「Homburg」は名曲だと思いますよ。こちらのドラムがボビーさんだったとはちょっと気付かなかった、んだから私も大したことないな。演奏メンバーは「Lime Street Blues」と同一ね。“♪You better take off your homburg, ‘cause your overcoat is too long……”Keith Reidさんの詞は、バンドの個性そのものですが、(難しい言葉は使っていなくても)難解ですな。

 「Homburg」の「未発表ステレオ版」(トラック14)てのが当コンピの目玉の一つ(?)。(あ、紛らわしいけど「1967年再録版」(トラック13)はB.J.Wilsonがドラムだから間違えないでね。)ボビーのプレイした「ステレオ版」てのは、尺もだいぶ長いし、アレンジもやや異なります。何というか、「青い影」(完成版)に雰囲気がより近いのよね。演奏者はトラック2と同一。

 

 もう一つボビーのプレイが聴けるのが最後に入ってる「Magdalene(My Regal Zonophone)」(トラック17)。「未発表1967年オリジナル版」だそうです。メンバーはやはり一緒。こちらも、R&Bとかロックというよりも、クラシック的な端正な響きがたいせつな曲。世に出たのはB.J.Wilsonがプレイしたヴァージョンで、セカンドアルバム『SHINE ON BRIGHTLY』(1968年、名盤!!)に収録されます。特にボビーの個性は無し、かな。

 

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 やはりこの作風では、Bobby Harrison大活躍、とはいかなかったでしょうね。それに何といってもこのバンドには不動のヴォーカリストGary Brookerが居ました。ボビーさんにヴォーカリストとしての出番もないでしょうし、早晩離れることになったのも無理からぬことと思われます。今回聴いた5曲(上記)で共演しある意味同じ釜の飯を食ったRay Royerとともに、Freedomを結成!それが“ファンキスト”Bobby Harrisonの真の出発だったわけです。

 

 今回通して彼の関わった作品を聴いてみて、意外にといっては何ですが「良作」が多いことに驚きましたね。70年代前半のFreedomは英国ヘヴィロックの発展形態の一つを示していましたし、中期のSnafuは、その頑固でありながら幅広い音楽性がWhitesnakeの先達と呼ぶに相応しいものでした。ソウル・ファンク・ディスコの時代にまで人力音楽で対応して見せた(商業的にはアウトだったとしても)Nobody’s Businessの心意気まで含めれば、70年代のボビーはナカナカ素晴らしかった。そういえるのではないでしょうか。

<完>