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"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

第54回「Vernon Reid & Masque」(2)

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 ヴァーノン・リードさんは、リヴィング・カラーでデビューした方だとばかり思ってましたが、活動はもっと早くからだった。米国のジャズ系ギタリストビル・フリゼール氏とのプロジェクトは1984年末、ここではギターの他にギター・シンセだのバンジョーだのエレクトリック・ドラムだの……をプレイしてマルチタレントを披露しておりました。わたし、こんなアルバムいつの間に買ってたんだろう……

 

Bill Frisell & Vernon ReidSMASH & SCATTERATION』(1985)

  1. Landscapes In Alternative History
  2. Size 10 1/2 Sneaks
  3. Amarillo, Barbados
  4. Last Nights Of Paris
  5. Burden Of Dreams
  6. Dark Skin
  7. Fr, Fr, Frisell
  8. Small Hands
  9. Black Light

<メンバー>

 Bill Frisell(Gt, Gt stnth etc.)

 Vernon Reid(Gt, Gt stnth etc.)

 

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 前回言及した作品に比べると、かなりジャズ寄り(フリー・ジャズっていうの?)。打ち込んだ音やシンセサイザーも全面展開です。リード作の「Landscapes In Alternative History」にしてもフリゼール作の「Size 10 1/2 Sneaks」にしても、電子ドラム(?)の扁平な音像が……実は苦手です。後者におけるヴァーノンのバンジョー・プレイはちょっと楽しめるんですけどもね。

 

 むしろ「Amarillo, Barbados」あたりの“ドラムレス”な方が寛げます。クラシカルな小品、といった趣で。その次のヴァーノンのバンジョー入りの「Last Nights Of Paris」は、ビルもアコースティック・ギターを手に対面的空間音響演奏。これも適度に妙で、適度に心地好いや。

 

 「Burden Of Dreams」はヴァーノン・リード単独演奏のよう。シンセのバッキングからギターソロまでね。お得意の強引な速弾きや、ギュワっとしたトーンが頭をもたげております。一曲飛ばした「Fr, Fr, Frisell」(何ちゅうタイトルだ)は逆にビル・フリゼール単独演奏。ヴァーノン曲以上にフリーで奇天烈。

 

 「Dark Skin」に戻りますと、こちらは二人の共演。電子ドラムの工事作業みたいな音が耳につきますが、ストラクチャーははっきりしてて聴きやすい……かも。打ち込まれて機械的な中にねじ込まれるヴァーノン・ギターが人間存在を主張する。そんな大げさなもんじゃないか。二人演奏モノには「Small Hands」もありますが、こちらは浮遊感を演出する(?)シンセサイザー全面の楽曲。ラストの陰鬱というかドゥーミーな「Black Light」は、フリゼール作&リード演奏(らしい)。

 

 実験的、というほどマニアックな音作りではないですけども、要するに全編“リラックスしてくつろいでね!”っていうの「じゃない」アルバムでした。いや、こういうのも時にはわるくないとおもいますよ。私としては、Living Colourのファンクなイメージが先にあったので、「こういうのもあったの?」と驚けた作品でありました。

<続く>