DON'T PASS MUSIC BY

"Secrets are fun to a certain degree, but......"<Jake Holmes>

第32回「Crimson Glory」(3)

 バンド史の続きです。Crimson Gloryは「解散」となりましたが、JonJeffRaviは音楽活動を継続しまして、1995年にはCrush名義でCRUSHを、96年にはErotic Liquid Culture名義でEROTIC LIQUID CULTURE』を出しています。前者のヴォーカリストBilly Martinez、後者のそれはDavid Van Landing。(この両作品は、入手できていないので詳細はわかりません。)Billy Martinezは後年、Crimson GloryASTRONOMICAにいくつか歌詞を提供しています。Jon Jeffの仲間、ということでしょうか。
 
 1998年、Jon DrenningCrimson Glory再生の計画を抱いてフロリダに戻ります。これにJeffBenも合流、さらにドラムはSteve Wacholzを迎えます。SteveSavatage(やはりフロリダ出身のバンド)の元メンバーでした。現在は米国の正統派パワーメタル・バンドReverenceに居るようです。ちなみに、このReverenceの結成から2016年までのリード・ヴォーカリストを務めていたのがTodd Michael Hallという人で、この人は現在Mark Reale没後のRiotRiot :ライオット・ファイヴを名乗っています)のリードヴォーカル。ReverenceWHEN DARKNESS CALLS2012)の、例えば「Bleed for Me」という曲のオフィシャル・ミュージック・ヴィデオはネット上で手軽に観られますので是非どうぞ。動くSteveがみられますよ。
 
さて、問題はヴォーカルですが、ジョンが最初に話をもちかけたMidnightが乗り気でなかったために、Wade Blackという人に白羽の矢が立ちます。以前「第30回(2)」で挙げたSeven WitchesXILED TO INFINITY AND ONEで歌うことになるヴォーカリスト。確かにWadeは、強烈(Rob Halfordあるいはその後任Tim ‘Ripper’Owens系の)なメタルヴォイスの持ち主ですが、この当時はほぼ無名に近かった。ジョン曰く「Crimson Gloryはただのバンドじゃない、brotherhoodなんだ」とのことで(brotherhoodはここでは“同志”ですかね?)、シンガーに求められるのはヴォーカルの力量だけでなく、人柄やバンドの未来を共に担える資質(おそらく熱意や創造性のことを指しています)も重要だというのです。Midnightの後という難しい役を任せるに足る、とジョンがお墨付きを与えたというわけですね。
 
そして1999年に出たのがASTRONOMICA。リードトラック「War of the Worlds」を聴けば、かつてのパワーメタル路線への回帰に確信をもって臨んだことがわかります。パワー・スピード・アグレッションを強調し、歌詞の面でもSF・神話的モチーフ、災厄の予言……といったものをテーマとしています。ドラム・マシンを使っているのかな、というドラムの音(シンバルの音に奥行きが無い……)だけは個人的に残念ですが、楽曲・演奏の水準からすれば結構な佳作。
 
本作の発表後、しかし、想定外の事態が起こる。作品の出来が良かったために、ファンたちが「山のようにメールを送り付け」、オリジナルメンバーでの再結成を要求したのです。Wadeの貢献をポジティヴにとらえられなかったファン達……これにJonをはじめバンドは対応を迫られます。みたびMidnightに参加を打診、2005年頃には彼も「状況が許せばリユニオンもあるかも……」と一度は発言しますが、ちょうどその頃のMidnightはソロアルバムSAKADAが完成したところ。で、そちらのプロモーションに忙しかったのでした。何とバンドはASTRONOMICAMidnightに歌い直させる計画さえ検討したといいます。(さすがにWadeに対してどうなんだ、と思いますが……その後もシンガー不在に悩むCrimson Gloryに何度かヘルプで入っているMr.Blackは余程いい人に違いない。バンドが困ると呼び戻されるBlack SabbathTony Martinみたいだね。)
 
それでもMidnightとの調整はつかず、バンドはMETATRON,LUCIFER AND THE DIVINE CHAOS(仮題)の制作に取り掛かります。その後一時的にMidnightは(Danaともども)バンドへの復帰をしますが、ほどなくまた脱退。Crimson GloryWadeの助けを借りてニュー・アルバム作りを進めようとしますが、今度は所属レコード会社の破産んで中断の憂き目に。
 
一方ミッドナイトは2008年にMというEP2000年制作)の再リリースを行い、ライヴ活動も展開すべくバンドメンバーを揃え始めていたのですが……200978日に病気のため亡くなってしまいます。オリジナルラインナップ復活の夢も終わりました。
 
Crimson Gloryはそれから、ミッドナイト追悼の意も込めた(と思しい)ボックスセットの取りまとめも行いつつ、20105月にはニューシンガーTodd La Torreの加入を発表します。録音作品は出していませんが、Toddの歌うCrimson Gloryの名曲、というのが動画共有サイトに上げられていまして、その堂々たる歌いっぷりはさながら「Midnightのあとを継げる逸材!」。いよいよ新作は?ツアーは?と大いに期待したものでしたが、バンドの動きは加速せず。そして2012年には何とそのToddGeoff Tateの後任としてQueensrÿcheに加入してしまいます。引き抜かれた……というより、クリムゾン・グローリーの活動が停滞していたためにToddとしてもどうしようもなかったというところでしょう。2013年に、結局音源を正式に残すことのないまま、Toddはバンドを脱退。Crimson Gloryは新たにシンガーを探しているもようですが、それ以上の動きは目下(2017年末現在)伝わりません……
 
3Crimson GloryASTRONOMICA1999
  1.March to Glory / 2. War of the Worlds / 3. New World Machine / 4. Astronomica /5. Edge of Forever / 6. Touch the Sun / 7. Lucifer's Hammer / 8. The Other Sideof Midnight / 9. Cyber-Christ / 10. Cydonia
  ラインナップ: Ben JacksonGt)・Jon DrenningGt)・Wade BlackVo)・Jeff LordsBa)・Steve WacholzDr
 
イメージ 1

 

 さきほども少し触れましたが、ドラムサウンドについては個人的に物足りない感じがなくもない。一方、バキバキの硬質なベース、16分を効果的に使ったギターリフ、そして強烈なヴォーカルという組み合わせは得難い個性として大歓迎。1曲目は長いSEのようなもので、続く「War of the Worlds」が実質的な復活曲。Wadeの「♪War of the worlds!」という冒頭の叫びからしてもう最高。ちなみに「War of the Worlds」というとウェルズ『宇宙戦争』の原題ですが、特に関係はないみたいです。
 
Jeff Lordsのベースが存在感を示し、WadeRob Halford風歌唱がいかにもJudas Priestを彷彿させるミドルテンポのヘヴィな「New World Machine」。サードアルバムの個性だった「アコースティック&トライバル」な雰囲気をちょっと振りかけたようなタイトルトラック「Astronomica」。バラード「Edge of Forever」に続いては、「Masque of the Red Death」を少しだけ思い出させる「Touch the Sun」、ヴァースの疾走感とコーラスのヘヴィグルーヴの対比が面白い「Lucifer’s Hammer」、アコースティック・ギターを中心とした陰鬱な「The Other Side of Midnight」(ミッドナイトに対するメッセージ……ではなさそう)など、全10曲。聴いてて疲れるあのCrimson Gloryが帰って来た!
 
4Crimson GloryWAR OF THE WORLDS2000
 1. War of the World[remake] / 2.Astronomica[demo] / 3. Touch the Sun[demo] /4. Dragon Lady[live] / 5. EternalWorld[live]
 
イメージ 2

 

 1曲目から3曲目は当時の最新作ASTRONOMICAの楽曲の別ヴァージョン。ヴォーカルは当然Wade45曲目は何と1989年のライヴで、Midnightの歌声が聴ける。リミテッド・エディションのコレクター向けアイテムですが、そのむかし専門店で見つけた時は嬉しくて勇み買ったものでした。ところがね……写真をご覧いただくとわかりますが、特殊形状のCDのため、再生機器が選ばれてしまうのですよ。折角ゲットしたのにあんまりよく楽しめなかったという無念な品。
 
 次に挙げるボックスセット(各楽曲が収められている)に行き当たるまで、Midnight時代のライヴ鑑賞が手軽には楽しめなかったのでした。ライヴの出来は上々。ものの本を読むと、「Crimson Gloryはスタジオ作品は素晴らしかったがライヴがいま一つ」とか出てきたりするんですが、「どこが?」という感じ。「Dragon Lady」冒頭の叫びからMidnightは完璧だし、楽曲終盤のJon Drenningのギター・ソロも悪くない。ドラマティックな同曲のあとには、インテンスに攻める「Eternal World」。いいじゃん。もっと聴きたいのに、ライヴ音源は他にないんでしょうかね。
<続く>