DON'T PASS MUSIC BY

ラーズ(メタリカ)が“RIOT Fire Down Under”のTシャツ着て御父上(92)と写真に納まってるのが超クール。

第59回「Automatic Man」(2)

 ファーストアルバムを完成させたバンドは、ライヴも何度か行ったそうなのですが――聴いてみたい!――、当人たちにとって満足のいくものではなかったようです。ステージで「あの」音を再現するには、テクノロジー面で限界もあったとかで。いまだったら事情は異なったでしょうが……。それに加えて、音楽の方向性をめぐる分裂やバンドの財政状況悪化などが諸々重なり、結果的にオリジナル・ラインアップは崩壊してしまったとのことです。

 ただし、そこでAutomatic Manは終わらなかった。去っていったMichael Shrieve(Dr)とDoni Harvey(Ba)に代わって、Glenn Symmonds(Dr)とJerome Rimson(Ba)を迎え、セカンド・アルバム『VISITORS』を制作したのです。

 ジャケットを見るとファーストとよく似ておりますが、内容はだいぶ印象が変わりました。マイケルが抜けたためかわかりませんが、プログレ・アートロック色は薄まり、明快なファンク・ロック色が前面に出ています。かくいう私も、かつては(?)頭の固いプログレ・ファンだったので、「捻りの無い作風」におもしろさを見出せずにいたものでした。

 ……ただし、それは低品質という意味では全くないのでありまして、全曲を手掛けたBayetéのペンは相変わらず冴えていますし、職人Pat Thrallの好プレイもあちこちで聴けるのであります。

 

Automatic Man『VISITORS』(1977)

  1. Give It To Me
  2. Live Wire
  3. So You Wanna Be
  4. Y-2-Me
  5. Visitors
  6. Here I Am Now
  7. Daughter Of Neptune
  8. What's Done

<メンバー>

 Bayeté(Vo, Key)

 Pat Thrall(Gt)

 Jerome Rimson(Ba)

 Glenn Symmonds(Dr)

 

 前作のテイストは、例えば7曲目「Daughter Of Neptune」で味わえます。これは職人たちの競演によるファンキーなジャズ・ロックでして、パットのギターもなかなかのアピール具合。リズム的なキメも多く巧みで、なかなか楽しいナンバーになっています。

 あるいはまた表題曲の「Visitors」も、16分のリズムを絶妙に絡めた、コンパクトながら聴き所の多い歌ものジャズ・ロック。Glenn Symmondsさんのドラミングは、前任者のものとはもちろん異なりますがこれはこれで美味しい――マイケル的“ワイルドな独創性”は感じにくい反面、ハイハット遣いの緻密さなどで本作の楽曲をよく盛り上げてる――です。

 うむ、いわゆるB面(5-8曲目)の方に関する限り、前作との連続性が決して感じられないものではないですな。6曲目「Here I Am Now」も、多重的ヴォーカル処理はファースト由来の手法だし、弾むリズムの中で――後任ベーシストJerome Rimsonさんの仕事ぶりはDoni Harveyさんに負けていない、と思う――適宜うわもの(鍵盤とギター)が印象的フレーズを塗すなんてのもバンドの個性でしょう。歌詞の世界に関しても、ファーストからバイエテさんは割と率直なラヴソング的なものを歌ってきてましたから、そんな激変ではないですしねえ。

 

 おそらく、アルバムの印象を「プログレじゃなくなっちゃった!」と思わせているのはA面の方なんでしょうね。1曲目「Give It To Me」は、強靭なリズム+浮遊感あるうわ物という(あくまで)彼らの十八番でありながら、アートロック的ギミックや華美さを排してややシンプルに仕上げたために、「ふつうの(?)ファンク・ロック」扱いされてしまったのかもしれない。……というか、かつて私はそう決めつけてちゃんと聴いていなかった。反省します。いま聴けば、後半でドラム・パーカッションはけっこうおもしろいこともしてるし、スルーしちゃいけませんでした。

 次の「Live Wire」も、なんだかよくありそうなAORみたいに思えて以前の私は軽んじていたんですが、特にリズムまわりのアプローチは面白いじゃないですか。パットさんのギターソロも味があるし、何といっても全編大活躍のジェローム・ベースがカッコいい。

 最もポップなのは「So You Wanna Be」ですかね。なんか、程よく雨降りの日に聴くと雰囲気の合いそうな……っていうのはただの主観ですが、良くも悪くもスタイリッシュで、アートロック的硬派さは(敢えて?)封印。次の、テンポを抑えた「Y-2-Me」ともども、軽妙な歌モノとしての仕上がりを優先したものでしょうか。この辺りの曲群は、高品質には違いないですが、個性的かどうかはちょっとよくわからない、です。(プログレファンよりAORファンの判定をいただきたいところ。)

 

 そして、最後の「What's Done」。本作中最長(6分30秒)のトラックとなっておりますな。ああ、これも前作の味わいを感じさせるところありです。前半こそ“華々しさ”(ドラムの金物と鍵盤の音色)控え目なのですが、中盤のシンフォニックなパート、終盤のなだれ込み疾走パートはなかなか熱い。これぞAutomatic Man流アートロックじゃありませんか。

 してみるってえと、やっぱりB面は実は前作からそんなにかけ離れちゃいなかった。本作への一般的な評価は、A面のポップ(?)な印象が強過ぎたことによるのでしょうね。

 セカンド・アルバムはあまり成功を収められず、結局バンドは1977年の内に解散することになっています。勿体無い……かどうかはわからない。というのも、個々のメンバーはそれぞれに活躍を続けていったからでありまして、Automatic Manという器がなくても(実は)困らなかった節があるのですな。ただ、彼らが作品の残した味わい(特にファースト)は、本人たちも含めて「余所ではなかなかやらない」ことでしたから、やっぱり貴重なんですけども。

<続く>