前回言及しました合唱団との共演作。入手叶いましたので、いまのうちに感想を。
(28)Ray Davies & The Crouch End Festival Chorus『THE KINKS CHORAL COLLECTION(Special Edition)』(2009)
1.Postcard From London [featuring Chrissie Hynde]
2.Days
3.Waterloo Sunset
4.You Really Got Me
5.Victoria
6.See My Friends
7.Celluloid Heroes
9.Working Man’s Café
10.Village Green Medley
11.All Day And All Of The Night
「The Crouch End Festival Chorus」というのはどういう団体なのでしょうか、とHPを訪ねてみると、次のような記載がありました。
“Crouch End Festival Chorus is one of Britain’s major symphonic choirs. Based in north London, the choir was foundedin 1984 by David Temple and John Gregson, and David has remained as musicdirector ever since, shaping the choir’s progress as it built a fine reputation in the UK and internationally.”
なるほど、1984年創立の、北ロンドンを拠点とする合唱団であると。David Templeという方が領導人のようですね。
「versatility and eclectic repertoire」というのが特長であるそうですが、HPの”Patrons”(この場合は「後援者」、ですかね?)にはMeirion Bowen・Sir Ray Davies CBE・Sir Mark Elder CBE・Noel Gallagher・John Gregson・Ennio Morricone・Alison Pearce・Sir Bryn Terfel CBE・Hanz Zimmerの名前が列挙されていました。クラシック・映画音楽などの人と並び、Ray DaviesやNoel Gallagher(元Oasis)の名前がありますね。それにしても、Ray DaviesがCBE(Commander of theMost Excellent Order of the British Empire大英帝国三等勲爵士・司令官)ですか。まあ、調べてみますと、英国人以外も含めて相当幅広く授与が行われる「大英帝国勲章」ではあるようですがね。ローワン・アトキンソン(Mrビーン)だのデヴィッド・スーシェ(名探偵ポワロ)だのも貰ってますし、ロック系だとエリック・クラプトンとかロバート・プラント、ロジャー・ダルトリーもそう、日本の企業人や役人なんかも貰ってるようですが。勲章っていうと、ジョン・レノンが(1965年に授与されていた)MBE五等勲爵士を、69年に自ら返納した――ナイジェリアのビアフラ戦争への英国の関与、米国のベトナム戦争への英国の支持、および「Cold Turkey」(シングル)のチャート急落に抗議して――っていう話を思い出しますが。(ちなみに、勲章を返納しても、爵位は取り消されないとかなんとか。)
話がわきにそれました。歌以外のメンバーは、ギターがBill Stanley・Milton McDonald、ベースがDick Nolan、キーボードがGunnar Frick・Ian Gibbons、ドラムにDamon Wilson。(「You Really Got Me」の場合。若干出入はあるが他の曲も基本的に同じバックバンド。)当ブログを継続的にお読みくださっている方はお気づきでしょうが、キーボードのIanは80-90年代のキンクス・メンバー。あと、Dick Nolanは、元It Bitesの名ベーシスト。It Bitesは80年代以降デビューのグループでは最高の、プログレ兼ポップ兼ハードロック・バンドでありました(個人の感想です)。DickとBob Dalton(Dr)のリズム隊は、別に超絶技巧アピールをするでもなく割合地味なのですが、楽曲をよく聞くと彼らのリズムづくりの妙に感心させられました。90年代に解散したバンドは近年、メンバーをかえて再結成しました(再結成It Bitesも素晴らしゅうございます)が、Dickは不参加。どうしているんだろうと思って調べると、なんとRay Daviesのバック・バンドにおさまっていたのですね。
「You Really Got Me」の再生を始めると、CEFC(The Crouch End Festival Chorus)による荘厳な合唱が始まります。「何の曲?」と聴き手が思う頃(1分頃)にレイ御大がリードをとって“♪You really got me……”のコーラス部分(合唱レスポンス付き)がさわりだけ。1分20秒からはロック・バンドが通常の伴奏、レイが歌う。原曲でもサビのうしろはバックグラウンド・ヴォーカルが入っていましたが、そこのところが本職の合唱団になってます。ギターソロを挟んだ2番はリズム・パターンがちょっと変わりまして、ゆったりしたビートの中レイ&団が朗々と歌い上げて幕。意外にあっさり終わりました。
このアルバムの他の曲は、往年の名曲のニューヴァージョン多数。いかにも合唱が合いそうな「Days」「Waterloo Sunset」「Shangri-La」もあれば、元はロック色の強い「You Really Got Me」「Victoria」「All Day and All of the Night」もありますが、個人的に面白かったのは「See My Friends」と「Village Green Medley」。前者は、敢えてバンドをつけず全編合唱だけなんですが、これがなかなか良い。レイはこの曲好きなんだろうなあ。「Village Green Medley」は(CDではトラックがちゃんと分かれていますが)フルで15分を超える大作になっていて、これもすごい。「Village Green-Picture Book- Big Sky- Do You Remember Walter?- Johnny Thunder- Village Green Preservation Society」ね。原曲もクラシック風味で厳かだった「Village Green」からお得意――ホントにデイヴィス兄弟はコレ好きだな!――の「Picture Book」へっていう流れが良いし、後者での合唱の絡み方も見事ですわ。
最後に、このアルバムが“Special Edition”となっているゆえんについて。当初リリースされたオリジナル盤は、本作の2曲目から11曲目を収めたものでした。つまり「Days」で始まっていたわけです。本ヴァージョンは1曲目に追加があるのですが、それが「Postcard From London」でして、クレジットでおわかりのごとくChrissie Hynde(The Pretenders)が参加してます。Ray DaviesとChrissie Hyndeのデュエットというので英国ロックファンには興味深いところでしょうか。両人の縁というのもいろいろあるようですが、私的なことは措いても、なかなか聴かせる曲に仕上がっております。PVなんかも探せば観られるようですよ。
<もう一回だけ続く>