Keepから何故か聖飢魔Ⅱにつながった話の続き。
*2013年のリイシュー版に基づく(注)
1.魔王凱旋
2.地獄の皇太子
3.ROCK IN THE KINGDOM
4.X・Q・JONAH
「日本に冠たるフュージョン・バンドの面々がヘヴィメタルをやったら?」っていう実例が聴けるなんて、無責任な音楽ファンにとってはありがたい話。「魔王凱旋」からして、メタル・インストのお手本のよう。派手なアーミングも雰囲気あるし。ギターの人は、やはりロックが凄い好きな人に違いない!とは少なくとも思えるはず。
で、そこから「地獄の皇太子」に入っていくわけだけど、こうして聴くと、やはりデーモン閣下はデビューしたての新人としては歌は上手ですね。すでに貫禄があるというか、この人(もとい、悪魔)のお陰でこのアルバムは「聖飢魔Ⅱのもの」になっている。
「地獄の皇太子」は、リフを刻むアクセントのつけ方がエース・ジェイルとは違って面白い。ギターソロ後半でドラムはツーバス連打になりますが、これはライデンのスタイルではあり得ない。というか、たいていのメタルバンドなら「(本テイクのように)こうする」でしょうね。ライデンが個性的なんだと解釈すべきでしょう。ギターソロ後半でタッピングを派手に入れるところも、このテイクならでは。
「ROCK IN THE KINGDOM」は、ミュージックヴィデオが作られていて(『歴代活動絵巻集BLOOD LIST』で観られます)、とっても楽しい。可愛らしい聖飢魔Ⅱパペットが出てくるのをお楽しみ下さい!?バンド(クレジットされた構成員)が演奏しているところも出てきますが、音源の方はファースト・アルバムのこちらになっているのがご愛敬。リズムのカギを握る‟弾むベース”が凄い。
そして、いまとなってはレア曲中のレア曲(?)「X・Q・JONAH」。executioner(死刑執行人)に当て字を施したタイトル、ってことは有名かな。まさしくブイブイ言ってるベースがカッコいいミドルテンポのヘヴィ・ナンバー。中間にギターソロが無いんだなあ、と思うと、終盤に猛烈なギターソロが切り込んできますよ。
「悪魔組曲」は、後のヴァージョン(99年の『BLACKLIST』)の端正さに比べると、ベースがけっこうブンブンいってドライヴ感を出してるところに魅力があるかも。ゼノン和尚のプレイとは好対照というか。どちらも美味しいけどね。「Stormy Night」のベース・ランはインパクトあり。ギターソロは、1分40秒辺りの速弾きこそギョッとさせてくれますが、全般にメロディアスな仕上がり。ギターが妖しいエフェクトを繰り出す「悪魔の穴」も、たぶん本来の姿通りギターのみで再現されてるはず。
で、そこからの疾走インスト「Kill The King Ghidrah」はカッコイイの一言。後半のギター・ソロは熱い。「Dead Symphony」は、おそろしい歌詞に相応しい禍々しいヘヴィ・リフが繰り出される。フレット・ノイズが生々しいな。おお、サンダー・シンセサイザーは最初から使ってたのね。
「Battler」は、私にとってはCD版『BLOOD LIST』(1999)のオープニングであり、またVHS『オール悪魔総進撃』のダミアン殿下登場楽曲なもんで、「終わり」というより「始まり」感があるんだけど……
そして、終演後のデーモンの語りが最高すぎる!“♪ちゃんと歯を磨いてからだぞ!”。語りと演奏が終わった後、トラックの一番最後に(ごく小音量で)“♪ハイOKでーす!”云々……って入っているのが微笑ましい。こういうお遊び、私は好きです。
ってなわけであっという間の29分。和田アキラさん達Prismの方々(が演奏していたとして……)も、これだけ歪んだ音でガンガンやるのはおもしろかったんじゃないでしょうか。それから、やっぱり信者は“♪死にたくなければ、毎晩寝る前にこのレコードを聴くのだ!”と。毎晩はともかく、ちゃんと聴かなきゃね。
フュージョンを取り上げたつもりが、気が付けばまたしても自分の好みのアーティスト話に捻じ曲げてきてましたね。
(注)なお、私が初めて本作品を聴いたのは二十年ほど前でした。地元の公共図書館で「カセットテープ」(!)版の製品を借りて聴いた。その頃はまだヘヴィメタル全般への耐性も十分でなかったので、(且つ、聖飢魔Ⅱのユーモアもあんまりわかっていなかったので、)「Dead Symphonyの歌詞、怖っ!」とか思って、すぐには愛聴するには至らなかったのでしたね。「地獄の皇太子」はカッコイイと思ったんですけどね。