本家Quatermassの唯一作、続きです。
Quatermass『QUATERMASS』(1970)
- Entropy
- Black Sheep of the Family
- Post War Saturday Echo
- Good Lord Knows
- Up on the Ground
- Gemini
- Make up Your Mind
- Laughin Tackle
- Entropy(Reprise)
- One Blind Mice [bonus]
- Punting [bonus]
<メンバー>
Pete Robinson(Key)
John Gustafson(Ba, Vo)
Mick Underwood(Dr)
次の「Gemini」は彼らにしては珍しいアップテンポのナンバー、Steve Hammond作。これに先立ってEric Burdon & The Animals――当ブログ命名の由来となったバンド也――のアルバム『LOVE IS』(1968)で取り上げられています。(ちなみにそちらでは、ギターにAndy Summersが参加してるのね。)こちらのヴァージョンはハード・プログレ色が全開で、間奏のオルガンとドラム・フィルの絡みなんかもう最高。いやあ、Quatermassの三人も巧者揃いだが、Steve Hammondってえ人の作曲力にも脱帽だわな。
次もハモンド作品、「Make Up Your Mind」。ベースがバキバキ言ってるけど、歌メロは物凄くキャッチー。と思ったら1分40秒くらいで終わっちゃった?……ちがう、怪しげなプログレ・パートが大展開し出したわ。ELPの「Tarkus」じゃないけど、なんかああいう物々しい感じね。Peteの鍵盤は多彩多様だし、Johnのベースも変幻自在、もちろんMickの質実剛健ドラムの上でね。お、8分15秒から冒頭のような爽快な歌パートに戻ったぞ。シンフォニックに締めくくったね。
と、些か疲れながらも再生を続けると、次もPete Robinsonによる超大作「Laughing Tackle」。ピート自身のアレンジによるストリングスも大フィーチュア。「クラシックを昇華できるのはJon Lordだけじゃないぜ!」ってとこかな。この曲の(ドラム的な)聴き所は、4分25秒辺りからの「ドラム・ソロ」セクション。5分50秒からはこんどはベースとクラヴィネットが不穏な雰囲気を醸し出す。しかもそこへ、ELO(Electric Light Orchestra)のファーストかThe Beatlesの「A Day in the Life」かっていうような「重いストリングス」が追加。切り替わってジャジーなワルツ風リズムが執拗に繰り返される上へも同様に。インストゥルメンタルの壮大な、実験的な(真にプログレ)曲でしたな。最後の「Entropy(Reprise)」につながって行って、おしまい。
やっぱり、ハードロックというよりプログレとか「アートロック」と言った方がいいのかな。私の持ってる再発CDボーナスの「One Blind Mice」(元はシングルナンバー)は、3分ちょっとのハード・ナンバー(三人共作)ですけどね。もう一つのボーナス「Punting」(三人共作)はそのB面だったというインスト。ジャム・セッションを録ったっぽい構成と音像だけど、ミックのヘヴィで安定したドラミングがピートの奇天烈フレーズとジョンのメロディアスベースを包み込んでいますなあ。
といいわけで、名作は人にあることないこと語らせる力を持っています。『QUATERMASS』は数年前にボーナスディスク付きの再発盤が出てましたので、探しやすいかと思います。(私はボーっとしてたら逃したんで、相変わらず1996年再発のヴァージョンを聴いていますがね。)Rainbowのファーストが好きな人、ELPやAtomic Roosterが好きな人、変な人力(じんりき)ロックが好きな人には、お勧めです。
<完>