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Wishbone Ash「That’s That」(『NUMBER THE BRAVE』1981)
さあどんどん見境なくいきましょう。いいと思ったら片っ端から。
先年亡くなったJohn Wettonさんですが、この人の仕事の幅広さもなかなか面白い。Mogul ThrashからFamily、そこからKing CrimsonかとおもったらUriah Heepへ、U.K.でプログレ回帰と思わせといてWishbone Ash、その後すかさずAsiaそしてソロ……。私は全部好きだからいいですけど、リアルタイムの人たちは困惑しなかったのでしょうかね。本人はいたって気楽なもんで「ナアに、ロックバンドなんてどこも同じだヨ」なる名言を残していますが。
さて、そんな彼のキャリアのうち、あんまりとり上げられてない気がするのがWishbone Ash時代。そりゃ確かに、前任のMartin Turnerみたいにバンマスだったわけじゃないし、自作の曲も一つしかとり上げられなかったし(今回のコレ)、仕方ないかもしれませんが。せっかくですから「なかったこと」にしないで聴いてみようよ、ねっ。
「That’s That」。ウェットン単独作で、割と珍しいアップテンポ・シャッフルのブギー。ウェットンのブリブリ・ベースがものすごいクリアに聴こえます。Andy PowellとLaurie Wisefieldのツインギターのキメも短く入りますが、アッシュらしさはそこくらい。続く「Roller Coaster」を含むほとんどの曲は“Upton-Powell-Wisefield”の共作だから、露骨にウェットンがよそ者みたいになっちゃって、「That’s That」はアルバムでは浮いてる感じもありますね。
ただし、ウェットン・ベースの貢献度は低くない。(ウィッシュボーン・アッシュのベースは無個性ではいけませんからねえ。)ラストの「Number The Brave」は鍵盤入りの程よい疾走曲でほんのりDeep Purpleっぽくもあるんですが、やっぱりベースがバキバキ言ってます。それに、クレジットが正しければキーボードを弾いてるのはジョン・ウェットンってことになってますからね、タイトル曲への貢献も大なのよ。