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どんぱす今日の御膳267

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Todd La Torre「Rejoice In The Suffering」(『REJOICE IN THE SUFFERING』2021)

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 もうひとつトッドの2021年作を紹介しよう。こちらはTodd La Torre氏、現Queensrÿcheのリードヴォーカリストです。この人も強力なシンガーなんだよね。私が気が付いたとき、この人はCrimson Gloryのヴォーカリストだったんですよ。Midnight、Wade Blackときた後を受けるわけですが、ネット上に出ている歌いっぷりを見るに、かなりの実力者に思えました。Jon Drenning(Gt)先生あたりが奮起してCrimson Gloryの新作を出してくれないかな、Toddに歌わせたら凄い作品になるだろうて……と皮算用に及んでいたこちらの心裡を知ってか知らずか(知ってるはずない。)、バンドは動かなくなっちゃいました。

 

 当ブログで特集を執筆したほどクリムゾン・グローリーに思い入れのあった小生がどれだけ落胆したか、どうぞお察し下さい。Todd La Torreなる逸材も埋もれてしまうのか……と思っていたら、いつの間にか彼はGeoff Tateの後釜としてQueensrÿcheのリードシンガーの座についているではないですか!見る目のあるやつ(聴く耳のあるやつ?)はいるもんだ。ナイス人選だよ!Jouneyアーネル・ピネダ以来のファインプレイだよ!と謎の上からの賞賛。まあ、ちょっとテンションがおかしくなるくらい嬉しかったんですな。

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 トッドをフィーチュアした最初のQueensrÿche作品はQUEENSRYCHE(Yに̈付けてね)、かつてのデビューEPと同じ名前を付けるなんざ気合が入ってましたね。トッドの歌唱も素晴らしかった。(即効性のあるメタル・ナンバーがもうちょい個人的には欲しかったけど。)その後も作品を送り出し続けてますから、バンドにも完全にフィットしたのでしょう。

 

 で、そのTodd La Torreがソロアルバムを作るっていうので、これまた気になる私。ネットの情報をよく調べると、トッドはもともとドラマーでもあったとかで、ソロ作では全編ドラムを披露していると。ギター・ベースを司る旧友(Craig Blackwell)とほぼ二人で仕上げたようなことが書いてありました。

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 アルバム冒頭の「Dogmata」は疾走するパワーメタルなんですが……このテクニカルなドラム、トッドが叩いてるの?これはほんとビックリ。このままほかのバンドでドラマーだけでも余裕で食える。いままで「この人にこんな技が?」で一番驚いたのは、Eduard Hovingaだったんですが(Elegy/Prime Timeの名シンガー。自身のプロジェクトMother Of Sinではギターも披露、それがネオクラシカルなフレーズを余裕で弾きこなすバカテクだったのだ)、ある意味それを超えたかも。

 歌の方も、比較的ストレートなメタルであるこの曲ではロブ・ハルフォードやブルース・ディッキンソンの継承者としての力量――中音域に“威厳”を感じる――を見せつけます。

 本作のアルバム名は、(前回のトッド・マイケル・ホールもそうでしたが)やはりコロナ禍(Suffering)を踏まえたもののようですね。ということでタイトル曲も聴いてみますと、こちらはさっきと違いヘヴィに首を振らせるナンバー、こちらではミッドナイトやジェフ・テイトを受け継ぐ巧みなヴォーカルが聴けます。(超ハイトーンを使うわけではないですけど。)そしてこっちでも、トッドのドラミングには驚愕。クレイグさんのギター・ソロもよく練られていて脱帽。

 

 ほかの曲も力作ばかりで、これまた好盤に出くわしてしまった。2021年の二人のトッドは、ベテランバンドを活きかえらせるだけでなく、己の作品でも存在感を示したね。古い作品の紹介ばかりで同時代に追いつけていない当ブログですが、前回と今回の作品は自信をもってお勧め出来ます。