(3)Billy Joel「Close to the Borderline」(『GLASS HOUSES』1980)
ドラムが目立つ曲、っていうのもそこそこあるんですが、これもその一つ。ラフというかルーズというか、そういう感じの演奏で、ジャムセッション的なものから生まれた曲なんじゃないかと思うのですが。Libertyのタムワークとライド・シンバルの刻みが良い。ギターソロのところでは、左右のチャンネルから交互に音が飛び出すのも格好いい。David BrownとRussell JavorsというBillyバンドのギタリスト両名が頑張っています。『GLASS HOUSES』というアルバムは、全米一位となった「It’s Still Rock and Roll to Me」(邦題:「ロックンロールが最高さ」。邦題が最高さ)を収めるなど「ロック色」が強めなんですが、中でもこの曲は抜きんでていますね。
このアルバムからBillyがよくやるのは「It’s Still~」のほかに「You May Be Right」「Sometimes A Fantasy」などが多く、この曲はやってくれてないんですが……。あ、「Sometimes A Fantasy」も結構激しいアップテンポのロックですが、こちらもライヴ盤ではワイル度5割増し(by Liberty)、『КОНЦЕРТ』などで聴けます。
(4)Billy Joel「Pressure」(『NYLON CURTAIN』1982)
わたくしは、いまでこそBilly Joelのオリジナルアルバムをすべて集めていますけれども、最初はベスト盤から入りました。一番最初は、中学生のころ家族が見つけて買ってきてくれた『GREATEST HITS VOLUME Ⅰ& VOLUME Ⅱ』(1985)の「カセット・テープ」(!!)いやもう当時は嬉しくて嬉しくてそれこそテープが伸びるほど聴きましたよ。当然テープなので、飛ばして聴いたりはできません。おかげで全曲じっくり聴くことになったのですが、ベスト盤だとどうしてもヒットしたバラード調のものがフィーチュアされやすいんですよね。「もっと激しい、アップテンポのはないの?」と思っていると、B面4曲目で「Pressure」っていうのが掛かるんです。ドラムがドン・バン鳴る中で、なんか変な音(後になって「シンセサイザー」というのだと知った)が妙に耳に残るフレーズを奏でる。歌もなんか変わってて、歌詞カードを見てもよくわからなかった。とにかく印象に残ったんですね。Billy Joelというと「Just the Way You Are」とか「Piano Man」のイメージから入ってたもんで、曲も詞も「激しい」のがあるとはわかっていなかった。それを覆してくれたのが、この曲のドラミングと、シンセの「ピコピコ」と、Billyの「pressure!」というシャウトだったんです。
この曲はオフィシャルのライヴ音源がなかなか出ず(上述『КОНЦЕРТ』にも収録無し)、「聴きたいのにい!」と歯噛みしておりました……すると、1995年に『JOURNEY TO THE RIVER OF DREAMS』というVHSとCDのセットが出まして、そのVHSの方に「Pressure」のライヴ版(ドイツでのコンサート)が収められていたのですね。Billyはもう立派なおじさんでしたが、良い曲は良い!ドラムのLibertyも元気でしたしね。
(5)Bob James「Thoroughbred」(『H』1980)
前編最後は、Billy Joel以外のアーティスト。ジャズ・キーボーディストのBob Jamesの作品にLiberty Devittoは参加してます。アルバム『H』では、この曲と「Shepherd’s Song」で、Liberty Devitto(Dr)、Doug Stegmeyer(Ba)、David Brown(Gt)というBillyバンドの三人が演奏。「Shepherd’s Song」はDavid Brownのアコースティックギター・ソロをフィーチュアした静かな曲で、ドラムもおとなし目。「Thoroughbred」はストリングスのやホーンの入る、なんかの映画音楽みたいな一曲。独特のリズムを刻んで楽曲を推進するドラムが彼らしいといえば彼らしい。
(まだ続く)