DON'T PASS MUSIC BY

ラーズ(メタリカ)が“RIOT Fire Down Under”のTシャツ着て御父上(92)と写真に納まってるのが超クール。

第59回「Automatic Man」(3)

 Automatic Manはアルバムを2枚しか残しておりませんので、前回まででおしまいです。ただ、ちょっとここで触れときたい関連作もある。ので、まずこちらをどうぞ。

 

BayetéTodd Cochran『WORLDS AROUND THE SUN(1972)

  1. It Ain't
  2. Free Angela (Thoughts... And All I've Got To Say)
  3. Njeri (Belonging To A Warrior)
  4. I'm On It
  5. Bayeté (Between Man And God)
  6. Eurus (The Southwest Wind)
  7. Phoebe [Bonus]
  8. Shine The Knock [Bonus]

<メンバー>

 Bateyé(Vo, Key)

 James Leary Ⅲ(Ba)

 Thabo Vincar(Dr)

 Hadley Caliman(Flute, Tenor Sax)

 Mguanda(Soprano Sax)

 Wayne Wallace(Trombone)

 Mulobo(Trumpet, Flugelhorn)

 Oscar Brashear(Trumpet, Flugelhorn)

 Bobby Huthcerson(Vibraphone, Marimba)

 

 Automatic Manの中心人物となるシンガー兼鍵盤奏者BayetéTodd Cochran)のソロ・アルバム。分類としてはジャズなんだと思いますが、前にどこか(たぶんCD専門店の売り文句)で、“クラブ・ミュージック”の範疇でも持て囃されたとか言ってました。

 「It Ain’t」は、比較的ストレイトなジャズ・ナンバーじゃないですかね。冒頭から入ってくる笛(フルート)や、中盤にソロをとるベースが印象的です。

 次の「Free Angela (Thoughts... And All I've Got To Say)」のファンキーな反復、といったあたりが“クラブ・ミュージック”的なんでしょうか。音色も含めて、このドラムは好きですな。朴訥ながら呪文っぽい“♪Free……Angela!”がポイントですが、これはAngela Davis釈放運動の一環なのでしょうか。後追いリスナーはこういう点に弱いな。

 「Njeri (Belonging To A Warrior)」はフルートとヴィブラフォンが響き渡るメロウなジャズ・ナンバー。バイエテは脇役……でもなかった、しっかりピアノを弾いていますね。

 4曲目は再びリズミカルというかダンサブルというか、反復ドラミングが楽しい「I’m On It」。短い曲ですが、歌詞有りでバイエテが歌っているようです。後半でフリーな感じの(?)サックスが入ってきますが、ロック・ファンの感覚からすると、King Crimson『EARTHBOUND』におけるMel Collinsを思い出しました。

 

 「Bayeté (Between Man And God)」は、“テーマソング”なんでしょうか。お得意のパーカッシヴ・リフレインをフィーチュアしたジャズ。エレクトリック・ピアノの響きを中心に電化マイルス・デイヴィス『BITHCES BREWあたり)風味。1972年でしたら、スタイルとして新しいということはもうなかったと思いますが、演奏自体は一丸となったなかなかのもの。12分弱の長尺。バイエテ・ヴォイスは聴けない(インストだから)代わりに、達者なピアノ捌きが堪能できます。終盤の“時計が時を刻んでるような(?)”ハイハットが何とも言えず好き。

 オリジナルアルバムのラストは「Eurus (The Southwest Wind)」。鍵盤も管も重厚ですが静謐な雰囲気(?)のエレクトリック・ジャズ。無茶苦茶強引に言えば、この浮遊感をデフォルメして早回しすると、Automatic Manとリンクしなくもない……わけはないか。やっぱり歌の有無は印象が違いますしなあ。

 

 この後に私の持ってるCD版ではボーナスが2曲ついてます。「Phoebe」は、やっぱりMiles Davis(ただし電化時代より前の)っぽいハイパーなジャズ・ナンバー。ウッドベースのソロから管楽器の独奏へつなぐ流れも“いかにも”な感じ。

 

 「Shine The Knock」は一転、反復リズム強調型の楽曲。こっちの系統がBayetéの個性ですかね、やはり。12分以上あるロング・トラックですが、後期Soft Machine好きのわたくしにはご馳走。英国ジャズ・ロックと接点はないと思っていましたが、Ian CarrのNucleus辺りと通ずる味わいがあるのは、要するにルーツが同じだからなのですかね。“電化マイルス”の影響力畏るべし、でございます。

 

 最後に余談。この作品はゲットするのに時間がかかった、という話を。Automatic Manを聴いてからかなり経った頃、タワーレコード某店のジャズ・コーナーをうろうろしていたら、「Todd Cochran」という棚があって、「もしや!」と思って覗いたら本作が一枚だけあったのです。そのときは、どういう作品かわからなかったし、輸入盤としてはちょいと値が張る部類だったので、いったん保留にして帰りました。

 で、作品について調べてみて「あのバイエテの作品で、世評も高い」とわかったので、「やはり聴いてみたい」と思ったのですが……しばらくあってから次にその店を訪れた時にはもうなくなって(売れたんでしょうか?)いたのですね。ごくまれにこういうことがありますわな。

 通販のような方法を探れば、入手はまだ可能な(廃盤とかではない)アイテムだったのですが、「出会っておきながら逃した」現品をあとから通販で買うのって敗北のような気がして(誰に?何の?)、その作品のことは忘れることにしました。

 それでまただいぶたってから、今度はDisk Unionの「店頭在庫検索」――非常に便利で重宝したサーヴィスでしたが、現在は廃止――で何の気なしにTodd Cochranと入力したら、某店にあると出たのでした。中古未開封というので、コンディションは問題なし。その店舗はちょっと遠かったのですが、都心に用のある時に無理やり寄ることにしました。

 店頭在庫に「ある」となっているのだからすぐ見つかるだろうと思って探しましたが、見つけられず。仕方なく店員さんに「トッド・コクランかバイエテ名義で、ワールドなんとかっていう(ひどい話で、作品名を正確に覚えていなかった小生)のありませんか?」とたずねると、少し時間がかかりましたが探し出してくれまして、ようやく入手叶ったのがコレだったのです。こんなの、誰が褒めてくれる話でもないから、自分で書きました。

<続く>