大型専門店のジャズ・フュージョン・コーナーで新譜として見かけたのはこちら。当方ジャック・ブルースを敬っているのでまずそれが気になり、「トニー・ウィリアムスに捧げているとは素晴らしい」と意気に感じ、3番目に「しかもギターはヴァーノンじゃん」。
どうにも(本企画からすると)不純な動機でありました。
Spectrum Road『SPECTRUM ROAD』(2012)
- Vuelta Abajo
- There Comes A Time
- Coming Back Home
- Where
- An T-eilan Muileach
- Vashkar
- One Word
- Blues For Tillmon
- Allah Be Praised
- Wild Life
<メンバー>
Jack Bruce(Ba, Vo)
Cindy Blackman(Dr, Vo)
Vernon Reid(Gt)
John Medeski(Key)
ジャズ界の超絶ドラマーTony Williams。彼の偉業はこんなところで語りきれるものではありませんが、私のようなロック好き野郎にジャズの魅力を教えてくれたことに対しては感謝にも感謝を重ねなければなりません。特にTony Williams Lifetime名義で残してくれた作品の数々は、「ジャズとロックの垣根なんてこうやったら乗り越えられるのよ」というお手本のようなものでした。
本作の4・6は『EMERGENCY!』(1969)、1・9は『TURN IT OVER』(1970)、7は1970年のシングル、2は『EGO』(1971)、10は『BELIEVE IT』(1975)、3は『THE JOY OF FLYING』(1979)で原曲が聴けます。(5・8はSpectrum Roadの面々が作ったりアレンジしたりした新作。)
トニー・ウィリアムス・ライフタイムにロック側から参与した最初の人物はJack Bruceだったといってよいでしょう。(もっとも、ジャックの音楽的素養はCreamで想像されるほど“ロック”一辺倒でなく、もともとジャズにも強かったわけですが。)彼が入った『TURN IT OVER』は、後にRonnie Montroseらが加わって仕上げられた『THE JOY OF FLYING』などと並んで、“ロックに寄ったトニー”が聴ける傑作となっております。ジャックの側からいえば‟バリバリのジャズ寄りプレイ”が聴けるというのも、本作のポイント。
トニーが生前組んだギタリストも、John McLaughlinやAllan Holdsworthなどそれぞれ一国一城の主と言い得る名手ばかりでした。そのスロットに誰が収まるのか。たぶん、器用なギタリストはほかにいっぱいいると思うんです――ジョンの曲はジョン風に、アランの曲はアラン風に弾ける職人さんもきっといることでしょう――が、そうではなくて「自分のカラー」を押し出す(押し出せちゃう)Vernon Reidと一緒にやったというのがおもしろい。その手があったか、という感じ。
初代のLarry Young以来、ライフタイムではキーボーディストも重要でしたから、そこにヴェテランJohn Medeskiさんが入るのは納得。いちばんたいへんなのは当然トニーの代わりになんなくちゃいけないドラマーですが、これはCindy Blackmanさん。『ANITHER LIFETIME』(2010)っていう、やはりTony Williamsへのトリビュートのような作品も出してますが、後程そのプレイを堪能させていただきましょう。ちなみにシンディさんはかのカルロス・サンタナ氏とご結婚されまして(本作を録るちょい前)、Cindy Blackman Santanaとなられております。
アルバム『SPECTRUM ROAD』については次回、じっくりと聴いてまいりましょう。
<続く>