The Tangent『A SPARK IN THE AETHER: The Music That Died Alone Vol.2』(2015)〈再掲〉
1. A Spark In The Aether
2. Codpieces & Capes
3. Clearing The Attic
4. Aftereugene
5. The Celluloid Road
6. A Spark In The Aether, Pt. 2
7. San Francisco Radio Edit [bonus]
※全曲Andy Tillison作
※"Aftereugene" inspired by "Careful With That Axe,Eugene" by Pink Floyd.
メンバー
Andy Tillison(Key, Vo)
Jonas Reingold(Ba)
Morgan Ågren(Dr)
Luke Machin(Gt)
とにかく1曲目「A Spark In The Aether」が気に入ったもんで、勢いでアルバムを入手してしまったんですが、他の曲もたいへんよろしゅうございました。組曲仕様の2曲目は、冒頭の数分間(「We’ve Got The Music」と題されたパート)にまずは古き良きUKプログレのエッセンスが詰め込まれてて、聴いててニヤニヤしちゃう。Andyの多重鍵盤捌き(ELPとYesとGenesisを同時に再現してるみたいな)も美味ですが、歌をしっかり聴かせてくれるのがやっぱり良い。“♪Struggling with the Hammond,and playing 'til my fingers bleed”! 7分過ぎからのギターソロも、“Francis Dunnery風味”で私は好き。12分半ありますが、ダレたところ無し。最後に冒頭のパートのリプライズとなって終焉。
フルートとオルガンから始まる「Clearing The Attic」は、Focus風かな。(Focusについては当ブログ第7回「Focus」(1)他でもご紹介しました)“♪I'd live to fight another day, I can find another way!”というコーラスが意外に力強いぞ。ジャジーな鍵盤ソロから、(やっぱりアッカーマン先生を意識してるのかな?の)ギターソロに繋ぎ、明けにリズムチェンジという王道パターン。
前曲からそのままつながってアコギとフルートが活躍の「Aftereugene」に。Pink Floyd「Careful With That Axe, Eugene」にインスパイアされた、との表記がありますが、ピンク・フロイド初心者同然の私にはよくわからない。後半のサックス暴れが凄い。
5曲目がまたしても組曲で、21分半に及ぶ大作。歌詞をみるに、“America”が1つのテーマになっているようです――なんか固有名詞もいっぱい出てくる――が、なにぶん長いので全体の把握はむずかしい。第1楽章「The American Watchworld」の曲調は、やはりFocusの長編作品を思わせるゆったりとした出だし。第2楽章「Cops & Boxes」との中間部分から疾走を始め、器楽が存分に暴れまわってから歌に突入し、締めのセリフは“♪America, do we see you right?”
第3楽章はテンポを落としたピアノメインの「On The Road Again」……“♪We're on the Road again! We're on the Road”と繰り返すコーラス部分は8ビートのロックンロール(風)。この、いかにもなベースラインが心地好いよね。静謐な始まりの第4楽章「The Inner Heart」は、アコースティック楽器の他に、バックで鳴っている虫の鳴き声(秋の虫みたいな、効果音?)が耳に残る不思議な曲。その余韻に浸っていると、急に賑々しくなって、第5楽章「San Francisco」が開幕。“♪Oh San Francisco, what a world! What a place! What a life!”って……何だろう?背景の音はファンク風味ね。高揚を誘うベースのラン、敢えてちょっとチープにした(のかな?)シンセ・サウンド。最後に第6楽章「The American Watchworld(Reprise)」、最後はしんみりと“♪And we all wish we could grow up like him. In America.”と囁いておしまい。文字で説明するのは苦しいや、やっぱり聴いて下さいね。
本編最後は「A Spark In The Aether, Pt.2」。始まりは1曲目とはまったく異なったスロウでムーディーな演奏から。2分過ぎくらいからはジャジーなリズムの上で管楽器がまず仕事。次いでギターソロがひとしきり。また管メインに戻って……ってこの辺のバックのドラミングがなかなか凄いね。5分過ぎからはオルガンとピアノの鍵盤ソロ……お、「A Spark In The Aether」のメインフレーズが戻ってきたぞ!“♪Tell our friends what we found, searching fora spark in the aether”この高揚感、It Bitesの「Once Around The World」を聴いたときを思い出すなあ。通しで聴いて満足できる名盤、その締めくくりに相応しい。
7曲目はボーナストラックで、「The Celluloid Road」の第5楽章が抜き出されたもの。細かく聴き比べてないけど、特にヴァージョン違いとかではない、かな。ここだけ抜粋すると、「このファンクネスは一体!?」ってなること請け合い。この曲はやっぱりベースがいいなあ。
さあて、ついでに関連作品を挙げときましょうや。
Andy Tillison Diskdrive『MURK』(2011)
1.Axis Bold As Fish
2.Energise*
3.Mysterious Swamp
4.Luft
メンバー
Andy Tillison(Performer)
Luke Machin(Gt*)
Andy Tillisonって人は才人だと思ったもんですから、ソロ・プロジェクトだというAndy Tillison Diskdriveも聴いてみた。『MURK』はこのプロジェクトでは第二作だそうです。所謂ジャーマン・プログレのような、電子音楽が基調、ですかね。The Tangentのあたたかな人力感とは対照的に、無機質な音像が展開。オール・インストゥルメンタル、4曲で63分のCD-R。
ジャーマン初心者の私は、1曲目を聴くと「Tangerine Dreamふう?」とか感じますが、10分過ぎくらいからのちょっとジャジーな展開がおもしろいですね。ピアノから入って懐かしのオルガン・サウンドにつないでいく3分ほどがよいアクセント。その後は浮遊感のある電子音がリードしていき、終盤をジェントルなピアノが締めます。
唯一本人(Andy)以外が参加した「Energize」は、少しジャズ・ロック風かな。機械的な作法ながらメロディは充実。4分20秒くらいからのギター・ソロ(Lukeのプレイ?)も短いけどイイ感じ。ここでも、終盤に繰り出されるオルガン音が素敵。この曲が本作中最もコンパクト(8分あるけど)。
最後の「Luft」は2007年に録音されていた作品とのことで、無機質さでは抜きん出ていて異質。やはり大作ですが、私は前の3曲みたいにもうちょっと人力風味を分かりやすく感じさせてくれる方が好きですね。