DON'T PASS MUSIC BY

"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

第40回「“HEAVEN & HELL”」(22)

あけましておめでとうございます。

5John Lawton[Rebel/Zar]STARGAZERLIVE YOUR LIFE FOREVER1982/1990Germany
 やはり音楽は人が作るものですから、あるバンドでいい仕事をしている人が他のところでもやっていたと聞けば、当然その音を聴きたくなるものでしてね。たとえばこの人、John Lawtonさん。英国の名バンドUriah HeepDavid ByronLead Vo)の後釜として加入、FIREFLY以降数作で素晴らしい歌唱を披露していた方ですが、その人が後年やっていた音源がまとめて聴けるとなれば素通りは出来ませぬ。
 
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 本作はRebelというバンドとZarというバンドの音源のカップリング。Zarについては、ヘヴィメタルのディスクガイド本に紹介があった(ただしJohnさんはゲスト参加のみのサード・アルバムFROM WELCOME……TO GOODBYE)のですが、前者については情報が無かった。ちなみになぜこの二枚が抱き合わせなのかと言うと、Johnさん歌唱という共通点以外に、両バンドのギタリストがTommy Claussさんであるということも理由の模様。要は、TommyのソングライティングとJohnの歌唱が揃うとこんなに良いよ!っていうことだと思います。
 
 で、実際良いの。まずRebelSTARGAZER(ちなみに本カップリングCDが初CD化ですって)ですが、スピーディーなタイトル曲で幕開け。150秒辺りからのトミーのソロも頑張ってて素敵ですが、比較的シンプルな曲を格上げしてるのはやっぱりジョンの堂々たる歌唱。Ronnie James Dioの力強さとKlaus Meineの透明感を併せ持つ、みたいな評され方を見たことがありますが、概ね同意。次の高速二拍三連「Broadway Nights」も、パターンはよくあるものながら、ジョンの歌うラインのメロディアスなこと。四分のリズムで押し進む3曲めの「Give It All You Got」も格好良い。キーボードによる味付けもいい仕事。もうこの三曲だけで文句ないよ。ブックレットにつけられたコメント(John Lawton, Oct.2001)によると、「もともとこのアルバムは(プロデュースだけのつもりで)自分で歌うつもりじゃなかったんだ」といいますが……歌ってくれて正解。
 
 「Iron Horse」は少し明るめの疾走曲、やはりキーボードがきらびやかにしてくれます。その一方で「Surrender」のようなドラマティックなバラードもちゃんとあるよ。……しんみりさせたところで、シャッフルの軽快ロッキン「Innocent And Wild」を入れてくるんだから、油断ならないが。
 
 そしてここで「Hold Your Head Up」(オリジナルはArgent)か。この曲好きなアーティストは多いね。古巣Uriah Heepも後に(シンガーはBernie Shawになってから)録音してるしね。ラストの「Wings Of Fire」はKey主導の華麗なイントロから入るプログレ風大作。トミーのアコースティック・バッキング+エレクトリック・フレーズも良い感じで、コーラスの「♪Wings of fire~」のくだりのジョンさん歌唱は荘厳。堂々たる幕引き。
 
 さて後半のZarは、約10年後のJohn & Tommy再タッグ作。こんどはJohnさんは歌唱に専念し、プロデュースはTommyJerry SchaefferKey)が担当。「Heart Of The Night」はやはり上質なメロディアス・ハードロック、腕利きTommyのフラッシーなソロも健在だし、キーボードも効果的。Johnの歌唱も強力そのもの。(ジョンさん2000年代・2010年代にもいろいろなプロジェクトで音源を出されてますが、そこでも全然衰えてない……ホントに凄いシンガーですね。)
 
続く「Line Of Fire」も「Live Your Life Forever」も……つまり全編を通じて、これでもかと繰り出される美麗旋律と超絶技巧と絶品歌唱。少しリズムパターンの違う「Cry Of The Nile」やアコースティック・ギターが導くバラード「The Look Of Your Eyes」が好いアクセントになりながら、ラストに最もアグレッシヴな「Fire And Ice」が配される流れも完璧。そう、全体に、Rebelの時よりもいっそう洗練された感じがありますかね。
 
むかしは勢い重視のリスナーだったのでRebelばっかり聴いてましたが、こうやって聴き直すとZarも良いですなあ。いま何の気なしに調べたら、Zar2016年にもアルバムを出していましたね。(Johnは居ません、念のため。)さすがにファーストアルバムとは雰囲気が違うようですが、トミーさんお元気で嬉しい限り。