ヴァーノン・リードさんは、リヴィング・カラーでデビューした方だとばかり思ってましたが、活動はもっと早くからだった。米国のジャズ系ギタリストビル・フリゼール氏とのプロジェクトは1984年末、ここではギターの他にギター・シンセだのバンジョーだのエレクトリック・ドラムだの……をプレイしてマルチタレントを披露しておりました。わたし、こんなアルバムいつの間に買ってたんだろう……
Bill Frisell & Vernon Reid『SMASH & SCATTERATION』(1985)
- Landscapes In Alternative History
- Size 10 1/2 Sneaks
- Amarillo, Barbados
- Last Nights Of Paris
- Burden Of Dreams
- Dark Skin
- Fr, Fr, Frisell
- Small Hands
- Black Light
<メンバー>
Bill Frisell(Gt, Gt stnth etc.)
Vernon Reid(Gt, Gt stnth etc.)
前回言及した作品に比べると、かなりジャズ寄り(フリー・ジャズっていうの?)。打ち込んだ音やシンセサイザーも全面展開です。リード作の「Landscapes In Alternative History」にしてもフリゼール作の「Size 10 1/2 Sneaks」にしても、電子ドラム(?)の扁平な音像が……実は苦手です。後者におけるヴァーノンのバンジョー・プレイはちょっと楽しめるんですけどもね。
むしろ「Amarillo, Barbados」あたりの“ドラムレス”な方が寛げます。クラシカルな小品、といった趣で。その次のヴァーノンのバンジョー入りの「Last Nights Of Paris」は、ビルもアコースティック・ギターを手に対面的空間音響演奏。これも適度に妙で、適度に心地好いや。
「Burden Of Dreams」はヴァーノン・リード単独演奏のよう。シンセのバッキングからギターソロまでね。お得意の強引な速弾きや、ギュワっとしたトーンが頭をもたげております。一曲飛ばした「Fr, Fr, Frisell」(何ちゅうタイトルだ)は逆にビル・フリゼール単独演奏。ヴァーノン曲以上にフリーで奇天烈。
「Dark Skin」に戻りますと、こちらは二人の共演。電子ドラムの工事作業みたいな音が耳につきますが、ストラクチャーははっきりしてて聴きやすい……かも。打ち込まれて機械的な中にねじ込まれるヴァーノン・ギターが人間存在を主張する。そんな大げさなもんじゃないか。二人演奏モノには「Small Hands」もありますが、こちらは浮遊感を演出する(?)シンセサイザー全面の楽曲。ラストの陰鬱というかドゥーミーな「Black Light」は、フリゼール作&リード演奏(らしい)。
実験的、というほどマニアックな音作りではないですけども、要するに全編“リラックスしてくつろいでね!”っていうの「じゃない」アルバムでした。いや、こういうのも時にはわるくないとおもいますよ。私としては、Living Colourのファンクなイメージが先にあったので、「こういうのもあったの?」と驚けた作品でありました。
<続く>