土曜回顧談(NAPES話)は先週で完結いたしました。この間に、「Yahoo!ブログがサービスを終了」という話が進んで、「移転をどうしよう?」と些か困惑気味ですが、7月ごろには方針を固めたいと思っております。
今週からは、「Teenage Dream」シリーズより前にやっていた「温故知新旧稿再録」の続きを掲載させていただこうと思います。「プログレッシヴ・ロック特集」がまだ途中だったので……
あらかじめのご注意(1)2006年3-5月に書いたものであります。(2)最初に出てくる曲目は、友達に配ったお好みテープの曲順でして、“それのライナーノーツ”のつもりでお読みいただきたく存じます。
では……
(以下旧稿再録)
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PROGRESSIVE ROCK Vol.2 variation-around the world
1. America*1967(The Nice『FIVE BRIDGES』)
2. Suite No.1*1968(Giles, Giles & Fripp『THE CHEERFUL INSANITY of GILES, GILES &FRIPP)
3. In the Dead of Night*1978(U.K.『U.K.』)
4. Children’s Concerto*1983(Moraz/Bruford『MUSIC FOR PIANO AND DRUMS』)
5. Beelzebub*1977 (Bill Bruford『FEELS GOOD TO ME』)
6. Hazard Profile Part1*1975(Soft Machine『BUNDLES』)
7. Hope for Happiness*1968(Soft Machine『THE SOFT MACHINE』)
まず、ビッグネームアーティストにも前史があるということを紹介したい。1.は、EL&P結成前のKeith Emersonがかつて率いていたThe Niceのシングルである。バーンスタインとドヴォルザークを大胆に引用してアレンジされたこの曲では、Emersonの鍵盤捌きが堪能できる。他のメンバーはLee Jackson(b)・Brian Davison(d)。クラシックをロックのイディオムで演奏する、そのハシリがThe Niceともいわれる。
2.は、King Crimsonの前身ともいわれるGiles,Giles & Frippの曲。GG&FにGreg Lake・Ian McDonaldらが合流してKing Crimsonになったのだが、音像は随分と異なる。GG&Fのアルバムは全体的にあまり緊張感を感じさせない比較的牧歌的な内容となっている。Michael Giles (d)・Peter Giles(b)・Robert Fripp(g)のトリオ&ゲスト。この曲ではクラシックギターを習得したFrippのギター(ある意味ネオクラシカルな速弾きの大先輩)が聴ける。
また、ビッグネーム出身者が、更に新しい音を求めるケースもある。3.は、John Wetton(b,元King Crimson等)・Allan Holdsworth(g,元Soft Machine等)・Eddie Jobson(key,vio,元Curved Air等)・Bill Bruford(元Yes,King Crimson等)の四人により結成されたいわばプログレ界のスーパーグループであるU.K.のデビュー作一曲目。各人の技量の確かさはいうまでもないが、楽曲も、わかりやすい歌メロとひねりの効いた器楽演奏とが組み合わされた秀逸なもので、バンドは人気を集めた。
ドラマーのBill BrufordはYes・King Crimosnと渡り歩いた人物であるが、自らのプロジェクトでも興味深い作品を残している。同じくYesに在籍したことのある(但し在籍時期は重なっていない)キーボーディストPatrick Morazと組んで、ドラムとピアノというアコースティック楽器の表現を追求したアルバム『MUSIC FOR PIANO AND DRUMS』からは4.を収録。
また自らのソロアルバム『FEELS GOOD TO ME』は、U.K.でも同僚となるAllan Holdsworthら(他のメンバーは、Jeff Berlin(b)・Dave Stewart(key)など)の全面参加を受けた高品質の作品になった。5.は同作冒頭のインスト曲で、各人の優れた技巧が楽しめる。
ところで、プログレ界には、そこでしか通用しないような奇妙な用語がいくつか存在する。「カンタベリー系」という言葉もその一つである。「カンタベリー系」という場合、通常英国産の若干ポップさを備えたジャズロックを指す。これは実はこのタイプのロックの総本山というべきSoft Machineの主要メンバーがカンタベリー地方出身だからなのであるが、名称としてはいささかわかりにくい [1]。とにかく、ある種のロック表現が一時期イギリスを中心に出てきたのである。その中心バンドたるSoft Machineは、アルバムごとにメンバーが入れ替わり、それに応じて音楽性も激しく変化させている、興味深いバンドである。
7.は初めて専任ギタリスト(Allan Holdsworth)を加えた彼らの8作目のアルバム『BUNDLES』の冒頭を飾った曲である。延々繰り返されるギターリフ、強靭なリズムセクション、途中から展開されるHoldsworthの超絶ギターソロと、インパクトのあるナンバーだ。当時、オリジナルメンバーはオルガニストしか残っていなかった(そのMike Ratledgeも、Holdsworth同様、本作後脱退する)。バンドは完全にジャズロック志向になっていたわけであるが、バンドの出発点は異なっていた。
7.8.9.はデビューアルバムの冒頭曲であるが、ひねりの効いた歌モノとしての性格が強く、ジャズ志向ではない(メンバー各人の演奏技術は非常に高いが)。初期Soft MachineはPink Floydと同じクラブに出演したりもしていたらしく、どちらかというとそちらのサイケポップに近いような印象がある。メンバーは、Ratledge(org)・Robert Wyatt(d,v)・Kevin Ayers(b,g)。
[1] カンタベリー系に括られているイギリス人ミュージシャンが「僕はカンタベリーなんて行ったことも無いけど」なんていう発言をしたりする。Black SabbathやJudas Priestを「バーミンガム系」と言ったほうがまだわかる。か?