262
Mekong Delta「Sphere Eclipse」（『INTERSECTIONS』2012）＊オリジナルは1992
私が好んで作品を集めるスラッシュ・メタル・バンドはそう多くないのですが、そういううちの一組。クラシック（西洋古典音楽）趣味＋バカテクと変拍子⇒おもしろスラッシュ、という個性に惹かれるのであります。ELPの向こうを張って――かどうか知りませんが――スラッシュ・メタルで『展覧会の絵』をやるとかそういうところね。主宰者Ralph Hubertがただものじゃないの。当ブログでも何度か話題にしているBurrn!関係のユーロ・スラッシュ本に彼のインタビューも載ってましたが、知的にメタルに取り組んでる稀有な存在という感じね。
さて、「Sphere Eclipse」の初出は1992年の『KALEIDOSCOPE』。アタマのインテンスなリフからしてもうクラクラするのですが、途中から入ってくる気味の悪い（これは褒めている！）ヴォーカル、何拍子なんだこれっていうリズム、後半になぜか現れる美麗なギターソロ。アルバム名が『万華鏡』なわけですが、この曲だけでももう目まぐるしく華麗なのであった。
実は私がこの曲に初めて触れたのは、2012年の再録アルバム『INTERSECTIONS』でした。これが初のMekong Deltaとの遭遇だったのですが……そちらのヴォーカリストは（前述のオリジナルとは）別の人で、むしろ正統的な歌唱（Bruce Dickinson風？）だったので、「Sphere Eclipse」を聴いたときも“気味の悪さ”よりも楽曲の構成と緩急にまず意識が向かいました。この感じ、何かと似てるよなあ。なんだっけ。
――しばらく唸ってから気づきました。これは、Yes「Heart Of The Sunrise」を想起させているのだと。いや、もちろんYesはこんなダークじゃないのですが、ベースとドラムの強烈なリフと、間に挟まれる静寂なパート、華麗なギター……「燃える朝焼け」を思い出さないわけにいかぬなあ。（似てるのは雰囲気であって、別に剽窃だとかいうのでは全然ありません。）ほかにこんなこと言ってる人はいないようなので、申し上げておく次第です。
まあそういうわけで、技巧的プログレが好きならスラッシュ・メタル・ファンでなくともイケるんでは、ということで挙げさせてもらいました。『INTERSECTIONS』で聴いた「The Cure」（オリジナルは1987年）もよかったなあ。聴いてて飽きのこないオススメのバンドです。
