2018年作品、まだまだございます。
ニューヨーク・パンクの伝説Televisionの元ギタリストのソロ作品。前にも彼のライヴ盤『REAL TIME』(1987)をご紹介しました第21回「Television」(3)が、その時は「いい意味でオールドスクールな人」と申し上げました。最新作ではどうなっているのでしょうか?
(8)Richard Lloyd『THE COUNTDOWN』(USA)
- Wind In The Rain
- Smoke
- So Sad
- Run
- Whisper
- I Can Tell
- Just My Heart
- Something Remains
- Down The Drain
- Countdown
<メンバー>
Richard Lloyd(Gt, Vo)
Dave Roe(Ba)
Steve Ebe(Dr)
Joe Bidewell(Key)
お、ちょっとTelevision(『MARQUEE MOON』期の)っぽい曲から始まったぞ。「Wind In The Rain」のリフ、全盛期Billy Ficca風のドラム(Steve Eve氏)など、確信犯でしょこりゃあ。リチャードの声こそおじちゃん(もはやおじいちゃん?)だけど、40年前のマジックを思い出させてくれるねえ。
でも、彼の得意領域は次の「Smoke」みたいな――私なりの言い方でいうと中後期キンクス風の――シンプルなロックなのね。ロイドさん!の温かいギターが聴ける。次のスロウな「So Sad」なんかもそうね。ブルーズ的な基本に忠実でありながら、ここぞという箇所に感情の破裂を生じさせるような名演。
「Run」はタイトル通り、程よく“走る”。シンプルなロックソングだけど、短いギターソロの中に「オッ?」と思わせるフレーズを入れてきた。次の「Whisper」もアップテンポのロックンロールですね。リチャードさんの作るリフ、別に凝ってたりするわけじゃないけど、印象的でイイのね。ギターのトーンも良いんだよ。“♪Oh, forever……”その後の「I Can Tell」(Johnny Kidd & The Piratesとは関係ありません)も元気なリフがリードし、例のトーンでギュワっと決めるソロが入るギター・オリエンテッド・ロック。
少しやわらかな曲もある。「Just My Heart」はゆったり和める雰囲気です。歌いっぷりもギターワークも、やっぱりDave Daviesっぽいと思えるなあ。次の「Something Remains」はアコースティック・ギターの響きが美しい。リズムやテンポでの遊びやトリックはほとんどありませんが、それだけにコード進行と歌メロの妙がよく味わえる。老練ヴォイスも逆にイイですよ。
「Down The Drain」は些かハード&ヘヴィな曲。後期ビートルズ(の、ジョン・レノン)がやってたみたいな歪みヘヴィ・リフも出てくれば、得意の引っ掛かり満載ソロもしっかりと。歌は(こっちは)Ray Daviesみたい。ラストの「Countdown」は、本当に“カウントダウン”がテーマで、テレヴィジョン風のちょっと捻ったリフとサステインが強烈。このアルバムを通じてドラムとの絡みは素晴らしいものがありますが、この曲は集大成という感じも。これまでやや影の薄かったキーボード(Jie Bidewellさん)も大貢献。ここでの歌いっぷりはIggy Popっぽくもあるよね。ま、イギーはそもそもキンクスの影響を受けてそうだから、当然か。ちなみに、「カウントダウン」ていうのは「地球を離れる」っていう設定のようです。“♪Goodbye!”
意外にもテレヴィジョンっぽいところを見せてくれたり、やっぱり頑固一徹なストレート・ロックにこだわってたり、思った以上に活力を感じさせてくれる作品でありました。いつも言ってる話ですが、私のような人力音楽派には頼もしい守護神がここにもご健在であった、と。よかったよかった。
<続く>