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やっぱり、本家の話もしとかないとまずいやね。Quatermass(Ⅱじゃないオリジナルのほう)は、1970年に唯一のアルバムを残している英国ハードロックの名グループ。メンバーはPete Robinson(Key)+John Gustafson(Ba, Vo)+Mick Underwood(Dr)。さよう、ギタリストはおりません。編成だけだとEmerson, Lake & Palmerと同じですが、こちらはハード・ヘヴィなロックファンの支持が厚い。なんといっても、「Black Sheep of the Family」が――正確には彼らのオリジナルではなくて、PeteのChris Farloweバンドでの元同僚Steve Hammondの作品なんですけど――Rithcie Blackmore’s Rainbowにカヴァーされたことが大きい。ヘヴィなリズムに浮遊感もある鍵盤フレーズが重なり、キャッチーでパワフルな歌が乗っかる、という名作ですね。
アルバム『QUATERMASS』には、この曲以外にも個性的なハードロックが数々収められていて、楽しめるのでございます。
Quatermass『QUATERMASS』(1970)
- Entropy
- Black Sheep of the Family
- Post War Saturday Echo
- Good Lord Knows
- Up on the Ground
- Gemini
- Make up Your Mind
- Laughin Tackle
- Entropy(Reprise)
- One Blind Mice [bonus]
- Punting [bonus]
<メンバー>
Pete Robinson(Key)
John Gustafson(Ba, Vo)
Mick Underwood(Dr)
冒頭の「Entropy」はPete作・演奏の浮遊感ある鍵盤インスト。そこから、ピコピコ(?)効果音的な音が鳴ったかと思うと、くだんの名曲「Black Sheep of the Family」に突入。Peteのオルガンさばきのお陰で、プログレ風味もあり。「ロックンロール動物園」のところで書きましたが、オリジナルのソウルフルなChris Farlowe版やロニー&リッチーによるRainbow版より「このヴァージョン」が“ブリティッシュ・ハード”って感じで好きなんですよね、わたし。1分50秒からの転調するところも、派手ではないですが得難い面白さ。
「Post War Saturday Echo」っていうのは、オルガンがシンフォニックなフレーズを奏でるところから幕を開ける大作。第2のパートは、静謐でスロウなバッキングの上、ジョンの歌が遠目に響く。3分20秒辺りから器楽のヴォリュームが上がり、跳ねるようなリズム(ワルツ調?)を繰り出してきます。4分30秒辺りからの間奏部分では、Peteがピアノにスイッチ、ジャジーな味わい増幅。5分45秒辺りからはオルガンをバックに歌いあげられていき、6分40秒辺りで第3の(?)パートへ。またテンポが変わり、旧いコンピュータゲームのような音を鍵盤がピコピコ発する裏では、ベースとドラムが変拍子を支える。6分40秒からまたしても「ワルツ風+遠い歌」に戻り、スロウ・ジャズ調に終わ……るのかと思いきや、ラストだけはELPみたいになったね。
John作の「Good Lord Knows」は、Peteの鍵盤(チェンバロ風?)をバックにジョンが歌い、ストリングスが加わってくる厳かな曲。
ジョンの作曲の幅ってすごいね。聖歌のような4曲目のあとに、トリオの本領発揮のハードナンバー「Up On The Ground」が続くんですが、これも彼の作。オルガンの活躍具合い、ヘヴィなリズム、張りのある歌……ELPというより初期Uriah HeepとかAtomic Roosterと共通する味がありますな。それと、Johnは歌もうまいけど、ベースの腕も凄いです。のちにIan Gillan Bandなんかでも名演を残してくれますがね。
<続く>