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"You are the part that you're giving......"<Renaissance>

第16回「特集:このドラミングがすごい①Liberty DeVitto」(3)

<達人の物語(後編)>
1992-3年頃、Billyが当時の新作RIVER OF DREAMSを制作していたとき、DeVittoは録音メンバーから外れます(「Shades of Grey」という曲のみ収録されましたが)。これは、プロデューサーとなったDanny Kortchmarの意見を容れてJoelが「グルーヴ・タイプ」のドラマー(Steve JordanZachary Alford)を採用したためで、当時Libertyは「18年一緒にやってきたのに、いきなり“別のドラマーで行く”と言われた、動揺して当然だよ」と語っています。Libertyの心中は察するに余りありますが、アルバムRIVER OF DREAMSはそれはそれで成功したのも事実かな。アルバム完成後のツアーでは無事(?)Libertyが復帰しています。この時のことをBilly自身はこんな風に語っていました。
 
Dannyはグルーヴ・タイプ、クロック・タイプのドラマーを欲しがった。Libertyとは長年やってきて、彼なりの「バンドへの指揮(conduct)」もわかっていたんだけどね、彼はやっぱりロックンロール・タイプのドラマーなんだ。彼にとって大事なことはどれだけ強く(how hard)叩くかってことだったから……。だいたい、彼が叩くとスティックもドラムも粉々なんだぜ、コンサートの後なんか。『エンドース契約してるんだろ、壊れないドラムをもらえよ!』ってよく言ってたもんさ。
 
当然、ドラマーが変わったからレコーディングは大変ではあったよ。SteveZacharyも名人だから最後はうまくいったけど。」
 
実に興味深い。そういわれてLiberty DeVittoの演奏風景を探してみると、確かに凄いパワフル。(それも、歳をとるにつれてどんどんアグレッシヴになっているようなのですね。)当然Billyはそれがわかっていたはずですから、彼自身が求めていたのが、「器用なドラマー」よりも「力強いドラマー」だったことがわかるわけです。

 

LibertyBilly2006年くらいから後袂を分かちまして、その後共演はありません。この時期のBillyバンドではChuck BurgiHRファンには、後期Rainbowにいた人、というのがわかりやすいでしょうか?)がドラマーとなっていますが、ライヴ盤を聴くとLibertyとの違いが際立ちます。後で紹介する「Angry Young Man」なんかだと、Chuckのドラミングが手堅いのに対し、Liberty版(ライヴ)は隙あらば激しいフィルをぶち込んでいて、ほとんどハードロックになってます。正確に言うと、Chuckは、Libertyの叩いたオリジナルのスタジオ版を正確に再現しているので、Libertyの方が“ステージで変えてしまっていた”わけですが。

 

ちなみにLiberty DeVittoは、Billy Joelバンド以外でもBob James, Carly Simon, Meat Loaf, Phoebe Snow,Karen Carpenter, Mick Jones, Pat Traversの作品などに参加してもいます。最近は若手The White Ravensの作品にゲスト的に参加したり、かつてのBilly Joelバンドの仲間(Richie CannataRussell Javors)たちとThe Lords of 52nd Streetbandというのを組んで往年のヒット曲を演奏していたりするようです。
 
<思い出話>
 わたくしが「ロック」というやつを聴き始めた当初から、ドラムはこの人のを聴いていたわけですので、ある意味「基本」です。彼のたいていのドラムフレーズは頭に残っておりますね。先ほど紹介した対談動画でLibertyが「俺は独学でドラムをやった。手本にしたのはあなた(The RascalsDino Danelli)だから、あなたが先生ってわけだね」と語っていましたが、それに倣えば、Libertyさんはわたくしのドラムの先生の一人、ということになりますかな。

 

 やはり印象に残っているのは、東京ドームで実際に彼を観た時です。1998年、Billy JoelElton Johnがジョイントでライヴをやるツアーの一環として来日したのですが、そのうち331日の東京ドームに、音楽の好きな高校の先輩と一緒に観に行きました。最初BillyEltonだけが出てきて、ピアノ二台で演奏を始めたので、静かに始まったのですが……冒頭の3曲が終わって、コンサート前半のBilly Joelパートになると、Billyバンド(90年代版)が登場。わたくしはまずドラムのところを探します……と、いたいた!髪こそ些か後退しているようですが、がたいの大きなおじさんがタンクトップで構えていますよ。一曲目は何かな。当時Billyは新譜を出さなくなってすでに五年、枯れた感じになってたりするのかという不安も事前にはあったのですが、Libertyを帯同させているならと期待は高まります。そしてついに、来たー「Prelude/Angry Young Man」!コレだよ、俺の観たかった「ロックンローラーBilly Joelは!」と、むやみに感動。あとはもう狂喜乱舞でありました(誇張)。

 

 おそらくこれが、日本で「動くLiberty DeVitto」を観られた最後の機会だったんじゃないかなと。ぎりぎりのタイミングで貴重なものを。(と思っているのはわたくしくらいかもしれませぬが。)
 
<名演紹介(後編)>
6Billy JoelRunning on Ice」(THE BRIDGE1986
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 1985年のベスト盤発表を境に、Billyは作風をちょっと変えてきたところがありました。それまであまりパーソナルなことは歌ってこなかったんですが、この辺りからそういう詞的世界が出てきます。またこのアルバムには自身のアイドルRay CharlesSteve WinwoodTraffic他の)、あるいは新進気鋭の実力派Cyndi Lauperとの共演ソングもあります。といってゲスト頼みというわけではなく、「This Is the Time」「A Matter of Trust」「Temptation」など単独曲の出来も冴えていて、例によって捨て曲なし。ちょっとアップテンポの曲が少なめですが、その穴を埋めて余りあるのが、1曲目のこの「Running on Ice」。高速のピアノフレーズにLibertyの派手なドラムが乗っかる、彼らの十八番ですな。86年のツアーではやっていたようですが、その後あまり再演されず、オフィシャル音源ではライヴを聴けないのが残念。
(続く!)