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"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

第54回「Vernon Reid & Masque」(1)

youtu.be

 あるとき、元Creamで有名なJack Bruceのアルバム『A QUESTION OF TIME』(1989)を入手しまして、聴きました。もう二十年近く前だったと思いますが、アルバムの内容は知らず、中古店で見つけて「ジャック・ブルースってクリームの人だよね?」程度の認識で手に取ったのです。

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 で、再生してみるとまず「Life On Earth」という曲……ベースがアクティヴに動く疾走曲で、“♪There’s got to be a way of getting’ out this place we find we’re in…….”云々という歌も活発なハードロックだったのですが、さらにインパクトがあったのがギターソロ。指癖もあるんでしょうがものすごい速弾きで、若干アウトするところも含めて「こりゃダレよ?」となったわけです。調べたら、Vernon Reidという人だと。へえ、Living Colourっていうのをやってる人なのかあ。

 

 そのアルバムではこの一曲しか参加していないようでしたが、ヴァーノンさんはジャック・ブルース御大のアルバムに時々ゲスト登場しておりまして、2012年にはついにがっちり組んでSpectrum Roadというユニット・アルバムを送り出します。レイジーな私はヴァーノン作品をまめにチェックしてたわけじゃないんですが、ご本人のお名前を冠した新作が出た時は流石に気になって手を出しました。それが次の作品であります。

 

Vernon Reid & Masque『KNOWN UNKNOWN』(2004)

  1. Known Unknown
  2. The Slouch
  3. Brilliant Comers
  4. Strange Blessing
  5. Outskirts
  6. Down And Out In Kigali And Freetown
  7. Sidewinder
  8. Voodoo Pimp Stroll
  9. Time
  10. Flatbush And Church
  11. Ebow Underground(Excerpt)
  12. X The Unknown

<メンバー>

 Vernon Reid(Gt, Gt synth)

 Hank Schroy(Ba)

 Marlon Browden(Dr)

 Leon Gruenbaum(Key)

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 全編インストゥルメンタルなんですが、ジャズ・フュージョンというにはロックっぽい。といってJoe Satriani教授ほどロックらしくもない、不思議な手触りの作品です。オハコの指癖(ですよね)全開の速弾きもバリバリ。ファンキーでダンサブルなバッキング・パターンの上でヴァーノンさん独特の、ギュルっとエグいトーンのギターが聴き手を刺激する……っていうのが基本線。

 

 それでいて、あたたか味が感じられるのは、全編で組み入れられたキーボードのお陰ではないでしょうか。そのオルガン風の音色もあり、70年代のロックっぽい感じに仕上がってます。「Known Unknown」、「The Slouch」なんかは特に、ね。

 

 かと思うと、70年代ジャズ・フュージョン色のある「Brilliant Corners」や「Strange Blessing」なんかも来ます。必殺のムチャなギター速弾きは聴いてて思わず笑みがこぼれてしまいますが、前者中間のピアノソロや後者シンセ・ソロも要チェック。

 

 ジャジーで軽快な「Outskirts」、インテンスなリズムの打ち込みを背景に浮遊感のあるフレーズを紡ぐ「Down And Out In Kigali And Freetown」、ロック・ン・ロールというかジャズ・ン・ロールとでもいえるような「Sidewinder」(鬼速弾き有り)と、バラエティに富んだ楽曲を収録していますが、どれもこれもなかなか心地よいのはドラムお陰であろう。マーロンさん、ナイスです。

 

 「Voodoo Pimp Stroll」ではDJ Logicという方がスペシャル・ゲストとしてクレジットされています。前半の不思議音(ターンテーブル?)のところなんでしょうか。楽曲のストラクチャーは得意のロック系フュージョンで、後半にギターソロが控えています。

 

 スロウでメロウに展開するブルージーな「Time」は、少し心穏やかに聴けるかな。イヤ、ギターソロは相変わらず攻め立ててきますなあ。終盤のオルガンサウンドが和ませてくれますが。次の「Flatbush and Church」は、静謐なバックの上でギターがギューンと鳴ります。「Ebow Underground [Excerpt]」なるギターソロが短く挟まって、終曲へ。

 

 最後の「X the Unknown」は、本アルバムの基調たるダンサブルビート+シンセ音響・残響+ヒューマンな炸裂ギターからなる、どちらかというとプログレ寄りな楽曲。

 

 シンセサイザーを大々的に用いても、人力演奏の手作り感は強く感じさせられるのだ、っていうことを教えてくれる一枚でございました。

<続く>