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"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

第49回「Quatermass Ⅱ」(3)

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<関連作品>

 やっぱり、本家の話もしとかないとまずいやね。Quatermass(Ⅱじゃないオリジナルのほう)は、1970年に唯一のアルバムを残している英国ハードロックの名グループ。メンバーはPete Robinson(Key)+John Gustafson(Ba, Vo)+Mick Underwood(Dr)。さよう、ギタリストはおりません。編成だけだとEmerson, Lake & Palmerと同じですが、こちらはハード・ヘヴィなロックファンの支持が厚い。なんといっても、「Black Sheep of the Family」が――正確には彼らのオリジナルではなくて、PeteのChris Farloweバンドでの元同僚Steve Hammondの作品なんですけど――Rithcie Blackmore’s Rainbowにカヴァーされたことが大きい。ヘヴィなリズムに浮遊感もある鍵盤フレーズが重なり、キャッチーでパワフルな歌が乗っかる、という名作ですね。

 

 アルバム『QUATERMASS』には、この曲以外にも個性的なハードロックが数々収められていて、楽しめるのでございます。

 

Quatermass『QUATERMASS』(1970)

  1. Entropy
  2. Black Sheep of the Family
  3. Post War Saturday Echo
  4. Good Lord Knows
  5. Up on the Ground
  6. Gemini
  7. Make up Your Mind
  8. Laughin Tackle
  9. Entropy(Reprise)
  10. One Blind Mice [bonus]
  11. Punting [bonus]

<メンバー>

Pete Robinson(Key)

John Gustafson(Ba, Vo)

Mick Underwood(Dr)

 

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 冒頭の「Entropy」はPete作・演奏の浮遊感ある鍵盤インスト。そこから、ピコピコ(?)効果音的な音が鳴ったかと思うと、くだんの名曲「Black Sheep of the Family」に突入。Peteのオルガンさばきのお陰で、プログレ風味もあり。「ロックンロール動物園」のところで書きましたが、オリジナルのソウルフルなChris Farlowe版やロニー&リッチーによるRainbow版より「このヴァージョン」が“ブリティッシュ・ハード”って感じで好きなんですよね、わたし。1分50秒からの転調するところも、派手ではないですが得難い面白さ。

 

 「Post War Saturday Echo」っていうのは、オルガンがシンフォニックなフレーズを奏でるところから幕を開ける大作。第2のパートは、静謐でスロウなバッキングの上、ジョンの歌が遠目に響く。3分20秒辺りから器楽のヴォリュームが上がり、跳ねるようなリズム(ワルツ調?)を繰り出してきます。4分30秒辺りからの間奏部分では、Peteがピアノにスイッチ、ジャジーな味わい増幅。5分45秒辺りからはオルガンをバックに歌いあげられていき、6分40秒辺りで第3の(?)パートへ。またテンポが変わり、旧いコンピュータゲームのような音を鍵盤がピコピコ発する裏では、ベースとドラムが変拍子を支える。6分40秒からまたしても「ワルツ風+遠い歌」に戻り、スロウ・ジャズ調に終わ……るのかと思いきや、ラストだけはELPみたいになったね。

 

 John作の「Good Lord Knows」は、Peteの鍵盤(チェンバロ風?)をバックにジョンが歌い、ストリングスが加わってくる厳かな曲。

 

 ジョンの作曲の幅ってすごいね。聖歌のような4曲目のあとに、トリオの本領発揮のハードナンバー「Up On The Ground」が続くんですが、これも彼の作。オルガンの活躍具合い、ヘヴィなリズム、張りのある歌……ELPというより初期Uriah HeepとかAtomic Roosterと共通する味がありますな。それと、Johnは歌もうまいけど、ベースの腕も凄いです。のちにIan Gillan Bandなんかでも名演を残してくれますがね。

<続く>